予期せぬ巡礼
古い友人がホスピスにいることを手紙で知ったハロルド・フライ。
彼女への返信の手紙をポストに投函するために家を出て、ふと、彼女に会うために歩いて向かうことを思い付く。出発地はキングスブリッジ、目的地はベリック・アポン・ツイード。500マイル(800キロ)の旅路。……たとえ500マイル離れても~……の500マイルですね。君に遠すぎて。
ポスターに「手ぶら」とあるけどお財布は持ってたし、最初のうちはホテルに泊まるし、、、
ところが日本の東海道を旅するのとは訳が違って(まあ私も東海道を踏破してないんで想像なんですけれども)ほどよく街があるわけでなし、宿は言うに及ばず、途中からは野宿の旅になる。拾った寝袋で………人の気配のない山野を踏み分け………この時点で「日本では無理だな~~~~」とつくづく思いました。気候が。常時暑いか寒いかジメジメしてるか雨が降っているか台風が来ているか、そのすべてか、の日本で、ほぼ手ぶらで800キロを踏破するのは無理。60日間の旅の半分以上を野宿で過ごすのも無理。
ところで思ったんですけど星空のディスタンスは実際のところ東京ー大阪間の遠距離恋愛の曲だったりします?500マイル=800キロ≒東京―広島間、という前提のもと、「たとえ500マイル離れても」=現時点において500マイルは離れていない、とすると、そういう仮説が成り立ちますよね……考えもしなかった。地球の裏側くらいの相手に歌ってるくらいの壮大さだからさ……
閑話休題。
ひとり地面を踏みしめながら、焚火の横で眠りながら、ハロルド・フライは目を反らし続けてきた自身の過去と向かい合う。優秀だったはずの息子が大学で道を踏み外し薬に溺れ、やがて自殺した過去と。例え世間から評価されなくてもお前を愛しているし自慢なのだと一度も言えなかった過去と。妻とふたり、傷付いた者同士傷口を舐め合うこともできずに息を殺して生きてきた過去と。
まさしく巡礼とはそうしたものであろうと、信仰心を欠片しか持たない私は感じ入った次第です。ただ聖地へと向かって歩きながら、自分自身と対話する。そこで得るものがある人がいるかもしれないし、何も得られない人もいるかもしれない。出会った人にいい影響を与えるかもしれないし、なにも与えないかもしれない。与えられるものを喜べるか喜べないかは常に変化し続ける。なにもかも、自分自身の気持ち次第。
なんかしみじみいい作品でした。けっこう好き。
映画館を出て最初にキングスブリッジからベリックの経路をGoogleMAPで調べて「最短徒歩:7日」の答えを見て、「やっぱり先生に頼らないと道に迷うよね~~~↑↑↑」という感想を抱いた・巡礼する気のこれっぽちもない自分を再認識できたのも良かったです。
本日公開。よろしければぜひ!