花園院 花とりの | わたる風よりにほふマルボロ

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四月のはじめによませ給ひける

 

花とりの春におくるゝなぐさめにまづ待ちすさぶやまほとゝぎす

 

花園院

風雅和歌集夏306(296)




【現代語訳】

 

桜や鶯を楽しんだかと思いきや

その春に取り残された、

我が心のさびしさ。

それを慰めようと、ともかくも

待ち求められてやまない

山ほととぎすよ。

決して埋められることのない

虚しさなのだけど。


(訳:梶間和歌)
 
 

【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

花鳥のあかぬわかれに春くれてけさよりむかふ夏山の色
西園寺実兼 玉葉和歌集夏293

 
さくらいろにそめしころもをぬぎかへて山ほととぎす今日よりぞまつ
和泉式部 後拾遺和歌集夏165

 

花とり:ここでは桜と鶯

 

おくるゝ:取り残される

 

なぐさめ:気を紛らすもの、

 気晴らしの対象

 

まづ:ともかくも

 

待ちすさぶ:待ちに待つ、

 盛んに待つ気持ちが起きる

 

やまほとゝぎす:夏の景物の象徴で、

 その声を待ちわびる対象として

 和歌に詠まれる。

 『古今集』では「夏」部34首中

 28首でほととぎすが詠まれる。

 

 

 

初夏の歌にも何の歌にも

ある程度の類型はあるもので、

 

初夏の歌というと、

花鳥の春を惜しむ心を

べったり詠むのが

王道のひとつです。

 

 

が、参考歌かなと考え挙げた

西園寺実兼詠「花鳥の」のように

花鳥の春を惜しみながらも

新たに迎えた夏に

向き合おうとする歌

 

も京極派にはあります。

 

 

後期京極派の指導者である

花園院の詠「花とりの」は、

 

実兼詠より惜春の思いが強く、

それを慰めるため、

つまり埋め合わせとして

ほととぎすの初音が

待たれてならない心境を

詠んでいます。

 

 

花鳥の春に遅れた寂しさは

ほととぎすの声で完全に

埋め合わせられはしないものの、

 

せめてと求めずにはいられない。

 

 

 

 

 

 

 

……ひとつの恋が終わったり

終わりそうになったりした時の私か。

 

 

 

 

※きっかけはともかく、ひとつひとつの恋愛は真剣です。

 

 

 

 

花園院については、

いつもの岩佐美代子氏の

こちらの文章に

なるほどと思いました。

 

理論にすぐれた花園院が実作面にもそれだけの力を有したか否かは疑問である。

(略)概して理の勝った謹直な作風うるおいやふくらみに乏しく、感情の陰翳の言外にただようものが感じられない

そうした理知の働く前に、まず歌としてうたい出さずには居られない、やむにやまれぬ情感の盛り上がりがなくてはならぬはずである。

(花園)院の作品はその点に於ていささか欠けるものがあるように思われる。

(略)所詮は院は理知の人、道義の人であって、

歌人としての感性に於ては伏見院にも永福門院にも数歩をゆずらざるを得なかったというべきであろう。

優美繊細な感覚に富む永福門院の作風は、その豊かな天分にまかせて安易な方向をたどる場合、時に「浮艶・余情」のそしりを免れない。

理論的にはきわめて正しい花園院の歌風は、情感がそれにともなわず生硬で含蓄に乏しいものとなりやすい。

 

身をもって京極派和歌と共に生きた永福門院が最後までその正道をふみはずさず、よくこれを継承発展せしめて、真情にあふれた充実した秀作を数多く残しえたのは、

一方に為兼の主張を学問的に深く理解した花園院の批評眼のあった故であり、

 

花園院のすぐれた歌論もまた、

これを実作に具現する女院の数々の秀歌のうらづけを得て、一層の光をはなつものである。

 

この両院が相補い相助けて、伏見院・為兼なき後の京極派歌壇を指導して行かれた所に、

玉葉集から更に歩を進めた風雅集独特の内観性――ほとんど宗教的にまで深められた沈潜閑寂の美への開眼がなされたのである。

 

 

後期に限って

京極派をながめるのも、

とても興味深いですよ。

 

 

花とりの春におくるゝなぐさめにまづ待ちすさぶやまほとゝぎす

 

 

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