自分が小学生になったばかりの頃、学習机を買ってもらいました。
当時、学習机といえば、キャラクターもの(仮面ライダーやウルトラマン)が飾り付けられていたような机が流行っており、多機能なタイプ(万年カレンダーや時計がついているなど)なものが多い状況でした。そしてそれらは、ほぼ例外なくスチール製でした。
当然、買ってもらえる学習机はそういった、スチール製のキャラクターものの机だと思っていました。
ところがうちの親は、「そういうものは長くは使えない。将来にわたって長く使える、落ち着いたタイプのものがいい」と言い張り、結局買ってもらった机は、大人の書斎においても不自然ではないような、木製のシンプルな机になりました。
当時の自分は、その決断が心から不満でした。
複雑なギミックのあるものが大好きだった自分には、シンプルな机は全く興味を持てなかったのです。
しかしそれから10年以上、毎日、毎日、その机に向かいました。
受験勉強も、ほとんどその机の前で行いました。
高校時代の「生徒手帳」を、その机の引き出しの一番前の引き出しに入れたまま実家を離れてしまったため、ずっとそのまま、机を開けば高校時代が蘇ってくるようでした。
もちろん、帰省時は、もっとも落ち着ける場所はその机の前になっていました。
そして時代はさらに流れて、両親がなくなってしまい、実家に住む人がいなくなって、とりあえずとっておきたいものは今の自分の住んでいるところへ持ってくる必要が生じました。
証書類とか、アルバムとか、貴重なものは早急に移動しましたが、大きいものは移動していませんでした。
そして、家具などの大きいもので引き取っておきたいものは何か考えた時に、唯一思い当たったのがその机でした。
なんだかその机だけは取っておきたくて、結局父の三回忌の時にワゴンタイプのレンタカーでその机を運び、今の自宅まで運んだのです。
片道のレンタルでかつ、大きめのワゴンを2日間借りたため、レンタル代は安くありませんでしたが、その机を今の家に移動することができて、かなり気持ち的には落ち着く材料となりました。
・・思えば結局、うちの親の言う通りでした。
自分が小学生の時に、シンプルな木製の机を買ったおかげで、ほぼ生涯にわたって使い続けられる机を手に入れることができたのです。
それは実家を離れても、将来実家の家屋を手放すことになっても変わることのない、貴重な存在となっていました。
もしもあの時、キャラクターもののスチール製の学習机を買ってもらっていたら、とっくにその机は処分されていたことでしょう。
おそらくその机は、生涯手放すことなく、自分のもっとも落ち着ける机として残していくと思います。