京極為子 葉がへせぬ【前編】 | わたる風よりにほふマルボロ

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現代短歌新聞2021年4月号

作品掲載

 

new「源氏で紡ぐ和歌便り」

2021年10月分掲載new

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寒樹をよみ侍りける
 
葉がへせぬ色しもさびし冬ふかき霜の朝けの岡のべの松
 
京極為子
玉葉和歌集冬900(901)
 
 
 
【現代語訳】
 
紅葉せず葉を落とすこともない
常緑の葉の色は、
紅葉し葉を落とすならいの木々の
裸の枝に増して
見ていて寂しい。
冬深き朝明け、その深い緑に
深い霜の白の降りた朝明けの、
岡のわきに立つ松よ。
 
(訳:梶間和歌)
 
 
【本歌、参考歌、本説、語釈】
 
葉がへ:葉替へ。
 草木が葉を落とし
 新しい葉を生やすこと。
 
葉がへせぬ色しもさびし:
 葉替えする木の葉の色も
 寂しいのだが、
 葉替えしない常緑の松の葉の
 色こそ
 (霜の朝のこの景において)寂しい。
 「しも」は種々の語に接続するが、
 体言に付く形で
 「……に限って、とりわけて」
 などと
 その体言を取り立てて強める
 働きをする場合がある。
 葉替えする木々の色が
 寂しいことは前提として、
 「葉替えしない松に
 白い霜の降りた景の色の
 コントラスト
 “こそが、とりわけて”寂しい」
 と気づき描写した、と解釈。
 二句の「しも」は
 四句の「霜」と同音であるので、
 「霜」を導く働きもあるか。 
 
朝け:「朝明け」の変化した語で、
 「暁」より朝に近い、
 東の空の明るくなるころの
 時刻を指す。
 
岡のべの松:岡の辺の松。
 岡のほとり、わきに立つ松。
 
 
 
『玉葉集』冬部の歌も、いま
全体の4分の2ぐらいのところに
差し掛かりました。
 
あまり飛ばしすぎても
立春までに困るでしょうし、
『新古今集』『風雅集』と
相談しながら進めますが、
 
いまは『玉葉集』冬歌を
集中的に紹介したい気分です。
 
(毎月末までに収録する「歌塾」の
 講義内容が
 今月から京極派に入ることも
 関係しています。た、大変……)
 
 
 
「葉がへせぬ」は
このブログで2016年に
最初に訳していたようですが、
 
「しも」のあたりの妙を
まったく捉えない訳になっており、
しかも解説がゼロだったので、
 
今回読み返してみて
血の気が引いたというか
なんというか。
 
 
「しも」を雰囲気で流すのでなく、
「葉替えする木々」でなく
「葉替えしない松の色」が
あえて取り上げられたことの
意味の考えられる訳や語釈を
 
現在の私なりに心掛けました。
 
 
 
歌語や技法的な約束事に
縛られるな、
心に感じたものごとを
最も適切な言葉で歌にせよ、
 
という為兼歌論を核とするのが
京極派和歌。
 
結果的に、
京極派の特に四季の歌には
 
着想に前例のない
ないし少ないものや、
発見の驚きや喜びを
表した例、もまま見られます。
 
という事を踏まえて
いろいろ書いたのですが、
 
長くなりましたので
続きはまた明日。
 
 
葉がへせぬ色しもさびし冬ふかき霜の朝けの岡のべの松
 
 
この記事の【後編】

 

 

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