クソ重い 「心の花」2020年5月号掲載作品 | わたる風よりにほふマルボロ

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「心の花」2020年5月号掲載分

(2月提出分)詠草

 

梶間和歌

 

 

 

チェッククソ重い七尺脚立(ナヽシャク)担ぎ来て据ゑて建て込みをするガテン系女子

 

逆手(さかて)にもロック締め上ぐ生き方はクソ不器用なガテン系女子

 

チェック拾ひ出しもだいじな仕事さんすうの苦手な我れもガテン系女子

 

チェック髪を巻きひとつにくゝりメットして汗を流せばぐつしやぐしやなり

 

されど我がメット外せば寄りて来る男らもをりメッセ、パシフィコ

 

チェック出戻りの我れには見えず女子レギュラー同士の距離感ほんたうのとこ

 

チェックひたぶるにオクタノルムを組みてゆく憂さもむかしも忘れたければ

 

脚立より基礎工事(キソ)を見渡すその果てに居場所を思ふガテン系女子

 

 

チェックのあるものが掲載されました)




 
【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

 

髪を巻きひとつにくゝりメットして汗を流せばぐつしやぐしやなり

 

汗を流せば:汗を流すと(必ず)

 ここでの已然形につく「ば」は

 順接の恒常条件。

 

 

されど我がメット外せば寄りて来る男らもをりメッセ、パシフィコ

 

メット外せば:ヘルメットを外すと。

 ここでの已然形につく「ば」は

 順接の確定条件のうち

 時系列、偶然の条件を表すもの。

 

 

ひたぶるにオクタノルムを組みてゆく憂さもむかしも忘れたければ

 

ひたぶるに:ひたすらに

 

忘れたければ:忘れたいから。

 ここでの已然形につく「ば」は

 順接の確定条件のうち

 原因、理由を表すもの。

 

 

 

7首目の「ひたぶるに」が

選者先生の注目作品に

採られました。

 

 

私のなかでは、この歌は

一首で立つ歌というより

全体の調和を取るために入れた

歌という意図だったので、

 

単体で注目作に採られたのは

意外でした。

 

 

職業詠が評価されがちな

結社であるとはいえ、

ほかの歌も職業詠とわかりますしね。

 

あえてこの歌だったのは

なぜかしら。

 

通常「憂さもつらさも」とするところを

「憂さもむかしも」としたひねりが

評価されたのかしら。

 

 

 

実はこの一首、

結句にかなり悩みました。

 

 

私、このブログでしばしば

 

現代短歌の「がに」の

 99パーセントは誤用です。

 真似しないでください。

 

 辞書を見てください。

 古典和歌での使用例を

 確認したうえで

 自詠に使ってください」

 

と言ってきました。

 

 

ひたぶるにオクタノルムを組みてゆく憂さもむかしも皆忘るがに

としたかったのですが、

 

常々「がに」に気をつけろと

言っている身ですもの、

もちろん自分でも辞書をチェック。

(8年前に雨に降られて濡れた名残が笑)

 

 

ね、私

②の使い方がしたかったので、

 

動詞「忘る」の連体形に

つけなければいけない

ということがわかります。

 

 

次、「忘る」を見てみましょう。

 

私は原則

上代(だいたい『万葉集』のころ)

言葉は使わず、

 

中古(平安時代ごろ)以降の

言葉や活用を選択します。

 

なので、

私が「忘る」を四段活用するのは

 

「忘られず」「忘らるゝ」など

助動詞「る」に接続する形のみ。

 

その他は

必ず下二段活用しています。

歌集過去の作品を見てみてね^^

 

 

なので、

「がに」②の使い方をするとなると、

 

「皆忘るゝがに」

とせねばならない。

 

これは、ちょっと、

韻律上無理ですね。

 

 

結句8音で醜くない形は、

 

5・3音(「君をこそ思へ」など)など

ごく限られたものになります。

 

4・4音(「君にもあるかな」など)なんて

愚の骨頂ですね。幼稚園児か。

 

「皆忘るゝがに」は2・6ですね。

これもなかなか醜い。

 

 

ですので、却下。

「忘れたければ」としました。

 

 

が、いま辞書を振り返ると、

 

「がに」①の、

程度・状態を表す使用法として

 

「皆忘るがに

 (憂さもむかしも皆忘れるほどに

 ひたぶるにシステムを組んでゆく)

とすればよかったなあ、

 

と思います。

 

この場合の「忘る」は

下二段活用「忘る」の

終止形ということですね。

 

 

そもそも私が「皆忘るがに」を

真っ先に思いついた理由は、

 

どこかでその言い回しを

読んだ記憶があったから

 

だったのですよね。

 

 

死ぬほど古典和歌を

読んできたなかでの記憶なので、

どの和歌集の誰の歌だったのか

なんて確かめられませんでしたが。

 

Googleさんに尋ねてみても

ぱっと出てきませんしね。(調べた)

 

 

 

と、これだけ書いてきて

私が何を伝えたかったか

というと、

 

気をつけるべき語や表現に関しては

私だってしつこいほど辞書を引いて

考えに考え抜いて

語や活用を選んでいます

 

ということ。

 

 

【歌の詠み方】コラムなどで

散々うるさく言っている私ですから、

 

その私が背中を見せなければ

「おいこら梶間w 」

という話でしょう。

 

 

なかにはいますからね。

というか、そのほうが多いかな。

 

言う事は言うわりに

ご自分のあり方は

主張と矛盾していませんか、

 

という歌人たち、また

短歌業界外の各種リーダーたち。

 

 

私のモットーのひとつは

「及ばぬ高き姿をねがふ」、

 

美しく生きることを

至上命題としています。

 

そういう、

あからさまに美しくない事は

選択したくないのです。

 

 

 

この月はプチエッセイも

掲載いただきました。

 

……半年前のエッセイですが笑

 

 

こちらも改めて掲載します。

 

ではまたね。

 

 

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