京極為兼 木の葉なき | わたる風よりにほふマルボロ

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題をさぐりて歌つかうまつり侍りし時、冬木(ふゆのき)といふ事を

木の葉なきむなしき枝に年暮れてまためぐむべき春ぞ近づく

京極為兼
玉葉和歌集冬1022


 
 
【現代語訳】

木の葉の残っていない
むなしい枝のまま、年は暮れて、
また草木の芽の
萌え出づるはずの春が、
新しい春が……近づくのだ。

(訳:梶間和歌)


【本歌、参考歌、本説、語釈】

むなしき枝:
 漢語の「虚空」を「虚しき空」と呼ぶ
 などの工夫から生まれた表現か。
 「むなし」は
 「空っぽだ」「儚い」などの意。

まためぐむべき春:
 再び芽を出すはずの春。
 助動詞「べし(べき)」は文脈により
 厳密な訳は変わるが、
 「そのように見込まれる、
 そうなるはずだ」などが核となる。




盆地である京の都の夏と冬は
大変厳しい。

そんな背景もあってか、従来
季節の歌では
春と秋が豊かに詠まれてきました。


では夏歌はといえば、
春を惜しむ歌秋の気配を感じる歌

冬歌には秋を惜しむ歌と、
春を待つ歌、またその気持ちから
春のかすかな気配を
早くもつかもうとする歌

とが多いです。

ほととぎすとか、あやめとか、
それは、ありますけれど。

春の桜や秋の月と比べたら
申し訳程度、

夏は春と秋に
冬も秋と春に心が向かう、

という詠み方がもともとでした。


という和歌の美学も
絶対不変のものではありません。

冬の、厳しさのなかに見える美
が歌に詠まれるようになったのは、
中世の社会変動という背景も
あるのか。

新古今時代とか、その少し前とか
そのあたりから
冬の空の様子や寒さを
積極的に詠もうとする試みが
増えて見えます。


中世は冬の美が積極的に開拓された時代である。
歌人たちは、凍りついたような冬の月や、冷え冷えとした氷に関心を寄せ、競ってつめたく透きとおった美を追求していった。

こちら、式子内親王の「忍恋」題の歌を
女心として読む、などという
学者として初歩的なミスを犯している
ところもあります。
(「忍恋」題の歌は、作者の性別を問わず、
 歌の中の主人公は男である
 という設定と決まってる)


が、引用したこの箇所については
参考にしてよいと思いました。




そういう変化を経て
新古今時代から約百年、
『玉葉集』のころには、
冬の歌の秀歌がぐぐっと増えます。

京極派では、四季歌全体をとおして
自身の感情や感傷、解釈を
排した歌の詠み方が
深められています。
(もちろん例外もありますが)

その、感情や解釈を排した詠み方と
最も相性のよい季節が、
桜の春でも月の秋でもない
厳しく冷たい冬だったのでしょう。




京極派の春の歌を見ると、
その視線の細やかさや優しさに
心が温かくなります。

では京極派の冬の歌は、と見ると、
「こんなにも厳しいものを
 こんなにも真っ直ぐに見、表した
 人たちがいたとは」
と、背筋の伸びるおもいがします。

“わかりやすい優しさ”は
感じられない代わりに、
春歌へのそれと同じ細やかさが
冬歌にも貫かれている。

その細やかさが
冬という季節の厳しさと調和して、
「秀歌」と呼ぶしかない歌になる。

また、「秀歌」とまでは言えずとも、
「この気配がすばらしい」
「この佇まいに圧倒される」
という歌になる。


絵画ではありませんが、
“眼福”という言葉が浮かびます。




そんな冬もいよいよ終わり、
明日は立春。

京極派の冬歌とお別れするのは
さびしいですが、
明日からは歌のうえでも
春を味わってまいりましょう。


木の葉なきむなしき枝に年暮れてまためぐむべき春ぞ近づく


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梶間和歌の評論の掲載された

『短歌往来』2020年4月号


「現代短歌社賞」応募作8首抄

掲載された『現代短歌』

2020年1月号


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