教育四十八手 その二十
過日、自由が丘のホルモン屋で天才と名高いウイグル人を囲って飲んでいると、まじまじと私の顔を見てくる店員がいた。こちらもどこか懐かしい顔だとおもったのだが、それもそのはず。かつての教え子で七年ぶりの再会であった。「N、憶えてますか。あいつ先生のあとを追って、英語教師になったんですよ」
と嬉しい報告もあり、教師冥利につきる。ふとそのまえの週も同じようなことがあったとおもいだした。一年半まえ、対人恐怖症で通学路もろくに通れなかった生徒が柔道で黒帯をとったと、嬉々として知らせにきてくれたのである。子どもは大人の背(そびら)を視て育つ。すなわち教師が今を棄てて変わる姿勢を背で語らなければ、子というものは頭越えしていかない。数%加算することはあっても、数%を棄てられぬ大人が増えたのが、教育界における根源的な問題のひとつなのではないかしら。つまりは男性ホルモン不足である。私の生徒の店で、すべからく大人はホルモンを喰らったほうがよろしい(笑)。