ラファエル・アルベルティ「海。うみ」 (El mar. La mar) | スペイン語をめぐる諸々

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 ロルカの詩ばかり紹介していると「スペイン語の詩」というカテゴリーが嘘みたいになりそうなので、今回は別の詩人の詩を。ラファエル・アルベルティは、1902年にアンダルシアの港町カディスで生まれ、少年時代を過ごすが、15歳のころに家族と共にマドリッドに移る。最初は画家を志していたが、父親の死をきっかけに、詩を書き始める。当時まだほぼ無名だったガルシア・ロルカや、画家のダリと親交を持つ。1924年に処女詩集『陸の船乗り 』(Marinero en tierra)を出版。「海。うみ」(El mar. La mar)は、そのなかの一篇。

 ちなみに、"mar"(海)という単語は、特定の具体的な海の場合は男性名詞だが、抽象的に考えられた海の場合には女性名詞だと、辞書にはある。しかし具象と抽象の区別で性が変わるスペイン語の名詞は、自分には他に思いつかない。ちょっと特殊だろうと思う。男女同型の名詞なら、いくつか思い浮かぶが。たとえば"pianista"(ピアニスト)や"cantante"(歌手)など。

 

 

El mar. La mar.
El mar. ¡Sólo la mar!

  海。うみ。

  海。とにかくうみ!

¿Por qué me trajiste, padre,
a la ciudad?

  どうして僕を連れてきたの、父さん、

  街になど?

¿Por qué me desenterraste
del mar?

  どうして僕を引き離したりしたの

  海から?

En sueños, la marejada
me tira del corazón.
Se lo quisiera llevar.

  夢の中ではいつも、大きな波が

  心から遠くへ僕をさらってしまうんだ。

  心を持ったままでいたいのに。
 

Padre, ¿por qué me trajiste 
acá?

  父さん、どうして僕を連れてきたの

  こんな所に?