―6月8日は2014年フローター開きとシャレこもう。
そんなことを約束していた僕だったのですが、その相手は「リョウ」くん。
大会を通じて知り合った現役高校生ですが、昨年は一緒に房総ダムへ繰り出したり、なんてこともありました。
このリョウくん、高校生だてらに釣り経験は僕よりも長く、
また若者の特権としての「有り余る体力」「覚えが早い」「頭が柔軟」などのアドバンテージを活かして、
おそらく僕にとっての1年以上に濃密な1年を過ごしながら、着々と釣りの腕前を上げていき、
僕の半分ほどの年齢ながら、既に釣りに関しては僕が教えを請う立場にあったのでした。
ただ、そんな中でも「やっぱり高校生は色々キツイよねぇ…」と感じさせられたのが、
昨年に購入したというフローター。
アルバイトに精を出し、一念発起で購入したというフローターは、安全性と重量に定評があるゼファー社のもの。
僕も愛用しているためよく理解していますが、これはフローター単体でも10kgを超える重量があり、
装備品を含めると、その総重量は15kg近くいってしまうかもしれません。
そんなデカブツをどうやって釣り場まで運んでいるのかと聞くと、「チャリです」という実にシンプルな回答。
ママチャリの後ろにあのデカブツを括りつけて、前のカゴにはウェーダーやらフィンやらジャケットやらを突っ込んで、
そして片手にはロッドを持って釣り場まで運んでいるという。
確かに言われてみればそうするしかないんだろうけど、そりゃキツイよねぇ…。
行ける範囲も相当限られるだろうし。
―タイミングが合えば車で一緒に連れて行ってあげるよ、と言ったのは社交辞令ではなく、
せっかく高校生が大枚はたいて購入したフローターを腐らせないためにも、
ちょびっと年上の友人としては、助けてあげられるところは助けてあげたいと思っていたのでした。
そんなわけで僕自身も久しぶりのフローター釣行にワクワクしながら、装備品の確認などやりつつ週末を迎えたのですが…、
―リョウくん、梅雨だよ。
「梅雨ですね…」
―フロ、出す?
「いや、オカッパリですかね…」
僕としても、高校生に危ない橋を渡らせるわけにはいきませんよ。
残念ながらフローター開きは次回にお預け、当日は雨天オカッパリ釣行となったのでした。
当日は5時に集合します。
―おはよう、リョウくん。今日どこいこっかね。
「うーん…」
―僕はとりあえず、花見川は無いと思ってるんだけどね。
水門開けてるだろうし、たぶんめちゃくちゃになってるよ。
「ですよね…」
―新川の下流とか、魚が流されてきてないかね?
「そうですね…、ていうかそろそろ魚も流れに慣れてきてる頃じゃないかと思うんですけど」
―たしかにね。雨降りだしてからもう4日くらい経つしね。
だったら、下流の流れ込みを適当に流してけば何とかならないかね?
「…やってみますか」
ということで、行き先は城橋に決定。
ここからゆらゆら橋までの流れ込みという流れ込みを攻めていってどうにかしようという魂胆です。
大雨によって発生した濁りを嫌ったバスが流れ込みへ…、なんて安直な企みです。
思えば、流れ込みというのは万能な目標ですね。
春夏秋冬、雨が降っても槍が降っても、とりあえず流れ込みには行っておいて損はない、と、
逆に言うと確信が持てない状況でも「流れ込み」と言いさえすれば何とかなると、
こういったことは要するに思考を放棄しているわけなのですが、しかし分かりやすすぎる目標だけに
普段ならライバルでごった返す流れ込みも、
今日のような状況ならライバルもほとんどいないでしょうし、とりあえずそれでも良いだろう、
なんて自分に甘い僕はハンドルを城橋に向けて切ったのでした。
城橋に到着したのは5時半。
既に雨の中、橋近くで精力的にロッドを降っている人の姿が見えます。
…う、ライバルいた。
この雨の中、この早朝から、気合入ってるなー。
「むしろ昨日浮いてる人見ましたよ」
マジで!?この流れの中??エントリーポイントに帰れないんじゃないのかね?
…なんて会話を交わしながらスパッとレインウェアを着込みます。
川の状況を確認しようと岸から覗き込むと、まず目に飛び込んだのが想像以上に激しい流れと茶濁り。
…そして、増水。
―これ、やっぱり水門全開だよね。
「だと思います」
花見川も、まぁどっかには魚がいるでしょうが、
しかしこの状況ではおそらく難易度は普段の花見川とは比較にならないでしょう。
―花見川ではなく新川に来たのは、まずは正解、のはず。
そんなことを考えながらも、ライバルが居たことで流れ込みのいくつかは先に撃たれる可能性が出てきました。
急いで最初のポイントに向かいます。
最初の流れ込み。
結構な勢いで流れ込んでいますが、流れこむ水はどうやら綺麗なようです。
流れ込みからの綺麗な水と、茶濁りの本流の水との間で境界線が形作られています。
お、これは…。
―いいんじゃない!?
なんて期待を持ちながら直下を直撃します。
…反応なし。
―あれっ?
リョウくん、反応ある?
「ないっす」
流れ込みに絡んだコンクリ護岸やオーバーハングにも反応なし。
―普通に付いてそうなんだけどね。
「普段なら絶対釣れそうですよね」
ブツクサと会話を交わしながら、うーむ、という感じで次の流れ込みに移動します。
次の流れ込みは普段ならオーバーハングとなるべき立ち木が増水によって浸水し、
レイダウンのように水中を枝葉が漂っています。
―ハイこれ釣れた。
もうこれ絶対付いてるわ。
お試し中の直リグで水中の枝と枝の間を貫通させます。
そのまま糸を送ってフォールさせ…、
…あれ?
付いてないの!?これでも!?
「付いてそうなんですけどね…」
付いてないのか、付いてるけど喰わないのか。
後ろ髪を引かれますが、見切って次のポイントへ。
しかしその次も、さらにその次のポイントも反応なし。
うーむ…。
―これ、まだ流れを嫌ってるのかもね。
「反対の岸に回ってカバー撃ちますか」
―そうするか。
東側の岸にまわり、シャローカバーを狙います。
新しく出来た流れ込み。
その周辺を覆うカバーを狙います。
…あれ?

トンボ?ヤンマか。
尻尾に特徴があります。
ウチワヤンマってやつでしょうか。
普通、ヤンマの仲間は物に止まるときには羽を開いて止まるものですが、
羽を閉じているのは雨が降っているからでしょうか。
―雨宿りの邪魔をしないように距離をとります。
水が汚いと言われる印旛水系でも、このような瞬間に自然を感じます。
僅かながらホタルが生き残っているという噂も聞きますし、
子供たちが自分と同じ世代になる頃でも、今と変わらない自然が残っていることを心底願います。
…なんてことを考えていると、不意に、
「喰った!、、あああああああああああああああ」
!!!!
なんだ!どうした、リョウくん!
「…喰ったんですけど、巻かれてバレました…」
えーーーーーー!!!マジで!どこで喰った!!!
「そこです」
リョウくんが差した先は、葦のど真ん中。
葦のポケットとか、そんなレベルじゃありません。
普通に、葦。
長靴を履いていれば気付かずにスタスタ侵入していってもおかしくないポイントです。
…えげつな!
そんなとこ付いてたの、そりゃもう完全に流れを嫌ってるじゃん。
「ですね…、もう完全に流れの無いとこですね」
―ついでに言うと、濁りか。
流れと濁りがイヤなんだ。
近くに流れこみがあって、水が止まってて、水草があって、水深が浅い…
そんな条件のところにヤル気を無くしたバスが避難しているということでしょうか。
しかし、そんな都合の良いポイントがいくつも思い浮かぶわけもなく。
―てことは?結局入れるところは全部入って岸際を撃っていくという…、
「いつものやつですね」
―いつものやつだね。
そこからリョウくんと二人、雨が降りしきる中、ビシャビシャになりながら草をかき分け、岸際を撃っていきます。
レインウェアからわずかに覗いた肌を狙って、藪蚊が飛んできます。
虫除けスプレーは塗ったそばから流されていって、気休めにもなりません。
ジリジリと我慢しながら撃ち続けますが…、
「いないですね」
…うん。
いないのか、喰わないのか…。
気がつけば駐車場所近くまで戻ってきてしまっています。
―移動するか。いっそ桑納行ってみる?
「…行っちゃいますか!」
リョウくんの庭、桑納川。
流れと濁りが問題というなら、支流の上流方面はどうだろうか。
桑納にハンドルを切ります。
下流から岸際を撃ちつつ上流へ。
…お、そろそろ水が綺麗になってきた。
これなら偏光で水底近くまで見渡せます。
―あれ?魚かな?
目についたのはしかし巨コイの群れ。
さすがに水が良いところに逃げてきたか。
「コイうざいっすね」
うざいねぇ。
コイがいるとねー、バスは付かな…
…あれ?
リョウくん、あれバスじゃない?あの岸際にいるやつ…。
コイ?じゃないよね、バスだよね、あれ。
もう少し近くによって凝視します。
…間違いない、あのシルエットはコイじゃない、バスだ!
しかも、
「―キシミテールだ!!」
・キシミテール【名】【形動】
【名】シャローに上がり岸側の方向を向いてサスペンドしているブラックバス。見えバスの一種。フィーディング中である可能性が高い。
【形動】釣れる確率が高そうなさま。
ここまでの反応の無さと、雨と、湿気と、ヤブ蚊とによって下がりきっていたテンションが、
急激にレッドゾーンに突入していきます。
―確かに、あれはキシミテールだ。
やる気もなく回遊してるバスがたまたまシャローに居るという感じじゃない。
バスは特にフラつく様子もなく、一点を凝視して置物のようにその場に留まり続けています。
「―ガンミテールだ!!」
・ガンミテール【名】【形動】
【名】キシミテールである可能性が特に高いブラックバス。見えバスの一種。フィーディング中である可能性が特に高い。
【形動】釣れる確率が特に高そうなさま。
「デカイっすよ!アイツ50ありますって!」
―落ち着け!
そんなに無いよ、せいぜい45あるかないかでしょう。
ただ、リョウくん、喰うよ、あいつ。
悪いけど、見えバスは見つけた人に優先権があるというのが世の習いだ。
先にやらせてもらうよ。
バスの視線を避け、気づかれない一段高い位置から直リグを手に取ります。
―ベストは岸に落として、傾斜を転がすように水中に落とせれば…。
釣れるイメージは出来上がりました。
岸のチョイ上に…、
ヒュッ!
「ジャボッ!!」
!!!!!
やば!
手元が狂ったリグは思いっきり水面を叩きます!
バスは!?
スッ、と近寄って…
…プイッ!
だあああああああああああああああ、やっちまった…。
「…一瞬見に来たから喰うかと思いましたけどね」
もうちょい岸際だったなぁ…。
自然に落とせてれば喰ったかもしれないのに、何か違和感あったんだろうなぁ…。
キシミテールは沖のストラクチャに向けて移動して、やがて目視できなくなってしまいました。
くっそぉぉぉ…。これなら大人の器量を醸し出しながらリョウくんに譲ってあげればよかった。
ゴメン、リョウくん。
その後は上流を回遊する見えバスを狙うも、ことごとくシカトされ、
アタリの一回すら無いまま桑納を後にしたのでした。
「雨も弱くなってきましたし、夕方にワンチャンあるかもしれないですけどね」
…すまん、夕方から嫁さんに車を引き渡す約束なんだ。
完敗。
でもチャンスはあった。
あったのに、完全に自分のミスでみすみす逃してしまった。
「てかいつの間にか雨やんでるし、フロ出せましたね」
…出せたね、このくらいの雨だったら。
次はフローターでリベンジだね。
新たな約束を交わし、リョウくんを自宅まで送り届けたのでした。
2014/6/8(日)
雨→曇
弱風
気温:21度
水温:?度
アタリ:0
バラシ:0
ゲット:0
毎年、初バスは遠くとも一度釣れればその後は比較的ポンポンと釣れるはずなのですが、
今年はどうやら勝手が違うようです。
そろそろ水も落ち着き、今週末にはバスの活性も上がってくるのでは?と期待していますが、
何やら台風が近づいているようで、そうなると復活傾向もまたリセットされてしまうのでしょうか。
気もそぞろな今日この頃です。
―引き続き大会の参加者を募集しています。
我こそはと思う強者の、満を持したご参加をお待ちしております。