平経親 月かげの | わたる風よりにほふマルボロ

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new現代短歌新聞2021年4月号

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「源氏で紡ぐ和歌便り」

2021年4月分掲載new

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為兼家にて月次(つきなみ)の歌よみ侍りし時、卯花を

月かげのもるかと見えて夏木立しげれる庭にさける卯の花

平経親
玉葉和歌集夏306

 


 
 
【現代語訳】

月光が漏れるのかと見えて、

それは、実際には
夏木立の茂った小暗い庭に

咲いている卯の花だったよ。
闇夜に真っ白に浮かぶ

卯の花だったよ。

(訳:梶間和歌)
 
 

【本歌、参考歌、本説、語釈】

 
月かげ:月光

 

もる:漏れる

しげれる、さける:「茂る」「咲く」の

 命令形「茂れ」「咲け」に
 完了・存続の助動詞「り」の
 連体形「る」の接続した形。
 「茂っている(茂った)

 「咲いている(咲いた)」の意。

 ここでいう「茂った」「咲いた」は

 過去ではなく完了なので、

 「茂る」という動作が起きた(茂った)

 その結果が現在にも影響している

 (茂っている)、と捉える。
 

 

 

詞書の最後が

「夜卯花を」というものも読みました。

 

新編国歌大観では「卯花を」、

 

岩波文庫『玉葉和歌集』では

「夜卯花を」。

 

 

 

さて、歌も見てゆきましょう。


 
題で「卯の花を詠みましたよ」と

答えを言っているといえば

そうなのですが、


いったん題を無視して

歌だけを読むとすると。


初句から順に言葉を追い
景を心に描いてゆくと、


月影の漏るかと見えて、

月影ではないその正体が
少しずつ少しずつ解かれてゆき、
最後に卯の花の純白が

真っ暗闇に咲いているのだ

と明かされる。

 

それはつまり

読者の心に卯の花が咲く

ということでもあり、

 

飛躍というほどではないですが、

こういう収め方は

読んでいて心地よいですよね。

 

 

 

京極派和歌には

時間の流れの詠み込みが

端的でうまいものが散見されます。

 

平経親は伏見院近臣、

前期京極派歌合作者、

伏見院死去に際して出家もしている

ということで、

京極派歌人のひとりと捉えてよい

存在なのかな。

 

というその経親の

「月かげの」ですが、これ自体は

時間の流れを詠み込んだ歌

ということではありません。

 

ただ、

初句から順に読んでいった際に

鑑賞する側の心に

謎解きの時間が生まれるので、

 

それなりの時間を

擬似的に意識がたゆたい

楽しんだような気持ちになれます。

 

 

まあ、先にも書いたとおり、

題で答えを

言っているのですけれどね。
 

 

月かげのもるかと見えて夏木立しげれる庭にさける卯の花

 

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