上限と下限 | うろこ雲のブログ

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前記事では実数列の場合にコーシー列であることと収束性が同値であることを示しました。


その中で上限・下限という概念が出てきたのですが、そこのところで感覚的に説明した部分をもう少し厳密に考えてみようと思います。



上限・下限の存在を調べる上ではまず、実数の定義を確認する必要があります。


そもそも「有界な部分集合には上限・下限が存在する」ことが定義の一部とされる場合もあるのですが、ここでは実数を「無限小数で表される数」と考えることにします。


ただし有限小数はその後にずっと0を続けることにより無限小数の特別な場合とみなすことにします。


また、1.00000……と0.99999……のような数は同じ数とみなすことにします。



上限と下限の議論には(大と小を入れ替えた)対称性があるので、以下では下限の場合について考えます。



Sを実数の(空でない)部分集合とします。


前回示した場合分けを下限についても同様に考えると



(ⅰ) Sに最小値mが存在する場合


(ⅱ) Sの中にいくらでも小さな数が存在する場合


(ⅲ) 下限はあるけれど、最小値が存在しない場合



に分かれます。


(ⅲ)で使われている下限という語はこれから存在を示そうとする「下限」とは意味が異なります。


本来は「下界」と言った方が正確ですが、下限と言った方がイメージしやすいのでこのように記しています。


要するに、ある実数sが存在し、Sに含まれるすべての数がs以上になるということです。



そこで下限の定義ですが、まず(ⅰ)の場合はmがSの下限(inf S)となります。


また(ⅱ)の場合はinf S=-∞と定義されます。



さて、(ⅲ)の場合において次の①が成り立つことを示してみましょう。



① 「Sに含まれるどの数もdより大きく、しかもdにいくらでも近い数がSの中に存在する」ような実数dが存在する



まず、Sには下限(下界)が存在するので、Sに含まれるどの数よりも小さな整数が存在します。そのような整数の中で最大の数をd1と置きます。


すなわちSに含まれるどの数もd1よりは大きいけれど、しかしd1+1以下の数は含まれているという状況です。


次に、0.1の倍数のうちでSに含まれるどの数よりも小さい数が存在しますが、その中で最大の数をd2と置きます。


つまり、d2=d1+0.1×k1 (k1は0以上9以下の自然数)


となります。


その次に、0.01の倍数のうちでSに含まれるどの数よりも小さい数が存在しますが、その中で最大の数をd3と置きます。


つまり、d3=d2+0.01×k2 (k2は0以上9以下の自然数)


となります。


この作業を限りなく続けていったとき、次の無限小数


② d1+0.k1k2k3……


を考えます。


ここまでの構成から、Sに含まれるどの数も②以上ですが、②より少しでも大きな数だと、Sの中にそれ未満の数が必ず含まれることになります。


よって②の数をdとして①が成り立つことが示されました。(同じ性質を満たすdが他にはないことも明らかです)



(ⅲ)の場合はここで存在が示されたdをinf Sと定義することにします。


上限についても同様です。



こうして上限および下限の定義(存在)が確かめられました。 (つづく)




それではオールディーズの名曲を一つ。


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