つれづれにっぽん32 【みんなちがってみんないい4 特別編】 | つれづれ にっぽん

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にっぽんの神話を、エッセイ風に書いています。

【みんなちがってみんないい4 特別編】


前回までは、

「気候や地形が違うと、文化もこんなに違うんだね!」

という話をしていましたが、今回は特別編。

「こんな共通点もあるんだね!」です。

 

 

●中国(杜甫 とほ)

 

春夜 雨を喜ぶ 

好雨 時節を知り  

春に当りて乃ち発生す

風に随ひて潜かに夜に入り  

物を潤して細かに声無し

野径 雲 倶に黒く  

江船 火 独り明らかなり

暁に紅の湿ふ処を看れば  

花は錦官城に重からん


(こううじせつをしり  

はるにあたりてすなわちはっせいす

かぜにしたがいてひそかによるにいり  

ものをうるおしてこまやかにこえなし

やけい くも ともにくろく   

こうせんひ ひとりあきらかなり

あかつきにくれないのうるおうところをみれば  

はなはきんかんじょうにおもからん)

 



気の利いた雨は、降るべき時節をわきまえていて、春が来るとすぐに降り始める。

風にしたがってひっそりと夜に降り始め、すべてを潤す。繊細で、音も立てない。

野道も雲も黒々としており、川船がともす灯だけが明々と見える。

明け方、紅に湿ったものがあり、なんだろうと見てみると、花が錦官城(っていう城)に、垂れかかっているのだった。

 

 

 

●日本(詠み人知らず)


 龍田川 錦織りかく 神無月 時雨の雨を たてぬきにして


(たつたがわ にしきおりかく かんなづき しぐれのあめを たてぬきにして)

 

龍田川は、自ら錦を織っているみたいだ。この11月の秋雨を、縦糸と横糸にして。

 

 

 

鑑賞

 

共通点は、雨の見方。しっとり、しとしと。

 

杜甫は、音も立てない、細くて繊細な春雨を見ています。その春雨は、すべてを潤し、道や空を漆黒に染め、遠くに灯る船の灯と、花の紅を際立たせています。

それはまるで、一枚の絵のよう。染め上げた、一枚の反物のよう。


 

日本の和歌は、細く繊細で、柔らかい秋雨を、「布の縦糸、横糸みたいだ」と表します。それが、紅葉を織り込んで(龍田川、龍田山は紅葉の名所)、さながら錦の反物みたいである、と。

個人的なイメージでは、絹のような、柔らかく、肌触りのよさそうな布になると思うのです。

 

 

 

春か秋かという違いはあれど、この二つから伝わってくる雨の優しさは、そっくりであるように思うのです。

次にそんな雨が降った時、この二人と思いを共有してみてください。

1000年以上の時を超えて感情の共有ができることに、きっと感動すると思います。

 

 

 

ではまた(^^)/

わらび