慈円 しぐれつる | わたる風よりにほふマルボロ

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現代短歌新聞2021年4月号

作品掲載

 

new「源氏で紡ぐ和歌便り」

2021年10月分掲載new

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雨後落葉といふことを
 
しぐれつるたかねの雲は晴れのきて風よりふるはこの葉なりけり
 
慈円
玉葉和歌集冬868(869)
 
 
 
【現代語訳】
 
時雨を降らせていた
高い山の嶺に架かる雲は
晴れ、遠退いて、
いま風より降って聞こえるのは
時雨の雨ではなく
木の葉の音なのだった。
 
(訳:梶間和歌)

 

 

【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

しぐれつるたかねの雲:

 たったいままで

 時雨を降らせていた高嶺の雲。

 「つ(つる)」は完了の助動詞。

 

たかね:高い山、その頂

 

風よりふるはこの葉なりけり:

 風より降るのは時雨ではなく

 木の葉なのだった、

 木の葉なのだと気づいたよ。

 「けり」は気づきの助動詞で、

 気づきゆえに詠嘆を伴う

 ニュアンスを持つ。

 聴覚情報の助動詞「なり」は

 名詞には接続しないので、

 この「なり」は断定の助動詞。

 

 

 

先ごろまでは

風より時雨が降っていた、

 

しかし、時雨の雲の退いたいま

風より降るのが時雨、

ではあり得ない。

 

そうか、

同じように聞こえる音は

風に散らされる木の葉の音

だったのだ。

 

……と気づいたという設定。

 

 

現代短歌の人たちが

適当な意識で使いがちな

「けり」の

本来の“気づき”のニュアンスを、

正確に読み取りたいですね。

 

 

少し大げさな気配もありますが、

こういう姿の歌と考えれば

じゅうぶん許容されるでしょう。

 

 

 

これは「六百番歌合」での詠。

 

 

建久三年(1192年)

九条良経が百首歌を企画、

 

12人の歌人の詠んだ百首歌が

翌四年、歌合の形にされた、

 

それが通常

「六百番歌合」と呼ばれます。

 

のちの「千五百番歌合」と合わせ、

新古今時代、また和歌史の

代表的な歌合とされます。

 

 

「しぐれつる」は

「六百番歌合」冬部一番、

「落葉」題で詠まれ、

 

顕昭の

はれくもるしぐれに色をそめながらひまなくふるは木の葉なりけり

六百番歌合冬部481

と番えられ持となりました。

 

ただしそちらでは二句

「峰のむら雲」で、

 

慈円の家集『拾玉集』でも

「峰の村雲」の形で

入っています。

 

 

「六百番歌合」での

「しぐれつる」の歌番号は482、

 

『拾玉集』では1585。

 

 

「峰のむら雲」が初出で、

約1世紀後の『玉葉集』撰集時に

「高嶺の雲は」の形で

入れられたのか、

 

それともそれ以前に

「高嶺の雲は」で伝わる本が

あったのか。

 

そのあたりに

私は詳しくないので、

ご存じの方がいらしたら

教えてくださいね。

 

 

しぐれつるたかねの雲は晴れのきて風よりふるはこの葉なりけり

 

 

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