ベニカのイタリア語講座 第二回
意外とご好評いただきましたベニカのイタリア語講座、第二回のコーナーです。 今回のテーマは 「存在と所有」 ・・なんだか哲学みたい。 イタリア語に限らずヨーロッパ系の言語はほとんどの場合、「最も基本的な動詞」が二つあります。 無限にあるほかの動詞とは別格の、圧倒的に大切な動詞、それは、 「~である」という存在を表す動詞と 「~を持っている」という所有を表す動詞 です。 日本語だとちょっとピンと来ないと思うので、英語で言うと BEとHAVE ですね。 この二つは、「~である」とか「~を持つ」という意味の他に、受身のかたちの時に使ったり、過去形を作るときに使ったり、と、とにかく、単なる動詞ではないわけです。 イタリア語では、ESSERE(エッセレ、~である)と、AVERE(アヴェーレ、~を持っている)の二つ。 まず、「ESSERE」という動詞、つまり英語のBEであるこの言葉は、日本人としてはなかなか感覚がつかみにくいですよね。 日本語にした時に「~である」だ、と言われても、実際、「ナントカである。」という言葉を使うことってあんまりないしね。 ただ、日本語ではこれは「~は、~です」「~は、~だ」として使われているって言ってもいいのかなー。 私はベニカです。 私は元気です。 私の父は会社員です。 この学校は古いです。 これが、私の通っていた学校です。 あなたは美しいです。 などなど、これら全て、要するにESSEREを使うべきところで、それがわかれば、これが最も重要な動詞であることはご理解いただけるかと思います。 つまるところ、この動詞は とあるものが、こういう状態で存在する。 ということを規定する動詞なわけです。すべての事象はまず、存在しないことには何も始まらないので、最も重要であってしかるべき動詞ですよね。 そして、もう一つ、AVERE。「~を持っている」という動詞は、日本語ではそれほど重要とも思えないような気もするので、どちらかというとこっちのほうが違和感があるかも? 「存在する」の次に重要なのが「持っている」だというのは、わたくしは、ちょっと最初、不思議に思いました。 けれどこれは「所有する」ということで、 つまりあれよね、 人はまず「存在」し、存在が確定した後すぐにすることは「所有すること」なんだなー。 わー、超、哲学!! まあそんな哲学はともかく、この「持っている」ということ、これは、単に「鉛筆を手に持っている」という意味だけでなく、「~の状態を持っている」という表現にも使えます。 例えば、イタリア語では 「眠い」という言葉がないんですね。 「眠気を持っている」というふうに表現します。 同様に、「お腹がすいた」は「空腹を持っている」 「喉が渇いた」は「乾きを持っている」 「頭が痛い」は「頭痛を持っている」 そして極めつけ、年齢も、 「私は何歳です」というのではなく「私は○○年を持っています」 と表現するのですわ。 と、ここまで言っておいて恐縮ですが、とにかく、イタリア語では(まあ英語やフランス語、スペイン語でも一緒ですが)この二つの動詞、「ESSERE」と「AVERE」が重要なことを心の底からご理解いただければ、とりあえずここではOKです。 そして、いよいよ、イタリア語的最初の関門、「動詞の活用」をしなければなりません。 皆様、英語を習いたての時に出てきた「三単現のS」というのを覚えておいででしょうか? 三人称、単数、現在形のとき、動詞の最後に「S」がつく、というアレです。 I have We have You have You have He has←ココ! They have ってやつね。 これを忘れて中学校のテストで痛い目を見た方はたくさんいらっしゃるのではないかと。 そして、大変残念なことに、イタリア語は、三人称単数の時だけじゃなくて、すべての人称に応じて、動詞が変化してしまいます。 上記のとおり、「人称」というのは、全部で六種類。 一人称単数(私) 二人称単数(あなた) 三人称単数(彼、彼女、それ) 一人称複数(私たち) 二人称複数(あなたたち) 三人称複数r(彼ら、それら) このうち、英語では、三番目の、「三人称単数」のときにSがつく、というのだけ覚えればよかったのですが、イタリア語は6回変わります。 きゃあああああああああああああああ!! なので、イタリア語の動詞の活用は、魔法陣のような六マス表で各々表されることになります。つまり、 単数形 複数形 一人称 Io(イオ、私) Noi(ノイ 私たち) 二人称 Tu(トゥ、君) Voi(ヴォイ、あなたたち) 三人称 Lui、Lei (ルイ、レイ 彼、彼女) Loro(ローロ、彼ら) の、それぞれに対応する動詞がこのマスの中に入ってくるわけです。 わたくしも最初にそれを聞いたときに、愕然としたものでした。 ひとつの単語につき6個覚えなきゃいけないっていったいどういうこと?!単純に、6倍?! もうこれを聞いただけでたいていの人はドン引きですが、わたくしがイタリア語を大学で学び始めたとき、教授がおっしゃった一言を引用しておきます。 「皆さん、この動詞の活用の変化にビビると思いますが、わたしは10年以上イタリア語を教えてきて、いろいろな生徒にめぐりあいましたが、活用ができないという理由でイタリア語ができなかった生徒は一人もいません。慣れますから安心してください」 だそうです。 そしてわたくしからもう一つ。 イタリア語は確かにとっつきにくい言葉ですが、いい意味でも悪い意味でも、イタリア人は全員、イタリア語が話せます。 どんなに教育のない、たとえば頭の悪い人がいても、です。 「知的に話す、上手に話す」ことはまた別の話ですが、「普通に話す」というのは、ろくに学校も行っていないような荒くれモノにさえできることです。 なので、日本にいてイタリア語を学ぼう、などというハイブロウなことを思いついたアナタが、できないはずはありません。大丈夫です!! というわけで今日は、このESSEREとAVEREの現在形の活用を覚えましょう。 全てはそこから始まります。 ESSERE(エッセレ) 単数形 複数形 1人称 Sono(ソーノ) Siamo(スィアーモ) 2人称 Sei(セイ) Siete(スィエーテ) 3人称 E'(エ) Sono(ソーノ) AVERE(アヴェーレ) 単数形 複数形 1人称 Ho(オ) Abbiamo(アッビアーモ) 2人称 Hai(アイ) Avete(アヴェーテ) 3人称 Ha(ア) Hanno(アンノ) きゃー!! なにこれ?規則性もなにもなく、そもそも原型をとどめていないわ!! こんなにめちゃくちゃに変化するものなの?! しかもなにげにHが発音されてないんですけど?! と、わたくしも思いますが、ほかの動詞はちゃんと規則性を持って変化しますからご安心を! とにかくこの二人、というか二つの動詞はすべての意味で特別なのです。 なので、変化の仕方もめちゃくちゃだし、どーしてこうなる??という規則性のなさですが。 しかし、とにかくこれはイタリア語を学ぶための洗礼とも言える、とにかく最初のなんかんです。「なんで??」「どーして??」と考える前にとにかく覚えましょ。 そして、イタリア人はHの発音ができません、というか、日本語で言うところの「ハヒフヘホ」の音は、イタリア語には存在しません。 それならなんでHの文字をくっつけるのよ、と、わたくしも思いますが、そこは、ラテン語から続く連綿たる歴史があるのです。あきらめましょう。 なので、Hoはオ、Haはア、Haiはアイ。 うん、もう諦めて。この辺に文句言うのは。 その代わり、と言ってはなんですが、イタリア語は主語を言わなくても通じる言葉です。 「私は~を持っています」という意味を、 Ho(オ) という一音で表現できるという驚異的なエコ言語! 前述のとおり、私は「Io」なので、「Io ho」と言っても間違いではありませんが、Hoと言っている以上Ioに決まっているんだから、別にいう必要ないですよね? 同様に「Tu hai」というのが「君は持っている」ということになりますが、 Hai(アイ) と言っただけで「君は持っている」を表すことができます。 どうでしょう。ここまで、わかっていただけたでしょうか。 もうだいぶ嫌になってきているかもしれませんが、がんばろう! 来週までに、ESSEREとAVEREのそれぞれ6個ずつと、それぞれの人称の言い方(Io、Tu,Lui...)は、暗記しておいてね(ハート