バックストレッチ | LOVES ME LOVES ME NOT

LOVES ME LOVES ME NOT

ストイックになりたい僕が過ぎ行く日々を綴る僕の僕による僕だけの日記

僕はどうも気分が晴れないときに


〝風の歌を聴け〟を引っ張り出してきて読む


引っ張りだしてきてと言っても昨夜も読んだので机の上にあったのだけれど


ガラス張りのローテーブルの上には


山積みになった吸殻が鎮座する灰皿、ロングピースとジッポ、銀色の携帯と白い携帯、


イヤホンが絡まったウォークマン、内定先から届いた書類、テキスト、そして風の歌を聴け


どれもが僕の手に取られる事を待ち侘びてそこにあった


しかし彼女が渡してくれた銀色の携帯も僕の白い携帯も今日は鳴らない


テキストも書類も読みたくない


BGMだって今はいい


僕が厳選なる審査の上で取り上げられたのはロングピースと風の歌を聴けだった


吸い込んだ煙をゆっくりと鼻を通して出す


少しだけ目がチカチカした


パラパラとページをめくり一番好きなところに辿り着いてそこから読み始めた


「僕は時折嘘をつく。」


ここからが大好きだ


僕だって時折嘘をつく


だけれど、彼女の前では正直に素直に誠実でありたい


素直さが我が儘さを含み僕の感情のリミッターを解除させてしまわぬようにしたいとも思う


そうなってしまう時、僕は自分がどうしようもないぐらい嫌になる


彼女は言う


「貴方は自分の感情を押し込めすぎなのよ。気を遣いすぎるのよ。


過去にあった事がトラウマみたいになってるのは分かるけど私には全部言って欲しいの」


僕はただ我が儘になりたくないだけなんだ


いろんな事に恐れているだけなんだ


自分が嫌な人間になっていくのを見たくないんだ


そう思うと僕は頭に浮かんだ言葉一つだって吐き出す事が出来なくなってしまった


彼女に対する想いが僕を我が儘にさせ、どんどん嫌な人間になっていき


そして自己嫌悪に陥って何一つ喋れなくなる


なんて皮肉なんだ


僕の胸にある純粋な彼女に対する気持ちがストレートに彼女の胸に届けばいいと思う


そうすれば誤解も食い違いも全部全部なくなってしまうのに


言葉だって必要なく僕等は想いを重ねることが出来るのに


全ては僕の問題だった


少しづつでも変われたらいいと思う


彼女の為にも


そして僕自身の為にも



そんな日はバイクにまたがって空港までの長い直線道路を飛ばして走りたくなる


僕は実際に3kmはあるであろう直線道路をフルスロットルで出せるだけ出して飛ばした


羽織ったウインドブレーカーはバチバチと音を立て風圧を直接身体にあびたが


それでもこの爽快感は癖になりそうである


バイクにまたがって操作に集中し風を感じ一体になるときだけ


僕の様々な事を忘れさせてくれた


単気筒で恐ろしい程のスピードは出ないが嫌なことを忘れさせてくれるには十分なスピードは出た


低速域ではドッドッドッドッド…と心地よいマフラーからのサウンドが僕を癒してくれた


これからもっと愛していくであろう250TRを煙草を吸いながら眺めて


僕は冷えた身体を風呂で温めて


今しがたもってきた山崎の12年を飲んで眠りにつこうと思う


明日には何かが変わっていると信じたい


決定的でなくていい


段階的でいい


僅かでも変わっていて欲しい


そう願うしかない夜なんだ