式子内親王 春はすぎ | わたる風よりにほふマルボロ

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夏の歌の中に

春はすぎまだ郭公(ほととぎす)かたらはぬ今日のながめをとふ人もがな

式子内親王
玉葉和歌集夏296

 


 
 
【現代語訳】

春は過ぎ、かといってまだ

ほととぎすは啼き交わさない今日。
そんな今日の長雨につけても

深まるながめ……もの思いを

晴らしたいなあ、
誰か訪ねて来る人でもいたら、
などと思うけれど。

(訳:梶間和歌)

 
【本歌、参考歌、本説、語釈】  

 

郭公かたらはぬ:「かたらふ」は普通

 話し合ったり交際したりする

 人が人とのやり取りを表すが、

 ここではほととぎすを

 擬人化した表現と考えられる。


ながめ:長雨と眺め(もの思い)の掛詞

とふ人もがな:

 訪うて来る人がいたらいいのになあ

 


 

 

式子内親王は生涯に

たくさんの百首歌を詠みましたが、

完全な形で残っているのは

残念ながら3つのみです。

 

この歌は、通称「B百首」と呼ばれる

百首歌の「夏」部の冒頭の歌。

 

「B百首」は、

建久五年(1194年)五月二日に

近い時期に詠まれたと考えられる

百首歌です。


 

「春はすぎ」は、
『式子内親王集』に収められている
「B百首」に入っている形ですと

春過ぎてまだ郭公かたらはぬけふのながめをとふ人ぞなき

と、初句と結句が

『玉葉和歌集』入集形と異なります。

『玉葉集』は『新古今集』より

ざっくり百年ほどあとの成立、

 

式子内親王は

『新古今集』成立を待たずに

亡くなっている、という時代感。

 

 

『式子内親王集』が伝わる過程で

書き換えられた可能性もありますが、

 

『玉葉集』入集時に、撰者京極為兼が

書き換えたのではないかな。



私は、初句は

『式子内親王集』の形のほうが、

結句は『玉葉集』入集形のほうが

好きです。

 

「とふ人ぞなき」と

きっぱり言ってしまうより

 

「とふ人もがな」と
ふっくら表現したほうが

 

余情があるじゃありませんか。

 

 

春はすぎまだ郭公かたらはぬ今日のながめをとふ人もがな

 

 

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