今回は、宿題にした債務免除益課税のお話です。

前回、「一定の要件を満たした場合、特例欠損金(いわゆる期限切れ欠損金等)や資産評価損を計上し、債務免除益と相殺できる」と記述しましたが、その一定要件について、説明します。

民事再生など法的整理をする場合は問題ないのですが、法的整理によらず、金融機関を中心とした債権者間での合意に基づく私的整理による再生をする場合、「一定の要件」を満たした場合、特例欠損金や資産評価損を計上し、債務免除益と相殺することができます。

一定の要件とは、①~③を全て満たすと同時に④又は⑤の要件を満たさなければなりません。

(法人税法施行令第24条の2


計画が、一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に従って策定されて
おり、次の事項が定められていること

A) 債務者の有する資産及び負債の価額の評定に関する事項(公正な価額による旨の定めがある)

B) 計画が当該準則に従って策定されたものであること並びに次の②、③に掲げる要件に該当することにつき確認をする手続並びに当該確認をする者(当該計画に係る当事者以外の者又は当該計画に従って債務免除等をする者で、財務省令で定める者に限る。)に関する事項 

※財務省令で定める者に関しては法人税法施行規則8条の6に記載されています。

債務者の有する資産及び負債につき①-A)に規定する事項に従って資産評定が行われ、当該資産評定に基づく債務者の貸借対照表が作成されていること。

②の貸借対照表における資産及び負債の価額、債務処理計画における損益の見込み等に基づいて債務免除等の金額が定められていること。

複数の金融機関等(地方公共団体、農水産業協同組合、保険会社を含む)が債務免除することが定められていること

政府関係金融機関、㈱企業再生支援機構又は協定銀行(㈱整理回収機構)が有する債権その他財務省令で定める債権につき債務免除等をすることが定められていること。

なにやら、わかりにくいのですが、要するに会計士、税理士、不動産鑑定士、弁護士、事業コンサルタントなど専門家を入れて客観的かつ合理性のある資産査定と事業計画を策定し、それに基づいて複数の金融機関又は政府系の金融機関が債務免除をする場合には、特例欠損金や資産評価損を計上し、債務免除益と相殺してもいいですよ、ということなのです。

該当例としては、㈱整理回収機構、㈱企業再生支援機構、中小企業再生支援協議会の指導・支援に基づく再生計画、事業再生ADRに基づく再生計画が挙げられます。

さて、「一定の要件」を満たす私的整理を行う場合に債務免除を受けた場合、債務免除益と相殺する損金は、資産評価損益を計上する場合と計上しない場合では、相殺する損金の順序が違ってきます。


(1)資産評価損益を計上する場合

①資産評価損益 ②特例欠損金 ③青色欠損金 の順

(2)資産評価損益を計上しない場合

   ①青色欠損金 ②特例欠損金 の順


特例欠損金は期限切れ欠損金のことですが、算入限度額が設けられています。いくら特例欠損金が積みあがっていたとしても、

債務免除益+オーナー等の私財提供益+資産評価益

当該年度の所得金額(青色欠損金や期限切れ欠損金の控除前)

を超えて損金算入することはできません。

従って、資産評価損益を計上しない場合においては、債務免除益と青色欠損金、特例欠損金を相殺した後は翌期以降への繰越欠損金はなくなる、ということになります。

一方で資産評価損益を計上する場合は、翌期以降への繰越欠損金が残る場合があります。

仮に資産評価益が出てしまった場合でも青色欠損金を残すことができ、再生計画スタート後のキャッシュフローにプラスの効果が得られ、債務超過解消年度が短縮できる、というケースも考えられます。


尚、資産評価損益は、含み損益が一定額に満たない資産(資本金等の額により異なる)については計上できないのでご注意下さい。

再生計画を組む際の税額がどのように推移するかの計画を立てることをタックスプランと言いますが、再生の成否に重大な影響を及ぼしますので、再生に詳しい税理士をメンバーに加え、十分検討することが重要です。



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