今年で25周年を迎える「わかさ生活」の社長 角谷が、従業員に話してくれる「豊かな心」になる話を毎週紹介します!

 

 

▼前編はこちら

 

人には「物語」にして伝える~後編~

 

ある日、お店で親しくなったお客さまに「このフライパン、どう思いますか?」と尋ねてみました。

 

 

すると、「わたし、このフライパン使っているけどすごくいいよ」と言うのです。

 

 

詳しく聞いてみると、油の引き方をちょっと工夫するだけで目玉焼きや野菜炒めもきれいに作れるし、洗剤も少なくて洗うのも楽など、いろいろ教えてくれました。

 


「そうなんだ、でも使ったことないから実感がわかないんですよ」と伝えると、「じゃあうちにおいでよ。直接見せてあげる」と、家に招いてくれました。

 


そのお客さまは、実際にフライパンで焼いたり炒めたりするのを見せてくれたうえに、昼食までご馳走してくれました。

 

 

確かにフライパンにこびりつかず、料理はきれいに仕上がっていました。


わたしは、そのお客さまが見せてくれた「このフライパンを使うと上手に目玉焼きや野菜炒めが作れる」、「後片付けが楽でうれしい」という姿に、料理をする人の「物語」を感じました。

 

 

心底納得して「これだ!」と思い、次の日、店長に「あのフライパンを売る時間をください」とお願いしました。

 


店長はわたしを見つめて、少し考えてから「じゃあ、10分だけやる」と言いました。

 


わたしは急いで、お客さまから教えてもらった物語を整理して、10分に収まるようになんとか「物語」を組み立てました。
 

 
そして、運命の10分間プレゼンの日を迎えました。
 

 

「みなさん、目玉焼きや野菜炒めがきれいに焼けたら嬉しいですか?もちろん嬉しいですよね? それがこのフライパンで出来るんです!」

 

 

「少ない油でもこびりつかず、きれいに焼けるんですよ」

 

 

「なぜなら、フライパンの真ん中がレコード盤のように渦を巻いているから。この渦のおかげでこびりつかないんです!」

 

 

「油が節約できるだけじゃないんです、油の摂りすぎは健康によくないですからね」

 

 

など、お客さまから教えてもらった料理をする人の「物語」を伝えました。
 

 

その日、120個以上あったフライパンは、たった10分の「物語」のおかげで完売しました。

 

 

おかげでわたしの寝室はとても広くなりました。

 

お客さまが快く買ってくれたのは、私が実際に見て聞いて体験したことを、うまく「物語」に乗せられたからではないかと思います。

 

 

実感がこもっていたからこそ、人の心に響いたのです。


一般的にビジネスシーンでは、「人の心を動かすには数字が大切だ」と言われています。

 

 

たしかに、データやロジックを示されると人の心は動かされますが、これではただの“説得”です。

 

 

一方で、物語によって人の心が動く場合は“納得”になります。

 

 

「この商品を買ってよかった!」と感じていただくためには、説得ではなく、納得してもらわなければなりません。

 

 

本当のよろこびや満足感は納得でしか得ていただくことは出来ません。


物語を語るからには感動してもらおう、などと考えすぎる必要はありません。

 


「なるほどな」「すごいな」「おもしろいな」「そうなんだ」といった、人の心をちょっとだけ動かせるものがあればいいのです。
 

 

少しでも相手の心が動いてくれれば、その「物語」は人の心に響きます。

 

 

心に響いた物語は、いつか心だけではなく、その人の行動も変えてくれるのです。