【みんなちがってみんないい4 特別編】
前回までは、
「気候や地形が違うと、文化もこんなに違うんだね!」
という話をしていましたが、今回は特別編。
「こんな共通点もあるんだね!」です。
●中国(杜甫 とほ)
春夜 雨を喜ぶ
好雨 時節を知り
春に当りて乃ち発生す
風に随ひて潜かに夜に入り
物を潤して細かに声無し
野径 雲 倶に黒く
江船 火 独り明らかなり
暁に紅の湿ふ処を看れば
花は錦官城に重からん
(こううじせつをしり
はるにあたりてすなわちはっせいす
かぜにしたがいてひそかによるにいり
ものをうるおしてこまやかにこえなし
やけい くも ともにくろく
こうせんひ ひとりあきらかなり
あかつきにくれないのうるおうところをみれば
はなはきんかんじょうにおもからん)
気の利いた雨は、降るべき時節をわきまえていて、春が来るとすぐに降り始める。
風にしたがってひっそりと夜に降り始め、すべてを潤す。繊細で、音も立てない。
野道も雲も黒々としており、川船がともす灯だけが明々と見える。
明け方、紅に湿ったものがあり、なんだろうと見てみると、花が錦官城(っていう城)に、垂れかかっているのだった。
●日本(詠み人知らず)
龍田川 錦織りかく 神無月 時雨の雨を たてぬきにして
(たつたがわ にしきおりかく かんなづき しぐれのあめを たてぬきにして)
龍田川は、自ら錦を織っているみたいだ。この11月の秋雨を、縦糸と横糸にして。
鑑賞
共通点は、雨の見方。しっとり、しとしと。
杜甫は、音も立てない、細くて繊細な春雨を見ています。その春雨は、すべてを潤し、道や空を漆黒に染め、遠くに灯る船の灯と、花の紅を際立たせています。
それはまるで、一枚の絵のよう。染め上げた、一枚の反物のよう。
日本の和歌は、細く繊細で、柔らかい秋雨を、「布の縦糸、横糸みたいだ」と表します。それが、紅葉を織り込んで(龍田川、龍田山は紅葉の名所)、さながら錦の反物みたいである、と。
個人的なイメージでは、絹のような、柔らかく、肌触りのよさそうな布になると思うのです。
春か秋かという違いはあれど、この二つから伝わってくる雨の優しさは、そっくりであるように思うのです。
次にそんな雨が降った時、この二人と思いを共有してみてください。
1000年以上の時を超えて感情の共有ができることに、きっと感動すると思います。
ではまた(^^)/
わらび