今回は不動産鑑定に関するお話です。
と言っても、私は不動産鑑定士ではありませんので、鑑定のイロハについてお話するわけではありません。不動産鑑定の必要性と、鑑定結果が再生計画に与える影響についてお話させていただきます。
再生計画における不動産鑑定は、なぜ必要か、ということなのですが、理由としては下記の2点です。
① 再生計画は「時価」ベースの資産を把握する必要がある。
Ø 再生計画を策定するにあたっては、対象企業の資産を時価で評価し、実態ベースで純資産がどのくらいかを把握する必要があります。財務デューデリジェンスで売掛金や在庫、投資の経理処理状況を精査し、適正価額に修正するのと同様に、不動産価格も時価ベースで評価する必要があります。
Ø 再生計画を策定しなければならない企業の場合、多くのケースが実態ベースでは債務超過状態になっています。
② 債権者の別除権を確定する必要がある。
Ø 再生計画を立てる場合、債務免除を伴うケースが多いのですが、債権者にとっては債務免除後の債権額が別除権(担保権)を下回ってしまう、ということは、経済合理性上認められません。
債権総額-債務免除額 > 別除権額 が成立しなければならないので、別除権を確定させ、債務免除可能額を把握するために不動産鑑定が必要となります。
不動産鑑定価格には、正常価格と早期売却価格があります。別除権を確定するに当たり、どちらの価格を採用するか、という問題があります。これは債権者や計画の承認機関(整理回収機構や支援協議会など)の意向にもよりますが、一般的には事業用資産は正常価格、遊休資産は早期処分価格を採用します。遊休資産は原則として処分し弁済資金に充てるというのが原則なので、早期処分価格を採用する訳です。
さて、ここでまた問題になるのが、不動産鑑定価格が高いほうが良いのか、低いほうがよいのか、という点です。
債権者の立場に立てば、別除権額が多いほうが良いので、不動産鑑定価格が高いほうが良い、と考えるのが自然です。第二順位以下の抵当権を持っている債権者にとってみれば、鑑定価格が高ければ自分の順位でも別除権がある程度確保できるかもしれませんから尚更です。
一方、債務者の立場に立てば、できるだけ債務免除額を増やしてもらいたい、と思うので、不動産鑑定価格を下げてもらい、別除権額を少なくしてもらいたいと考えるのが自然です。
よく勘違いされるのは、不動産鑑定価格を下げ、債務免除額を増やせば債務超過額も少なくなるのではないか、という点です。
以下のようなケースを考えてみてください。
簿価が140の不動産(固定資産)があり、鑑定の結果が80であったとします。
この不動産が担保の全てであるとすれば別除権は80となります。
非保全額は140-80=60となり、このうち30は返済してもらう、30は免除するとします。
ここで仮に鑑定結果が50になったとすれば、非保全額は90になります。このうち30を返済してもらうことにすると60免除できることになります。
借入金の額も30減少しますが、資産の価値も30減少しますから、債務超過額は変わりません。
もちろん借入金が多く残れば支払利息も多くなるので、その分収益が悪化し、債務超過解消まで若干時間がかかる、ということにもつながります。
一方、借入金と支払利息が少なくなり収益がアップすれば、税金が増加します。その結果キャッシュフローにも影響しますから、きちんとシミュレーションした上で検討しなければなりません。
尚、ここで説明したケースは非保全部分のうちの弁済額を固定して考えたケースですので、非保全部分の弁済率を固定した場合(例えば非保全額の50%を弁済すると決める)には、不動産鑑定結果によって実態債務超過の額は変わってきます。(当たり前ですが念のため)
それから、これも念のために書いておきますが、不動産鑑定士さんは、恣意的に鑑定価格を調整してくれる、ということはありません。また、そうならないように、再生計画策定のための鑑定は、債権者や債務者と利害関係のない鑑定士さんに依頼する、というのがルールとなっています。
鑑定結果でもめる場合は複数の不動産鑑定士に依頼し、その鑑定結果及び根拠を更に第三者に依頼して判定してもらう、ということもあります。
