趣味で歌うオペラアリア | INClaireの音楽な日々

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内藤郁子INClaireが、音楽について日々思うことや生活の中の音楽の話を書きます
音楽のたくさんのジャンルで、壁を作らず線引きだけして、
どれも体験して、魅力の違いを比べるのがおもしろい
音楽って一曲ずつそれぞれの魅力だと思います


Chère Musique



このひと月くらい、ヴォアクレールの秋の演奏会のために歌の演目を選んでいて、いろいろと考えたり工夫したりしていることを話題にしてみます。

ピアノソロ、声楽ソロ、二台ピアノ、重唱、アンサンブル、バンド、弾き語り、リトミック、合唱、、、、全部で約30演目。


その中でクラシックの声楽の生徒さんが三人。
三人ともソロ演奏もご希望で、その他に重唱やアンサンブルなど。
そのソロの選曲について。

女性のお一人は歌曲になりそうで、原曲の調がその方にとってちょうど良い音域なので、移調しなくて済みそうです。

あとのお二人女性と男性なのですが、この方々は毎回オペラのアリアをご希望されて、この二年に一度の演奏会で毎回一番選曲に苦労しているお二人です。


女性男性どちらも声楽を習っているキャリアはとても長く、上級者です。
ですから、発声はよく響くようになっていて、イタリア語ドイツ語フランス語など歌詞の発音は丁寧に指導すれば毎回きちんと出来るようになりますし、歌い回しや表現の面でもなかなかの演技をしてくださいます。

ただ、どうしてもある程度以上は難しいと思われる点は、高音の音域の限界を伸ばすこと。
これだけは、プロのようにはいきません。
なぜかと言うと、音域を広げていくには毎日毎日の弛まざる地道な長時間の練習が必要だからです。
趣味で声楽を習っている方が、キチンと会社勤めのお忙しいお仕事を持っている生活で、ストレッチから始まる本気の発声練習を何時間も毎日やるというのは、現実には無理です。
どんなに楽しんでいる本気の趣味でも、そんなことは週末に一回できれば良いほう。

そのような会社勤めの方が、響く声になり外国語で歌えるようになり演技ができるようになったのは、数十年という長い年月レッスンに通ってくださっているからこそ。
そう、それくらいのキャリアなのです。



というわけで、演奏会の度に毎回選曲に苦労しているのは、原曲のとおりの調で何も変更なく歌える「オペラのアリア」というのは無いからです。

それでもこんなに楽しく歌を趣味にしてくださっているのですから、私はどうしてもご希望どおりにオペラのアリアを歌っていただきたい。

結局どうしているかというと、女性の生徒さんにはアルト、男性の生徒さんにはバリトンの作品から選び、その中でも数回出てくる高音の部分だけ私が編曲してしまいます。






声楽に詳しい方はお分かりかと思いますが、歌曲やオペラアリアというのは、女性用はソプラノ、男性用はテノールの作品が圧倒的に多いのです。
数が多いだけでなく、人気の名曲もほとんどその音域です。

お二人とも、アルト(やメゾソプラノ)とバリトン(やバス)の作品にも素晴らしい曲はあるということ、それらの曲の魅力も、今ではすっかり分かってくださっています。
ですがやはり時にはどうしてもソプラノ、テノールの作品を歌いたいこともあります。

そんな時には、高音フレーズの編曲だけでなく、思い切って数音下げの移調もしてしまいます。

ただ、オペラアリアというのは本来オーケストラと共に歌うもので、オペラを上演するわけではない演奏会では、オーケストラパートをピアノに編曲してある楽譜を使って、ピアニストに共演していただきます。
そのピアノ楽譜は、元がオーケストラですからとっても難しく複雑。
それを移調して書き直すのは、何時間もかかりとても大変な作業です。
パソコンを使って書き直すのでも、楽譜専用ソフトをかなり使いこなせなくてはなりません。
不可能では無いですが、30演目くらいある演奏会の指導をする私には、ちょっと無理かな。
やったことはありますけれどね。



ですから今回も、メゾソプラノとバリトンのアリアの中から選曲しました。
移調はせずに、高音のフレーズに少し細工すれば大丈夫そうです。

とっても素晴らしい曲を見つけられて、本当に良かった。
きっと楽しんでいただけると思います。



Musique, Elle a des ailes.