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獣医師からの電話/タローを亡くしました(5)

4月17日、夜中の零時半頃に電話が鳴りました。

私は直ぐにそれが担当医師からの電話である事が分かりました。


まずタローへのお悔やみの言葉を頂きました。

そして説明が不十分であった為か、幾つかの相違点があると言われました。


まず、タローへの気管挿管は呼吸停止になってから実施されたとの事。

タローは呼吸努力をしていて、鼻に向けての酸素補給をしながら診察をしていたら呼吸停止になり、

気管内挿管をしたと言われました。

私が話の途中で既に手紙に書いていた内容を確かめ様とすると遮られ、

嘘偽りは申しませんと言われたので、医師のお話を先に伺う事にしました。


挿管時にタローの意識は無かったのかどうか尋ねると、呼吸出来なくなり苦しくて暴れていたとの事。


私が看護師さんから聞いたお話では、

私が処置室に入ると同時に、タローがえずき、酸素室に入れるかどうか考えたが、

舌色が変わっていて(チアノーゼ)、呼吸を上手くコントロール出来ないと判断し、

気管内挿管をした。>


医師の話と看護師の話が違っている事は、単に説明不足によるものなのでしょうか・・・・・

看護師さんは、えずいたタローを酸素室に入れるかどうか考えたとの事なので、

タローは呼吸停止ではなかったはずです。


又医師はInformed Consentをしましたと言うのですが、私は聞いていません。

医師は私に気管挿管、蘇生措置をしますと説明しましたと言いましたが、

それをInformed Consentと言えるのでしょうか。


また気管挿管に戻りますが、看護師さんの話からも、医師の話からも気管挿管に麻酔が導入されたかについて触れられていません。麻酔は導入されていなかったと思います。


医師は初めの診察は痛くも何も無かったのでと言われたので、

私は「先生も誰よりもご存知の事と思いますが、犬や猫は知らない場所、知らない人達に囲まれるだけで不安になるものです」と言いました。

そして、初めは必ず飼い主も一緒に体重、体温の測定をして欲しいとお願いしました。

そうする事で、医師、飼い主、ペットの間に信頼感が生まれるのではないかとお話しました。

又、危篤状態になった時は必ず飼い主を呼んで欲しいと頼みました。

それが愛する子との最期の別れになるかも知れないからです。


すると、医師は傍に立って居られたからと言いました。

胸に突き刺さるような言葉です。

心肺停止になってからやっとタローの名前を呼ぶ事が出来た私の悲しみを、悔しさを、

この医師はどこまで理解しているのかと思いました。

私が側にいながら苦しむタローに触れる事も出来なかった理由はご自分が一番知っているはずです。


医師と40分ほど話す事が出来ました。

「昨日はタローが亡くなって一週間目でした。先生とお話が出来た事が本当に嬉しいです」と、

最後にお礼を言いました。

タローの為に医師と話し合える事自体が私にとって貴重な時間でした。

会話の中で、医師から何度か「すみません」と言う言葉を聞き、その言葉の中に私は一抹の真実を感じ取る事が出来ました。

「嘘偽りを決して申すつもりはございません」と2度~3度言われた医師に対し、私はこれ以上責める事は出来ませんでした。


全てを知っているのはタローです。

私が今願う事は、医師、看護師さんがタローと話しをしてくれる事です。


医療から倫理が失われたら暴力でしかありません。

患者への暴力、家族への暴力になります。例え医療ミスが起きたとしてもそこに倫理があれば、

理解を得る事が出来ると思っています。

目の前に横たわっている犬や猫は、修理工場の中の機械部品ではなく、

たった一つの尊い、誇りある命であり、飼い主にとっては大切な家族である事を、

どうぞ忘れないで下さい。