Chère Musique
『モーツァルトのミサ曲』と題して、私の所属する“音楽工房くら”による企画演奏会が開催されます。
2024年3月31日(日)東京オペラシティ・リサイタルホール。
長い間シリーズで開催してきたこの演奏会も、今回の15回目で最終回となります。
合唱やソロの声楽、オーケストラなどたくさんの種類の演奏形態で、それらはすべてモーツァルト作品、というとても珍しい形の演奏会です。
メインプログラムは、モーツァルトが作曲した18曲のミサ曲。
それをすべて演奏しよう!という壮大な企画は、コロナ禍でできなかった年を挟んで19年かかりました。
今回のメインプログラムのミサ曲は『変ロ長調 K.275』。
その他、著名なソリストによるオペラアリアの名曲、混声合唱作品、女声ア・カペラによるカノン、オーケストラによる教会ソナタなど、多彩なプログラムです。
指揮は倉岡信先生、女声ア・カペラだけは私の師匠である倉岡典子先生です。
ソリストには、ソプラノに高橋薫子さん、アルトに牧野真由美さん、テノールに角田和弘さんという大御所をお迎えします。
この方々は19年前の第一回目、まだ中堅歌手でいらした頃からずっとご出演いただいていて、ご本人たちも楽しみにしてくださっています。
今回はその方々に加えて、若手の今一番旬な歌手の方々、ソプラノの白石佐和子さん、アルトの長澤美希さん、テノールの澤﨑一了さん、バスの田中大揮さんも活躍してくださいます。
合唱は私たちモーツァルトミサ曲合唱団東京、管弦楽はこのために編成されたモーツァルト・ミサ・オーケストラです。
ご好評いただきチケットは今回は既に販売を終了していますが、この企画に関するいくつかの視点からの話題を、私はいろいろなところで取り上げています。
この演奏会では、倉岡門下生である私は、合唱団の一員です。
この演奏会は珍しいタイプのものなので、 私が出る年には生徒さんたちはほとんど全員が聴きに来てくださっていました。
今回もたくさんいらっしゃいます。
一回目の時に、その生徒さんたちがこの珍しいプログラムの楽しさをどこまで味わっていただけるだろうかと考えました。
「ミサ曲って一体何だろう?」という方が一般には多いかも知れない、そうするとせっかくの貴重な機会を芯から楽しめないかも知れない。
よく解らなかったと思われるともったいないな、と思ったのです。
そこで、ミサ曲というのは一体何なのか、何がおもしろいのか、これを知っていれば興味を持って聴けますよという点を、事前にお話ししてみようかなと考えました。
そして、私が出演する年は毎回演奏会本番の数週間前に事前講座を開催する、ということが今回の最終回まで続きました。
毎回この講座はとっても好評で、これがあるおかげで演奏会自体が楽しめますと、皆さんに言っていただけています。
というわけで今回も、3月10日にたくさんのお話をしてきました。
前回の講座はコロナ前の2018年でした。
2019年はジュネーヴの年だったので、私は出られなかったので。
そしてその翌年の2020年からずっと演奏会が延期になり、今年になったのですが、その2018年のあたりから、私のこの講座への取り組み方が少し変わってきました。
初めの頃は若気の至りで、自分が勉強してきたこと研究したことを全部お伝えしようと思ってしまったのです。
ですから、資料もたくさんになったし、おそらく内容も難しい話になっていたかな、こんなことまで話さなくてもよかったかもと思うようなお話まで詰め込みすぎたかなと、今は振り返っています。
情報が多い割には、ミサ曲以外のプログラムについての解説が足りなかったのではないかとも思います。
それでも「この講座があったおかげで、演奏会が楽しかった」と言っていただけていたのですけれどね。
ミサ曲というのは、いろいろなことを知っていれば本当におもしろいものです。
例えば、そもそもキリスト教のミサって一体何?
その中で演奏される音楽?それらの音楽は全部「ミサ曲」なの?
そもそもミサ曲が複数曲の組曲だということも、それまで興味が無かった方はご存じなくて当たり前です。
誰がどういうふうに演奏するのか、どういう内容なのか、どんな歌詞なのか。
ミサ曲のお決まりのパターンがあることなど。
楽しんでいただくためには、それくらいまでをお伝えすればいいわけですよね。
ですが私はそれに加えてミサの歴史などまで、初めの頃は詳しく語ってしまったのです。
ミサ曲以外のキリスト教の音楽についても詳しくご説明したりもしました。
失敗だったとまでは思いません。
そのおかげでいろいろと音楽の知識が増えましたと言っていただけたり、その知識を元にたくさんの曲を聴いて楽しんでいる方もいたり、良かったとは思うのです。
でも、もう少し解りやすく楽しく、実際の演奏会に寄った内容の講座が良いのかな、と。
ですから今年のこの事前講座で力を入れたのは、今回の演奏会の全プログラム各曲について、どこが楽しいのか、どういう曲なのかということ。
そして出演者について、どんな方が出てくださるのか。
そしてモーツアルトについても、こういうことを知っておくと、モーツァルトという人物が身近に感じられておもしろいですよというようなこともお話しました。
何も知っていること全部お伝えしなくても、その演奏会を楽しむための講座なのですから。
改善したら講座がより楽しくなるなと思えたのは、やっぱり年の功かなと思います。
いろいろな講習会をこれまで長い間担当して講師の役を務めさせていただいて、少しずつ気さくで気楽な楽しい講座へと近づいていっているような気が自分でもします。
人によっては、昔お配りしたそのとっても詳しい専門的な資料も大切にとってあって、それを読んで楽しんでいます、と言ってくださる方も中にはいらっしゃるし、貴重な資料にはなると思うので無駄ではなかったとは思いますけれどね。
今回の講座のメニューはというと、、、
①まずイントロダクションとして、モーツァルトについての一番基本的な知識を確認しました。
そこでついでにザルツブルクとウィーンがどんな街なのかも簡単にお伝えしました。
②モーツァルトの人物について掘り下げました。
小さな子どものころのお話、お父さんの人物像、子ども時代はほとんど旅をして過ごしたことからのエピソード、ウィーンに生活を移してからの活動、などなど。
③作品の種類の多さとそれぞれの数の多さについて、キチンを数字で、その凄さを確認しました。
④ここでさらに深く、モーツァルトの音楽が私たち人間に何をしてくれるのか、なぜこんなに世に残り愛されるのかを考え、どう聴いたらどう演奏したら一番その良さを体感できるのかをお話しました。
⑤ミサの儀式としての歴史や実際の進め方などについて簡単に解説して、そしてミサ曲とはどういうものかということとその聴きどころや歌詞についてのお話をしました。
⑥今回の演奏会のプログラムをご紹介して、
⑦出演者お一人ずつ、どんな方なのかをお伝えしました。
本当に素晴らしい顔ぶれなので。
⑧演奏される作品ひとつひとつについて、聴きどころなどをじっくりと解説。。。
していきましたが、最後の方で時間切れとなり。。。
端折ってしまったところは、これから一人でカメラに向かってお話して皆さんに送る予定です。
⑨この講座を受講してどう思われたかを、お一人ずつ感想としてお話いただきました。
こんな内容の講座でした。
この講座で聞いた話やもらった資料をもとに、演奏会では生徒さんたちが少しでも深くモーツァルトの音楽を体感して、楽しく幸せな時間を過ごしてくれるといいなぁと思います。
今週も先週と同じく、ポッドキャスト、ブログ、エッセイ、動画と、一週間すべて同じ3月末のモーツァルト演奏会とその事前講座をテーマにしています。
同じテーマでも話すまたは書く場所によって内容が違うので、その違いを楽しんでいただけたらと思っています。
このブログは、火曜日のポッドキャストとホームページブログを合わせました。
Musique, Elle a des ailes.