予期せぬ長編になりはじめてる、たまご物語…
夏が終わっても宿題が終わらない
前回のあらすじ。
拾ったたまごに情が湧き始めた
某先生によると、たまごというのはだいたい1ヶ月前後で孵化するものらしく。
とりあえず孵化するまで毎日毎日あたためることに徹した。無論、当初企てていた食用作戦は中止だ。
最初のうちはただたまごに毛布を巻いていただけだった。
それがだんだんたまごに挨拶をするようになり。人肌ほどにあたためたタオルで拭くようになり。終いには、胡座をかいた足の上にたまごを乗せ、自分ごと毛布に包まって過ごすようになった。
たまごがいる生活が当たり前になった。
家を出たのは受験が終わり、学校という逃げ場がなくなったからだった。
息苦しい家にできるだけいたくなくて、したくもない居残り勉強をしていたがその言い訳も通用しなくなってしまった。
隠れ家は春から通う大学もまぁまぁ近いというのもあって適当な理由を並べたてて家を出ることに成功して今に至る。
たまごに出会ってから自分は随分と変わったように思えた。
家に帰るのが楽しみな時点で相当な変化だ。
とうとう1ヶ月が経って、気づけば外の木には桜が花を咲かせている。
たまごはすっかり隠れ家に馴染んでいて、 最初に来た時のようなかしこまった様子は少しもない。
「随分と慣れたみたいじゃない。これなら1人でお留守番できる?……なんてね」
いつものように話しかけてもシャイなたまごは答えない。それでいい。
1ヶ月経ってもたまごの大きさは変わらないし何かが孵化する気配もない、それでもいいのだ。
たまごのおかげでわたしも随分と温和になったようだ。
じゃあ行ってきます。といつものようにきちんと挨拶をする。
こうしてたまごをはじめて長時間放置する旅に、出た。
続く。
まだ産まれない