私の暗く卑屈な青春を育んだ、天才ジャズピアニスト。
その名も、アール・ルドルフ "バド" パウエル。
通称、バド・パウエル。
大学生の頃、新しい音楽に触れたくて、巨匠マイルス・デイビスのオムニバス盤CDを購入したのですが。
あんまり良さが分からず、ジャズは若い頃に聴き込まないとヤバイ、と感じました。
トシとったら、ついていけない世界かも、なので。
前述のジャズ評論家、後藤雅洋氏のジャズ入門書を読み、モダンジャズ界の天才、チャーリー・パーカーとバド・パウエルを聴き込まねば、と思い。
そして、バド・パウエル全盛期の最高傑作「ジャズ・ジャイアント」のCDを購入し、毎日、聴き込みました。
冒頭の「テンパス・フュジット」のスピード感に圧倒され、凄いと思い、何度も繰り返し聴き込み。
「セリア」は、ミディアムテンポながらも、鍵盤を叩く音が明瞭なノリの良い曲で好ましく。
さりげなく、超絶技巧のソロを織り込んでくるカッコ良さが好ましく。
バラード「アイル・キープ・ラヴィン・ユー」の、美しさと言ったら、もう。
ですが、アメリカン・ポップスを聴き慣れた耳には難解な曲も多く。
特に、終盤のバラード3曲「エイプリル・イン・パリ」「イエスタデイズ」「ボディ・アンド・ソウル」は、美しくもなんだかオドロオドロしていた怖かったのですが。
毎日、通して「ジャズ・ジャイアント」を聴き続けていました。
半年後、怖かったバラードを含めて、このアルバムの凄さに、ようやく気付いた次第。
この、情感あふれる演奏の凄まじさ。
虜になりました。
バド・パウエルは、モダンジャズ・ピアノの開祖とされ、ピアノトノオのフォーマット(ピアノ・ベース・ドラム)はパウエル以降に定着した、とされています。
また、パウエルが出現して以降、全てのジャズ・ピアニストはパウエルの影響下におかれるか、または意図的にパウエルの影響を避けるしか無かった、と言われております。
まさに、パウエルの呪い。
パウエル以降では、ビル・エヴァンスが、ピアノ・トリオ演奏で脇を固めるベース、ドラムとの調和を重視し、インタープレイと呼ばれる楽器同士の対話で、新たなるピアノ・トリオのスタイルを確立しましたが。
そのエヴァンスですら、「インスピレーションの源はパウエルだった」と述べているのであります。
バド・パウエルに関する話題は尽きず長くなりますので、またの機会に。