強い女 | 万事塞翁がフランス

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フランス南西部に住んでもうじき30年になります。双子男女の母、フランス人夫の妻です。日常のあれこれをつぶやいています。

 ほんと強いねアンタ、と娘(双子)を見てると最近つくづく思う。

 

「母さんさあ、今夜家に寄っていい? 電気が止まっちゃって、スマホとラップトップ、携帯バッテリーを充電させて欲しくって。」とメールが来たのは今朝のこと。

 

 もちろんええよ。何なら洗濯もしていいよ。と答えた私に「ほんとにごめん。迷惑かけて」と実に申し訳なさそうにするから「何言ってんの。出来ることがあったら何でもするから」と何度も言った。

 

  

 

 

 

 娘(24歳)はパートナーと2年近くアパートをシェアしている。パートナーは一つ上でプロスケートボーダー。元、と言った方がいいか。12,3歳から頭角を現し、フランスはもちろんアメリカ、南米、オーストラリアなど世界のコンペティションで戦って来た将来有望なスケーターだった。しかし2年前の怪我で膝を複雑骨折して、手術、リハビリと頑張って来たもののスポンサーに大半の契約を切られ、復帰してからはコンペとバイトの2足のわらじでやって来た。

 

 二人は家賃を折半している。娘は毎月の己の給料から家賃の半分を渡しているが彼の方がバイトにありつけない月が続いて家賃を払えなくなっていた。管理会社から2通目の勧告状が届き、あわや退去命令になりそうなところだった。それを聞いた私は家に戻って来るかもしれんと、急いで娘の昔の部屋を片付け掃除したものだ。

 

 彼氏は実家に救済を頼み、何とか退去は免れた。しかし電気は止められた。家賃に含まれていた電気を切られたのだ。会社側も最近の電気代高騰で止むを得なかったのだろう。

 

 3週間近い遠征から帰って来たスケーター君は慌てて電力会社と個人契約をし、3日間のろうそく生活から脱出がかなったが、まあ娘は私にひと言も泣きごとを言わない。今日もカバン一杯の洗濯物を背中に担いで、自転車漕いで汗だくになりながらやって来た。

 

 二人の間でどんな会話が成されているのかは知らないが、私ならとっくに別れているだろう。

 

 しかしこの彼氏さんは優しい。そして何より娘を尊重し愛している。娘は彼を愛している。愛していなけりゃとうに見捨てているだろうよ。食費も彼の財布がカラの時は娘がまかなっているし。きっぷがよくて金に執着しないのは私の娘にしてはどうしたことか。