バカ息子 | 万事塞翁がフランス

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フランス南西部に住んでもうじき30年になります。双子男女の母、フランス人夫の妻です。日常のあれこれをつぶやいています。

 午後一時ごろにケータイが鳴った。双子①息子からだった。「今とりこんでるから折り返すね」といったん切り、(ヤツめ、金の無心か。私をATMと思とんのか、てぴしゃりと言うたらな)と、作り置き料理の続きを続けた。

 

 というのは4日ほど前、あやつはオットに「前に修理したとこがまた洩れてんねん。どないしよ」と、車のことで電話していた。

 

 1年前に苦労して見つけ、プレゼントした車。この値段でこんな掘り出し物はないというぐらいの、丁寧に使われていた中古車。若葉マークの学生には過ぎるぐらいの、しかし遠方から実家に帰る際には快適に往復して欲しいとの母親の愛情が詰まった贈り物を、このバカ息子は1年も経たないうちに事故って故障させてしまった。

 

 修理する金なぞ彼はもっていないから、その時は「これは貸すんやで。返せるようになったら何回かでもええからちゃんと返しや」としつこいぐらい言って救済してあげた。

 

 なので今日電話が鳴った時に来た!また修理にかかる金を貸してくれの交渉や、と思ったのだ。しかし今日はびしっと言うぞと。掛け直す前は私も何なら少し怒っているのだ。ここで問題なのは、あいつは恐ろしいことに会話が非常にうまい所なのである。私との付き合いも25年になるから、母親を言いくるめるノウハウを彼も良く心得ている。

 

 何を言われんねやろと思いながら掛け直したら、思った通り車の話だったが、金の話はなかった。そして驚くことに、「良い知らせ」があるという。彼の口から初めて聞く言葉。眉つばもんやでと疑惑を持ちながら耳を傾けたのだった。