神から人。
神から人へ、伝えんと、教えんとせしことの多くを、今早や忘られ、見捨てられ、人の多くは過去のこと、過ぎ去りしことを振り返らず、ただに己の前のみを、先のことのみ 慮(おもんばか)る。
なれば人は過去から未来へ、残し伝えることもなく、自ら学びて得ることもなく、同じ過ち繰り返し、返りて罪を深めゆくなり。
何故(なにゆえ)多くの過去からの、財産、知恵を大切にせぬ。
新しきことのみ目を奪われて、古人の知恵や教義信仰、学ぶるに足ることの多けれ。
古きを捨てて今をのみ、新しきのみ求むれば、やがては忘られ、衰えん。昔のことばに、神への祈り。
神の存在疑う心は、神を卑(いや)しめ貶(おとし)めん。
神は人を救わんことを、願い導くものなれど、人の真の祈りのなくば、神の思いも届き得ず。
神の願いも叶え得ず。
ただ残るらん、空しき思い。
やがては神も諦めて、人の改心待ちたれど、人の気づくは尚難(かた)く、さらなる過ち繰り返さん。
人は心を忘れぬる。
神を思い、人を思い、平和を思い、愛を思う。
家族の幸せ、世界の繁栄、文明の富、文化の発展。
全てを望み祈る心を、忘れて望むは物のみの、目に見え、形に触れる物。
形に見えず、手に触れず、心や思いで感じることは、人の内から衰えて、昔の人の敏感さ、昔の人の敬虔さ。
さなる心の豊かさを、取り戻し得ず、今は戻らず。
人は心を失いて、魂汚して何を得ん。
今の世のみの繁栄か。
泡のごときの名声名誉か。
いずれも儚(はかな)く移ろいて、やがては朽ちる花の如(ごと)。
一度(ひとたび)得てもすぐに消え、満たされぬ思いをいかにせん。
真の富を何故(なにゆえ)求めぬ。
何故(なにゆえ) 儚(はかな)き一瞬の、雲の如くに移ろい変わる、利那(せつな)の夢のみ追い求むる。
虹の下には何があらん。
虹を求めて歩めども、虹は瞬時に消え失せなん。
なれども求めて彷徨(さまよ)う者の、愚かに哀れなこの世の生よ。
哀れみ愛(いと)しみ気づかせんと、すれども人の愚かは深まる。
なれば気付けよ悟れよと、親の心で論(さと)せども、届かぬ人の心の遠さよ。
親の心は神の御心(みこころ)。
神の心を思え、我が子よ。
~神から人へ〈下〉: 今日の話題社: 新版 (2003/09)ひふみ ともこ より~
http://www4.tokai.or.jp/kmh/index.html