下の親知らずを抜かなければならない。
前々から矯正歯科の先生に言われていたことなのだが、そろそろほんとに抜かなければならない。
僕は、ちっちゃい頃歯並びが悪くて、放っておくと成長期と共に猪木ばりのしゃくれになってしまうという危険があった。
そのため、爾来何年にも亘って歯列の矯正治療を受けてきたという経緯がある。
現在も補定装置と言われる入れ歯的器具を付けているが、お蔭様を以て歯並びは現在ではかなり矯正されている。
しかし、下の親知らずの野郎共が何を血迷ったのか完全に横向きに埋まっていて、こいつが生えてこようとすると奥歯を押してしまい、せっかく並んだ歯列を崩してしまうというのである。
そのようなわけで、僕は下の親知らずを抜かなければならないのである。
昨日、その検査のために歯医者に行ってレントゲンやらなんやらを撮影した。
すると、状況は思っていたより面倒極まる事態になっているということが判明した。
なんかその親知らず共は横向きに埋まってる上に骨に埋まっているため、抜く場合にはハグキをざっくり切開し、骨を削り、親知らずを細かくカチ割りながら抜いていくことになるのだという。
なにそれ。工事?
おまけに運の悪いことに僕の親知らず共のとても近くに神経が通っており、抜歯の際にその神経を圧迫したりすると、術後アゴのあたりに麻痺が残ったりするのだそうな。
なにそれ。後遺症のこるってなにそれ。
そんな困難極まる抜歯術になるため、担当は院長先生か外科医しかやれないんだそうな。
なにそれ。歯医者で「困難」ってなにそれ。
もう「親知らず」という名前とか生えてる位置とか、存在自体が嫌い。
「もう親知らずというか、うんこです。」といつもなら言うところだ。
でもうんこが口の中にあるというのも嫌なので、今回はやめておこう。
なに?なんなの?
大人になってから生えてくるその中途半端さなんなの?
他の歯が頑張って生えてきてるときに全然出てこないその協調性のなさなんなの?
あとそんな奥で食べ物噛まないからね?そんな食道の直前で噛んでたらなんかまだ飲み込みたくないときに飲んじゃったりするからね?なんなの?
あと「親知らず」って名前なんなの?なに迷惑な存在なくせにちょっと特別な名前ついてんの?謝れ!お前らより役に立ってる他の奥歯の皆さんに謝れ!
あーもう。
自分の身体の一部に危害を加えられるのほどもどかしいこともない。
僕は以前、足の爪が巻いて自分の足の指に食い込んで痛くなる「巻き爪」という病に悩まされたことがある。これはつらかった。
僕のこれまでの人生史上もっとも痛かった経験は、この巻き爪によるものだ。
僕の巻き爪治療の先生は、麻酔もせずにその巻き爪付近を素手でむしり取ったりするバラし屋ジョネスみたいな人だったので、そのときの苦痛は言語に絶するものがある。
痛みで全身から汗が吹きでるという経験は、後にも先にもバラし屋の手にかかったときだけだ。
まあ、そんなジョネスばなしはともかく、僕は自分の身体の一部に攻撃をされることが多い。
怒りを誰にぶつけていいのかもわからず、もっともストレスが溜まることの一つであることは間違いない。
てかこの場合俺が悪いの?どうなの?親知らずって俺なの?巻き爪って俺なの?つまり自傷の一種という扱いなの?どうなの?
まあいいや。なんでもいいや。
それにしても、明日から卒部旅行である。
荷造りしなきゃ。
寝坊しないようにしなきゃ。
5時起きだもの。