自ら堕(お)ちるは、堕ちてゆけ。
自ら離れ、去りゆく者よ。
滅びし後に、悔いても遅し。
いかに悔やみて、後悔すとも、後(あと)に戻れぬ時の流れよ。
巡り巡りて、時代は変わり、時の流れは禊(みそ)ぎなん。
この世の不浄も、人の汚濁(おだく)も。
この世を覆(おお)いし幾多の悲しみ、苦しみ、叫び、呻(うめ)きに呪い。
洗い流せよ、浄めゆけ。
苦難は去りぬ、嵐とともに。
猛りし暴風、暴雨の跡には、星も瞬(またた)き、安らぎ与えん。
人の繁栄幸福に、無用のものは一切捨て去れ。
無駄な持ち物多からば、溺(おぼ)れて沈まん。浮き世の流れに。
執着、妄想、憎悪に嫉妬。
心の底にて澱(よど)める汚れを、残らず浚(さら)いて、清流にせよ。
何も望まぬ、思わぬ心は、恐れも悩みも迷いもなければ、清く流れて、澱むことなし。
全てが明快、単純なれば、選ぶに迷う 煩(わずら)いもなし。
ただ目の前の課されし務めを、力を抜かず、手を抜かず、平常心にて続けゆくのみ。
人は一つのことをのみ、十二分にも果たすが大事。
多くの才能、才知を誇り、己あやまつ不幸もあらん。
一つのことにて、人生は、過分の恵みをもたらさん。
意味の深遠、道の奥義を、極めんためには、歳月かからん。
太く短き人生よりも、細くて長き人生を。
人には見えぬ価値なれど、心の奥の宝石は、永き時にて輝き増さん。
~神から人へ〈下〉: 今日の話題社: 新版 (2003/09)ひふみ ともこ より~
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