昨日書いた、女神イザナミの事件簿が自分的に気に入っちゃったので、今日は逆の立場から、ズッコケ夫であるイザナギ視点のモノローグに挑戦!
男目線、いけるかな・・いけないかな・・とにかくやってみます!
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俺はイザナギ。
この日本国を作り上げた神であり、麗しの女神イザナミの夫だ。いや、夫だった、というべきか。
ああ、この国をこれだけのものにするためにいったいどれほどの苦労を積み重ねてきたことか。
忘れもしない、イザナミとの新婚の夜。
イザナミはけなげにも先に、愛の告白をしてくれた。不甲斐ない俺が言葉を発する前に。
そしてまさかそのことが、初めての出産にあんな影をもたらすとは!
女から先に愛を告白してはならないなんていう謎ルールが、我々の最初の子供を、この世にはとどめ置けない奇怪な形のものにしてしまうなんて誰が想像しただろうか。
初めての子供を捨てなければならなかった母親の気持ちは察するに余りある。
俺が不甲斐なかったばっかりに・・最初から俺がリーダーシップを発揮していれば、あんなことにはならなかったんだ!
そしてそのあともこの国のため、イザナミは出産を繰り返した。出産は母体に負担がかかる。数が多ければなおさらだ。
それでもイザナミはその試練に耐えてきた。だというのに!
ついにあいつが、あの恐ろしいカグツチがこの世にあらわれた。愛しいイザナミの体を焼きながら。
わかっている、火の神とはそういうものだ。何もかもを燃やし尽くす炎の化身。けれどそれをこの世に産み出すため、イザナミは焼けただれた体でもがき苦しみながら死んだ。
もちろん、この鬼子、憎きカグツチは俺の刀で一刀両断にしてやったけどな!
え、妻が命懸けで産んだ子供を殺すのはおかしい?そんなことはどうでもいい。俺はイザナミを愛していたんだ!
俺は死んでしまったイザナミを追いかけて、死の国へ向かった。
一歩間違えば俺も死の国の住人になったところだったが、そんなことはどうでもいい。俺はイザナミを愛していたんだ!イザナミがいないこの世など、意味がないと思っていた。いや、今でも思っている。
けれど---イザナミが「一緒に帰る」と言ってくれた、イザナミが----長い長い準備をしている間、不安でたまらなかった。一緒に帰ると言ってくれた言葉がうれしすぎて、本当のことだとは思えなくて、あの言葉が幻のように消えてしまわないか、イザナミが本当に準備をしているのかが不安で不安でたまらなくて、そして・・・・・・
俺は、見てしまった。
醜く変わり果てた愛しい妻の姿を。
肉はくずれ、ぽっかり空いた眼窩からは虫がはいずり出し、いや、虫ではないのかもしれない得体のしれないものを体中にまとわりつかせたイザナミ。それをどう取り繕うというのか、必死で化粧をしているイザナミ。
それは、もう、俺が愛したイザナミとは別のモノだった。
おそらく、悲鳴を上げてしまったのだろう。
俺の視線に気づいたイザナミの形相は---------思い出したくもない。
情けないと笑ってくれ。俺は、全速力で逃げた。死の国から生きるものの国へと続く上り坂を必死で駆け上った。追いすがってくるイザナミの配下の死人たちを退け、地の底から響くような恐ろしいイザナミの喚き声を背中に聞きながら・・。
そしてついに、あの黄泉比良坂にたどり着き、最後の力を振りしぼって大岩でその道を閉じた。
生死の境は、これで永遠に、行き来することができなくなった・・・。
それでも、イザナミの恐ろしい声は俺を追いかけ続けた。岩の向こうから、体は決して届かないのを知りながら、俺にむかって呪詛の言葉を吐き続けた。
この世の生きるすべてのものに、限られた命という呪いをかけた。死者の国の女王として、毎日毎日、1000の命を奪い、死の国に引き込むと。
だから俺は、毎日1500の命を生み出そうと決めた。これほどの犠牲を払って俺たちが作ったこの国を、イザナミとの美しい思い出を絶やさないために。
地下から戻った俺の体には死の穢れがまとわりついていた。
忌まわしい死のにおいと汚れ。これを川で洗い落とすと、次々と神が産まれてきた。
俺には分かった。これが最後の、イザナミと、俺の子供たちだ。
次々と生まれ出でた神々のうちの最後に----イザナミと俺の最後の最後の子供たち----現れたのが、アマテラス、ツクヨミ、スサノオだった。
今までのどの神とも違う、強大で美しく高貴な子供たち。
俺には分かった。この三神こそが、俺たちの美しい国を治めるにふさわしい神々なのだ、と。
イザナミを失った俺がこの国にいる意味はない。
そう、俺は悟ったんだ、妻を死なせ、その妻を見捨てた俺に、もう表舞台での居場所はないのだ、と。
・・まさか末っ子が特大問題児であることなど、この時の俺は知る由もなかった。
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ふー。何とかやり切ったぜ!
男視点になりきってやってみたけど、まあ、これはこれで仕方がないかなあ・・という気もしてきました。女視点からしたら、外見がちょっとアレなくらいで愛が冷めるってどーゆーこと!!と言いたくもなりますが、とはいえ髪を振り乱して追いかけてくる女は怖い。そりゃ、男は逃げる。
男と女のすれ違い、って感じですね~(えっ、そうなの?)
ところで。
一人称の小説仕立てでやらせてもらった手前、意図的に省いているディテールがいくつかあるんですが、そのうち大きいのが「糞尿問題」。
いやなんていうか尾籠すぎて恐縮なんですけど古事記って、幼稚園の男子レベルで、糞尿、だしてくるんですよね・・
一応シリアスな大人の物語書いてるときに、このディテール、なかなか盛り込めないじゃないですか。
なんかお話の方向性、変わっちゃうよ、的な・・。
具体的に言うと、イザナミが火の神を出産して死んでしまう原因は、そのものずばり女性の生殖器が火傷したからだ、というのはまあ想像もつくし、いいんですけど、でも別にそんな具体的に書かなくてもいいような気がするし(現に私は書かないで乗り切った)、
この死に至る描写で、もがき苦しむ女神は嘔吐し、糞尿をまき散らすんですよね・・ダイジョブなのかこれ・・?
そしていちいち吐しゃ物とか排せつ物の中からも神様が産まれてきちゃう!
でもこれリアルといえばリアル、死というものの恐ろしさを正面から見据えてるともいえる。
女神の死って、それはもう白雪姫とかみたいに(あれは死んでないけど)リンゴかなんかをそっと齧ってぱたりと倒れる、みたいなのが理想的ですけど、実際の死ってそんなもんじゃないんだよね・・。
そして、腐った死体(&蛆虫)の描写とかも、よく知られた光景だったんでしょうね。
当時の天皇や皇后は、亡くなってから数十日は死体のまま保管されて、わざわざ腐乱を確認されたりしてるから(いわゆる殯)・・一連のお話も「妻を亡くした天皇のうちの誰かがどうしても妻に会いたくなって死体に会いに行ってトラウマレベルのショックを受けた話」なのかもしれないと本気で思います。
(あとちょっと話はそれますが美女の死体が腐乱する様、って、その筋の愛好家、絶対いるよね。結構いろんなところでこのモチーフ出てくるもんね)
さてさてこんな素敵なご夫妻に産み出された日本の国ですが、その「今までで一番高貴」と言われた三人の子供たちのなんと二人までがまたいろんな大事件を起こしててんやわんや。
このあたりのお話も、気力が続けばいつかまた!