厄介な病気 | 万事塞翁がフランス

万事塞翁がフランス

フランス南西部に住んでもうじき30年になります。双子男女の母、フランス人夫の妻です。日常のあれこれをつぶやいています。

 2週間振りに利用者さんのマリーアンヌ(仮名)に会った。彼女はここ一カ月ほど元気がなくて、ふさぎ込んでいた。

 

 もともとの鬱病がこの季節になると浮上するようで、玄関からのぞかせた顔を見た時、瞬時に察知した。悪化していると。何もやる気がしない。食欲もないと、げっそりしたお顔で言うので、まあしょうがないですよ、今日はゆっくり休んでいて下さいと、私はひとり仕事にかかった。

 

 時に廊下を往復するマリーアンヌを目の端でとらえると、まるで幽霊のような生気のなさ…。かかりつけの医者に診てもらい、抗うつ薬を飲み始めたが今回はあまりその効き目がないと見える。

 

 仕事終わりにいつものように二人でお茶を頂きながら、胸の内を明かしてくれた。薬の効果か夜は眠れるのだけど、朝目が覚めた時、一日が始まるのが怖のだ、と言った。

 

 私はこれまでに人生に挫折して絶望に陥ったことは何度かあったが、一日が始まるのが怖い、という思いをしたことはなかった。トンネルの中にいる時っていつ出口が見えるのか分からないのが辛いですよね…。今は無理しないで。今夜はテレビでも見て、気を休めて下さいね。と言い、彼女の家を後にした。

 

 家に帰って息子さんに連絡をしようかと随分迷ったが、しなかった。息子には迷惑をかけたくないといつも言っているマリーアンヌ。息子さん自身も実は同じような病気を抱えているのだった。