惟明親王 嵐ふく | わたる風よりにほふマルボロ

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現代短歌新聞2021年4月号

作品掲載

 

new「源氏で紡ぐ和歌便り」

2021年10月分掲載new

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千五百番歌合に
 
嵐ふく八十宇治河の波のうへにこのはいざよふせぜのあじろ木
 
惟明親王
玉葉和歌集冬888(889)
 
 
 
【現代語訳】
 
激しい風の吹く
八十氏――宇治川の
八十、数多く立つ波の上に、
木の葉は
吞み込まれ流されるでなく
ためらいいざよっている。
激しい風と波のなか
そのように流れを堰き止めることで
木の葉の流れをためらわせる、
瀬々の網代木よ。
 
(訳:梶間和歌)

 

 

【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

もののふの八十氏河のあじろ木にいさよふ浪のゆくへしらずも

柿本人麻呂 万葉集巻三、266(264)

 

嵐:秋冬の山から

 激しく吹き下ろす風。

 よりいっそうの冷たさや寂しさを

 もよおすものとして描かれる。

 必ずしも雨を伴わない。

 

八十宇治河:

 本歌で「もののふの八十」が

 「宇治河」を導く序詞の働きを

 することから、この歌では

 短縮表現である「八十宇治河」で

 「宇治河」を和歌的に表した

 と考えられる。

 踏まえられた本歌を考えれば

 違和感なく読めるが、加えて

 「八十」が「たくさんの」を意味する

 接頭辞的働きもする

 (それゆえ、「もののふの」という枕詞が

 “武士の氏がたくさんある

 =「もののふの八十氏」”

 という導き方をする)ことから

 嵐が激しく波が数多く吹く

 というニュアンスを汲み取ると、

 なおよいか。

 

このはいざよふせぜのあじろ木:

 (激しい嵐にもかかわらず)木の葉が

 ためらい流れようとしない、

 そのような状況を生み出す

 原因となっている網代木。

 「網代」は漁具のひとつで、

 川のなかに杭を立て

 竹などを細かく編み簀(す)を置き

 「氷魚(ひを)」などが掛かるように

 したもの。

 「宇治川」で「氷魚」を獲るのに

 用いるのが有名なので、

 和歌では

 「宇治」「寄る」などの縁語として

 用いることが多い。

 「網代木」はそのための杭。

 ここでは瀬々の網代木が

 氷魚ではなく木の葉を堰き止め、

 嵐によって激しく流れるはずの

 木の葉が

 呑み込まれたり流れたりせず

 いざよう(ためらう、たゆたう)様子を

 表している。

 「いざよふ」はもとは清音で

 「いさよふ」だが、

 鎌倉時代ごろから濁音で

 発音されるようになった。

 

 

 

「千五百番歌合」冬三、千番右。

 

左歌、隆信の

まののうらのなみはこほりにおとたえてたちゐるものはあぢのむら鳥

千五百番歌合冬1998

と番えられた歌です。

「嵐ふく」の歌番号は1999。

 

 

季経の判は

左歌、よろしきにや、右歌、又ことなる事侍らねば、いづれ申しがたし

とのことですが、

 

絶対に惟明親王「嵐ふく」のほうが

良いと思うのだけどな。

 

 

 

惟明親王の歌のなかでは

ひときわ新古今的、を通り越して

 

『玉葉集』か、

なんなら『風雅集』にも

入集しそうな気配の作では。

 

実際の入集は、先に書いたとおり

『玉葉集』冬部です。

 

 

本歌は踏まえながらも

本歌の悠長な気配を

新古今時代らしく断ち切り、


解釈めいた表現や

擬人的表現などの

一歩間違うと

独りよがりになりそうな手法も

「いざよふ」の使用以外排除。

 

その「いざよふ」も

この歌ではしっかりはまっており、

独りよがりな印象はありませんし。

 

そうして

体言止めでピシッと収める。

 

 

和歌史においては

新古今時代に発見された

冴える冬の美

 

が、歌の景だけでなく

言葉や韻律、構造のうえでも

表された、気持ちのよい歌

ではないでしょうか。

 

 

嵐ふく八十宇治河の波のうへにこのはいざよふせぜのあじろ木

 

 

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