柊の誕生日プレゼントだったもの。

かならぎ。


















柊、と彼女は名乗った。

それが苗字なのか、はたまた名前なのかはわからなかったが、綺麗な響きだと思った。


「そっちは?王子って呼ばれてるみたいだけど。名前?」


王子な愛称であって名前ではなかった。

別にそう呼んでもらっても良かったが、柊には名前で呼んでほしいような気がした。


「奏叶。」

「カナカ?」

「そう」

「どういう字をかくの?」

「奏でるに叶える。」

「あて字だ」


あて字で悪かったな。

そう言い返そうとするより先に柊が微笑んだ。


「でも綺麗。綺麗な響きだね。」


綺麗なのは柊だった。

名前も表情も、心を掴んで離さない。

目が、そらせない。



「俺も柊が名乗った時、全く同じこと、思った」


言葉がうまく出てこなかったが目を泳がせながらどうにかしぼり出したセリフはなんだか安っぽくて、柊に伝わったのか不安になった。

しかし再び見つめた先の柊はさっきとは変わり、楽しそうに口を歪ませていた。

こういう時の柊はロクなことを言わない。


「へぇ。そんなこと考えてたんだ?へぇ~?」

「なんだよ!ニヤニヤすんな」

「かな、意外とムッツリだね」


ほら、やっぱり。

なんとか反撃しようと言い返す。


「は!?そしたら同じこと思ってたんだしお前もだろ!」

「私、素直に声に出したもん」


ぐっ、と言葉につまる。

確かに俺は思っただけで口にはしなかった。


「はい決定。かな、ムッツリロマンチスト!」

「なんだそれ!!だせぇ!!」

「もう決まりました~」

「勝手に決めたんだろ!」


軽口を叩きつつ内心ホッとする。

見惚れてたことがバレたのかと思ったが、ムッツリスケベだといじられることだけは避けられたようだった。








驚いた。

今までに感想を伝えただけであんなにも熱い視線を送ってきた人がいただろうか。

もしかして、私のこと。


いやいやいや!!そういえばあいつは素でああいうことをする奴だった。

かなの行動1つ1つをまともに受け取ってはいけないって何度思ったことか。

あの顔はきっと今日の夕飯のメニューでも考えていたに違いない。うん、絶対そう。







(あれ。私、かなとは今日が初対面じゃなかったっけ?)

(ん?俺、柊と初めて会ったはずじゃなかったか?)



((ま、いいか。))












ここからは柊が描いてくれたやつ。

一部を漫画にしてくれたんだけど、やばくね?


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短い話がダラダラと続いてる感じになってきたなぁ











前回のあらすじ。

変な独り言を聞かれた。






教室に入っても視線はあまり感じなかった。みんな友達作りに必死でこちらのことなどまるで見えていないようだった。


「んじゃ、教えて!さっきの話。って言いたいところだけど。まずは自己紹介だよね」


気になりすぎて色々吹っ飛ばした~!とケラケラ笑うこのクラスメイトは菅(すが)と名乗った。下の名前を聞くのはさすがに距離をつめすぎかと思い、あえて聞くことはしなかったが自分も名字だけ名乗ると「え、下の名前は?」と聞かれ、名前で呼ばれるようになった。

今まで人付き合いについて深く考えたことがなかったからか逆に考えすぎて空回りをしているような気がする。



そこから他愛もない話をして、スガちゃん(そう呼んで、と指定された)のコミュ力に驚かされ、人生で1番人間と関わりを持った1日となった。


帰り道はたまごに今日あったことをどう説明しようかを考えるのに忙しかった。

たまごはどう話しても無言で頷くだけだろうが。





「ただいまー!」


いつもより元気に挨拶をしてたまごが待っている居間へ急ぐ。


「たーまちゃん!今日ねー


ペラっとたまご専用毛布をめくって話しかけると、そこはもぬけの殻だった。


……?ん?え、いない?」


そんなまさか。だって朝まではここに。

もしや泥棒!?空き巣!!?

今時珍しい巨大なたまごを狙って巨大組織がこの家に!?


「と、とにかく手がかりっ」


証拠があればすぐに通報してやる。

わたしの頭はこれでいっぱいだった。



カタッ。



突然背後から物音がした。

あまりに突然で心臓が止まるかと思った。

汗がダラダラと出てくる。


後ろにいるのは間違いなく犯人。

背を向けていては自分の命を捨てたも同然。

昔のわたしならばこのまま殺されていたかもしれない。

しかし今のわたしはまだ死ぬわけにはいかないのだ。






覚悟を決めてバッと振り返ると、そこには手足の生えたたまごが立っていた。









久々に続き書いた。










前回のあらすじ。

たまごに留守番を頼み大学の入学式へ向かった。




大学への道のりはたまごと何回も確認済みだったし迷うことはなかったが、大学に近づくにつれて同じく今日が入学式であろう子たちの割合が増えていく。

最初から知り合いなのだろうか楽しそうに話す4人組や、先ほど知り合ったばかりなのかぎこちなく、しかし一生懸命に会話する2人組、そして私と同じく1人不安を引きずって歩く人。


正門を通ってずんずん進み、集合場所と記された教室の前までやってきた。

なぜ閉まっている扉というのはこうも開けづらいのか。あの扉を開けたあとに教室にいる全員から浴びせられる視線が大嫌いだった(好きな人などいないだろうが)。


扉に手をかけては引っ込めるを繰り返す。

今までは学校生活に興味がなくて浴びせられる視線も無視して過ごしていたのに。


初めて自分の意見をぶつけて行動をしたことがちょっとした自信になっていたのか。新しく始まる大学生活に期待をしてしまっている自分がいる。


大丈夫、ひとりじゃないたまごがいるでしょ


失敗したって大丈夫。

よし、と扉に手をかけようとすると、背後に人が立っていた。


「!?!?」

「やっと気づいたぁ。結構前から見てたんだけど気づかないんだもん~!大丈夫?緊張してるの?」

「い、いや、あ、えっと、」


自分でも呆れるほどのコミュ障。

相手はそんなの気にならないのかケラケラと笑っている。


「そんな慌てなくても!!それよりも!さっきブツブツ言ってたたまごってなんのことーー!?」


うわー!!聞かれてたー!!というか声に出てた!?

市販の卵に話しかける女…そう思われたが最後、わたしの大学生活は終わったも同然だ。



「いやそれは!うちにいるたまごのことで!飼ってるっていうか!?決してスーパーで買った卵に話しかけてるとかじゃないから!!!!」


必死に言い訳をするも、むしろ墓穴を掘ってしまった気がするし、案の定相手はポカンと口を開けて止まった。


あぁ、終わった。これで今日からの4年間、わたしのあだ名は「たまご女」に決定だ…。






絶望を感じて俯いていると、突然背中に衝撃が走った。そして降って来る笑い声。


「あははははは!!!たまご飼ってるって何!?ぜんっぜん理解できないんだけど!!予想外すぎるでしょ!あなた面白いね!?話しかけてよかったー!あははは、あー、おかしい…」


目の前のおそらくクラスメイトなのだろう人はバンバンとわたしの背中を叩きながら爆笑している。

え、笑い…?ドン引きではなくて…?

今度は私が口を開けて止まる番だったようで、しばらくポカンと突っ立って相手が笑い終わるのを待った。

ようやく笑いがおさまったのか、クラスメイト(仮)は笑いすぎた時に出る涙をぬぐいニッカリとこっちを見た。


「詳しいことは中で聞くからさ、入ろう?」





そして私は人生で初めて自分以外の人間と教室の扉をくぐった。







たまごも出ないしまだまだ続く