藤原定家 あはれをも | わたる風よりにほふマルボロ

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(詠百首和歌)夏十首 首夏


あはれをもあまたにやらぬ花のかの山もほのかに残る三か月

 

藤原定家

拾遺愚草上1116、内大臣家百首




【現代語訳】

 

ため息を誘うような情趣をも

多くの人に分かちやることなき

残花の香り、そのほのかにある山、

その山の端にもほのかに残り

暮れかかる夏の最初の三日月。


(訳:梶間和歌)
 
 

【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

あはれ:しみじみとした情趣。

 もとはため息の音で、

 「ああ」と

 思わず声が出てしまうことが

 意味の核にある。

 

ほのかに:満足はできないが

 少し、わずかに、ほのかに。

 「ほの」の付く語には、

 対象をもっと見たい、知りたい、

 という気持ちがあるのに

 対象の表れ方がわずかで

 その気持ちが満たされない

 というニュアンスがある。

 ここでは

 「花のかの、

 山(に)もほのかに残る」つまり

 残花の香がほのかであることと、

 「山(に)もほのかに残る三か月」

 つまり三日月が

 ほのかに残っていることとを

 掛けて訳した。

 

 

 

建保三年(1215年)九月十三夜

披講、「内大臣家百首」。

 

定家五十四歳の時の詠です。

 

ここでの「内大臣」は

亡くなった九条良経の嫡男

道家のこと。

 

 

「も」が2箇所にあるので

読者の意識が散漫になる

という点は気になります。

 

そして意味も、わかりやすくはない。

いちおう手に入る範囲で

人の訳など参考にしつつ

古語辞典と格闘しつつ

訳しましたが、

どこまで訳せているだろう。

 

 

ということで

この記事自体御蔵入りにしても

よかったのですが、

 

 

下の句の韻律の安定感

 

意味と韻律のほのかなズレの

心地よさ

 

「三か月」という体言で止める

意外性

 

いろいろと抗えない魅力があり、

立夏直後のこの時期に

紹介させていただきました。

 

 

私は専門の研究者でも

ありませんし、たまには

こういうものもよいでしょう。

 

「大学教授のブログか

 と思っていた」と言われたことは

確かにありますけれども。笑

 

 

あはれをもあまたにやらぬ花のかの山もほのかに残る三か月

 

 

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