初心者が行く!印旛新川ベイトでオカッパリ -15ページ目

初心者が行く!印旛新川ベイトでオカッパリ

バス釣りド初心者の中年バサーがベイトオンリーで印旛新川に挑みます。

「日本で一番寒い月は何月ですか?」と聞かれたとして、

大半の日本人は、「それは1月です」と答えることでしょう。




さて、ということは、逆に「一番暑い月」というのは1月の正反対の月、

つまり6ヶ月後、理屈では「7月」ということになるはずなのですが、


「日本で一番暑い月は何月ですか?」と聞かれたとして、

「それは7月です」と答える日本人はむしろ少数派でしょう。



100人に質問したら95人以上は「それは8月です」と答えるはずで、

理屈では一年で一番暑い月となるはずの7月を、涼しくしてしまっているモノとは、なんでしょうか。






―そんなわけで、その「雨」というキーワードですが、4月の一週目からでしたかね、

全国的に突然梅雨入りしたかのような大雨が続きまして、週の半分以上、雨が降っているというような状況だったわけなのですが、

雨だけならまだしも、ここぞとばかりに春一番が吹き荒れて、

春一番と梅雨の、夢のコラボレーションということで、さぞや皆様、通勤通学に難儀されたかと思います。



下旬に差し掛かり、ようやくその異常な傾向は収まりましたが、

せっかくの週末を雨でフイにしてしまったリーマンバサーの皆様も多かろうと想像します。



僕もそんな一人…、と言いたいところなのですが、

実際は、仕事仕事であっという間に過ぎ去ってしまった3月4月でした。



元々年度末は忙しい傾向ではあるのですが、

今年はちょっとばかり仕事でオイタをしてしまい、その影響を4月まで引きずってしまったのでした。


お客様からの厳しいお叱りと、それと同じくらいの暖かな励ましのもと、

4月も中旬になって、ようやく週末が休めるようになった僕でした。




…今年の春はなぁ、やりたいこといっぱいあったんよ。

水温が10度をちょっと超えたくらいの時期にね、ビッグベイトをブン投げてね、

お腹パッツンパッツンのデカバスをね、ゴリゴリ巻いてウヒャーってやりたかったんよ。



…しかしいつの間にかそんな時期は過ぎ去り、すっかりシーズンインしている2015年です。





今更過ぎ去った時間を悔いても仕方がありません。

アメリカには、「7回裏をプレイボールに戻すことはできない」という諺があるそうです。











嘘です。







なので、シーズンインしているならしているなりの、用意と準備を整えた上で、

早々に初バスをゲットしましょう、ということに方針を転換せざるを得ない僕だったのでした。




何しろもう4月も最後の週末です。

この週末を逃せば、今年の初バスは5月になってしまうどころか、

2015年は3月、4月に一度も釣行しなかったという、不名誉な出だしとなってしまうのです。



この週末は必ず釣りに行き、そして必ず釣り上げる。


そのためには…。









4月24日、金曜日。


今日は定時で帰る。

定時で帰って、急いでご飯食べて風呂入って、可能な限り速やかに睡眠に入る。

そして3時に起きて、もろもろ用意を整えた後、新川に向けて出発する。

僕はそう決めていました。







―朝イチ釣行。


バス釣りにおいて、朝一番の釣行といえば、普通は夜明け前後からを指しますでしょうか。

そんな時間に活動を始める生物など、ニワトリかお爺ちゃんくらいしかいないわけなのですが、

そんな生物の摂理に逆らってまで、なぜバサーは朝イチを重視するのか。




もちろん、朝マズメという、「バスの最も活性が上がる時間帯」を狙いたいということもあるでしょう。

しかし僕はそれだけでなく、朝イチ釣行の一番の目的として、

「その日そのポイントを初めて撃つのが自分である」ということを重要視しています。



ならば、そうしようではありませんか。

その日そのポイントを僕が初めて撃とうではないですか。



そのためには、くどいようですが定時に帰ることが必達条件である4月24日の金曜日だったのでした。














…しかしヤマ場は過ぎたとはいえ、相変わらず職場は熱を帯びています。

部長が難しい顔をして、執行役員に状況の説明をしています。

部下は大きなアクビをして、目を擦りながらディスプレイを注視しています。





…この状況、


まさか僕が、定時に帰ろうなどと企んでいると、誰も想像すらしていないでしょう。


どうしようか。






■案1「堂々と帰る案」


定時の放送が鳴った瞬間、おもむろにカバンを取り出し、「お先に失礼します!」との挨拶のもと、

意表を突かれた上司部下のツッコミが入る前に、堂々とエレベータに乗り込む案。





■案2「客先からの電話対応をしていると見せかける案」


定時の放送が鳴った瞬間、おもむろに携帯を取り出し、「お世話になっております!」などと声高に顧客からの電話であることを強調し、

「すみません、お声が遠いので移動します!」と電波が悪いフリをしながら廊下に向かい、そのままエレベータに乗り込む案。





■案3「社外に出かける案」


事前に架空の社外往訪予定をスケジュール登録しておき、定時の放送が鳴った瞬間、おもむろにカバンを取り出し、

「○○社へ行ってきます!」との宣言のもと、時計を気にしながらエレベータに乗り込む案。





…うーむ。

どれも一長一短です。



最も漢らしいのは案1ですが、虚を突かれた数分の後、

「アイツまさか帰った?」などと職場が騒然となるのは必至です。




案2は一見、もっともナチュラルに感じますが、

数分の後、「アイツどこで油売ってんだ?」と携帯に着信の山となるのは必至です。




案3は周囲にはそれなりの正当性を持つように思えますが、

しかしこれは明らかに虚偽の申告であり、業後とは言え良心の呵責との戦いが問題で、

そもそも誰も同行者がいないことに気がついた上司が客先に確認の連絡を入れることは必至です。







…。









案1だろうなぁ…。



釣りも仕事も、ここ一番ではやはり正道に立ち返るべきでしょう。


これも初バスのためだ、スマン皆…。














「キーンコーン…」








きた!


おもむろにカバンを…、






「ピリリリリリリ!」





!?



電話?誰から!?




―もしもし、ビジ夫でございますが…、

―え、あ、はい!お世話になっております!



―はい、はい、え、帳票が?出ない?

―画面が真っ白になる?





―それは…、すいません、こちらからでは確認ができないので、お伺いしないと…、


―え、急ぎ?ですか?

―はい、今日中??





…。



―部長、また障害みたいです…。



部長「すぐ行ってこい!」


―はい…。







―僕は案1を選んだつもりが、何故か案2と案3になっていた。


自分でも何が何やらよくわかりませんが、客先へ飛んでいってヒーコラ対応しながら、

結局はいつもと変わらない時間に退社となった僕だったのでした。
















4月25日 3:30AM










…起きれた。





褒めたい。


褒めつくしたい。自分を。




それもこれも全ては初バスのため。

ここまで身を削って、それでも釣れないなんて、そんなことがあって良いはずがない。

そんな非情な世の中であるはずがない。






今日は昼過ぎから嫁さんが車を使いたいと言っていた。

ということは、釣行はせいぜい正午まで。



しかし、今日はそこまで勝負を長引かせるつもりはない。

城橋へ行って、まず真っ先に一番自信のあるあそこを撃つ。


そして万が一、万万が一、反応が無かった場合は速やかに見切ってあの場所へ。



その2箇所を最初に自分が撃てれば、どちらか一方で9割がた釣れるはずだ!







確信をもって、用意を整えた僕はさっそうと車に乗り込んだのでした。












4:30AM







城橋に到着。


先行者は…、










…いない。



いないぞ!やった!この勝負もらった!





今日の初バスゲット釣行、その唯一の懸念が先行者の存在でしたが、

それも杞憂に終わった今、僕を阻む障害は何もありません。





はやる気持ちを抑えつつ、タックルを手に一番のピンスポットに入ります。


…あそこをこの角度から…、










ヒュッ!










…チャポ。




―着水位置もバッチリ!これは喰った!
















…。













……。
















……嘘でしょう。



この位置から撃って魚に気づかれているわけがない。

ということは、付いてないのか、ここに。





撃てば、まず何かしらの反応が返ってくるこのポイント。


そんなわけはないと、位置を変えつつキャストを繰り返してみます。















…。



















馬鹿な…!










…正直に言いましょう。


今日、僕はこのポイントで絶対に釣れると思っていた。

自分が最初の一人なら、絶対に釣れると思っていた。



釣れなかった時のことなんて、全く頭に無かった。





…しばし呆然とします。











…ハッ。


いや、もう一箇所あったじゃないか。

ここより期待値は落ちるけれども、もう一箇所、自信のあるポイントが!






我に返り、急いで移動します。






ポイントに入るための道中、

葦を踏み倒した獣道には、蜘蛛の巣が張っていることを確認します。





…やった。


神は自分を見捨てなかった。



ここか。

ここで釣れと、そう言っているわけか、新川神は。



慎重に草をかき分け、バスに気付かれないように、岸際から2mほど距離をとります。







…ヒュッ!








…ポチャン。












…決まった!これは出る!


フォールでゴン!と…、
























…。



















馬鹿な…!













白々と明ける太陽を背に、絶望に打ちひしがれている僕。




僕の5年間の集大成。

新川の5年間が凝縮された2箇所なのだ、ここは。



それがこれほどアッサリ否定されるのか。

5年も通ったこの僕を、未だ新川神は嘲笑っているというのか…。





新川…。


恐ろしい子…。










漫然とキャストを繰り返します。


いつの間にか、夜は完全に明けてライバルの姿もチラホラと見えるようになってきました。





…アカン。

こんなことやってても釣れるわけがない。



朝イチで釣れなかった。

これはもうしょうがない。


ここからどうすれば釣れるのか、それを考えないといけない。

仕事でクタクタになりながら早起きした今日、無駄にするわけにはいかん!





…水温を測ります。



…18度。

わかっていたことですが、シーズンインしている水温です。




天気は…、晴れ。

風は若干強めか。



水は…、






うえ、…汚ねっ!





なんだこりゃ、水超汚い!

最近の雨のせい?


水面も水中もゴミが大量に浮いてるし、普段ならエリアを移動するような状態じゃないか。









…そうか、最近来てなかったしなぁ。

こんな状態とは思わなかった。



それで、久しぶりに来て、いきなり釣ろうったってね。

そりゃあ、新川神からすれば、舐めるなよと言いたくもなるだろう。





謙虚になった僕は、ここからのプランを考えます。




…まず、岸を適当に撃っていけば釣れるような状況じゃないだろう。

巻きの方が可能性が、というかむしろ強気に巻いていっていいんじゃないか。



巻きと撃ちの割合で、9:1くらいでも全然問題ない気がする。





手持ちのタックルは3本。


どうせ最初のポイントで釣れるだろうから2本でいいかな、なんて家を出る時には思っていたものですが、

思い直して3本持ってきてよかった。




1本は撃ち。


いつもならオープンなキワも今日はゴチャッとしている可能性が高い。

ヘビダンよりは、テキサスだろう。




残り2本は、巻き。


一本はクランク。一本はスピナベ。



テキサスにクランクにスピナベ。

バス釣りの王道じゃないですか。





よっぽど、「ここは!!!」なんてポイントでもあればテキサスを使う。

それ以外はザザッと巻いて、今日はとにかく歩こう。



時間は5時半。

まだ正午まで6時間半もある。




決意を新たにして、下流に向けて歩き出しました。








6:00AM







駐車場付近のポイントは全て先行者に撃たれているという前提で、

大きく距離をとって次のポイントに入ります。



既にゴールデンタイムは過ぎているでしょうが、

今日、初めてここを撃つのは僕である可能性が高いという意味では、まだまだ望みはあるでしょう。



シャローエリア。

サーフェイスクランクを使います。




まずは表層から。

岸際と言わず沖と言わず、水深10cmほどを満遍なくチェックします。






…無反応。


ならば、とミドルレンジのクランクにチェンジします。

遠投し、底をコツコツと取りながらリアクションを狙います。







…無反応。





魚がいないのか、いるけど喰わないのか。


ダメ元でスピナベを投げ散らかし、このポイントを後にします。











6:30AM





岸に大きなエグレがあるポイント。

エグレの中にテキサスを落としてみます。








…。







いないか。


付くとしたらこういうポイントのような気がするんだけど…。








7:00AM








ゆらゆら橋を折り返し、反対側の岸に移動します。


いつだったかの大会で、「やまさん」が連チャンしてた岸際。




覗きこむと、ゴミは無さそう。

テキサスをヘビダンに変更して落としてみます。







…。








ダメか…。






巻いてもダメ、落としてもダメ。

後は何だ、何をすりゃいいんだ…。






途方に暮れます。



いったん気分が落ち込むと、そこから目に映る全ての物がネガティブに感じます。






ああ、入ろうと思ってたポイントに先行者がいた。

もうアカン。






ああ、カワウが水中の魚を狙ってる。

もうアカン。






ああ、黒猫と目があった。

もうアカン。






トボトボと、それでも移動を続けます。





7:30AM






折り返して宮内橋まで戻ってきました。


フェンスのある水門近く。



岸際をクランクで巻き、沖をスピナベでチェックします。





…しかし朝イチからやり続けてこの反応の無さは尋常じゃない。

今日だけが異常なのか、それともいつもこうなのか…?






もう、完全に釣れる気もせず、ただ機械的にキャストを繰り返します。






―なんだ、何が間違っていた。

今日、僕は出来る限り最善の努力をしたはずだ。

それがなんだ、この体たらくは。



…2時間前には建設的だったはずの僕のメンタルは、もうズタズタです。




全く確信の無いキャストを続けていると、目の端に人影が映りました。







…あれ、バサーだ。

スピニング一本、カバンも持たずにある意味強気な…、






…って、あれ?リョウくんじゃないか?


おーい、リョウくん!















―久しぶりだね、リョウくん。


リョウ「お久しぶりです」



―それ、作業着?


リョウ「就職したんで。仕事行く前に寄ったんです」




―…釣れた?


リョウ「いや、全然です」





―最近釣れてる?


リョウ「いや、毎日来てますけど、全然ですよ…」





―毎日?仕事行く前に毎日来てるってこと?


リョウ「仕事行く前と後に来てますよ。でも全然釣れません」

リョウ「最近の雨のせいだと思います。去年は今くらいの時期にすごく釣れたんで」







…。






リョウくんくらいの実力のバサーで、毎日来てて、それでも釣れないって。

そりゃ僕が久しぶりに朝イチ来たところで釣れないわけだよ…。





パリンと音を立てて、僕のメンタルは砕け散りました。






…アカン。

もう、今日は何をしてもダメだ。


4月に初バス、新川で獲りたかったけどなぁ…。









8:00AM





リョウくんと一緒に城橋まで折り返し、そこで撤収となりました。









…しかし、いまさら思い知りましたが、僕の豆腐並のメンタル。


途中で吹っ切ったつもりが、最初のポイントで釣れなかったショックがずっと尾を引いていたということでしょうか。





しかしそもそも自然を相手にしたバス釣りで、思う通りになる方が稀なはずです。

逆に自然相手なのだから、状況がどうだろうが何が起こっても不思議はない、

あらためて思い返してみるとそう考えられるのですが、やってる最中にはそれがわからない。





なにはともあれ、これで初バスが5月にずれ込むことは確定です。


ああ、4月に釣りたかったなぁ…。

トホホ。



まぁ、仕事も落ち着いてきましたし、後はとにかく釣りに行って、

少しでも早く釣り上げる感触を思い出すことを優先しましょう。








2015/4/25(土)

中風
気温:13度→22度
水温:18度
アタリ:0
バラシ:0
ゲット:0









…ところで、今年の印旛水系の大会ですが、既にWestさんのHPで告知されています。

今年の一回目は6月27日(土)です。


ルールは変更の予定はありません。

何か不明な点がありましたらお問い合わせください。




僕もこのままでは大会どころではありませんので、

まずは一本、新川で釣ることを目標にやっていきたいと思います。
嫁「ビッグベイトってナニ?」





……は?




嫁「ビッグベイトってどんなルアー?」





…なんだいきなり。藪から棒に。

どこでそんな単語を見かける機会があったんだ。



…いやいや、そんなことよりなにより、






――え、ビッグベイト知らないの!?




嫁「知らないよ。聞いたことない」







…んん!?



嫁さんと言えば僕にバス釣りなんてものを伝授した張本人なわけで、

女だてらに、スピナーベイトがどうの、バイブレーションがどうのと、

当時全く興味のなかった大学生の僕は、その話の大半をヘーホーフーンで聞き流していたわけなのですが…、





…その嫁さんがビッグベイトを知らない!?







…なんだろう、

この、ちょっと、口の端っこ、口角が上がってくる感じ。


人はこの感情を優越感と呼ぶのか?




…ニヤリとして、あらためて聞き直してみます。






――え、ビッグベイトって、そのままでしょ。馬鹿でかいルアー。

使ったことなかったの?本当に!?


えっ!?嘘でしょ?人に散々偉そうにウンチク語っておいて!

ビッグベイトやってないの?有り得ないでしょ?



…ビッグベイトの釣りもやらずにバサーを名乗るとはおこがましい。

弱き者よ、汝の名は女なr …ゲフゥ!!




お腹に一発良いのを食らってうずくまる僕を、腕組みして上から見上げる嫁さん。


嫁「アタシがやってた時、無かったもん。聞いたことないもん」





…え、そうなの?


嫁「たぶん最近出たルアーだよ、それ」





…そうなの!?

僕がバス釣りを始めたときにはあったはずだけどなぁ…。




咳き込みながら、スマホで試しに有名なビッグベイトを調べてみます。




…。








誕生から10年とか書いてある。







独身時代に嫁さんと一緒に釣りしたのは…、

そうか、一番最後でも、もう15年くらい前だ。




…知らなかった。

そんなに歴史が浅いルアーだったんだ…。


ほーう、これはひとつ勉強になったわい、などと思っていると、







嫁「で、そのビッグベイトはうちのどこにあるの?」









…。









ビッグベイト。


僕が初めてその存在を知ったのは、バス釣りを始めて色々な釣具屋さんを自分で巡るようになった時期くらいだったでしょうか。


当時の僕としては、「巻物の親分かな?」くらいの感想で、

その異形のフォルム、圧倒的な重量、

そして何よりその価格に気圧されて、

とてもじゃないですが、自分のような初心者が手を出して良いようなシロモノだとは思えなかったのです。



一度その世界に足を踏み入れてしまえば、二度とこの世界には戻ってこれないような、

うかつに餌をやろうとしたら、手首ごともっていかれてしまうような、

そんな危険なシロモノだと直感して、僕はそれをついに手に取ることはなかったのです。



ある程度、バスを思惑通りに釣れるようになってからもなお、その当時の心境は根深く心の奥底に眠り続けていたようで、

僕は無意識的に、このジャンルを敬遠していたのでした。






…自分にはきっと無用の長物に違いない。









ところが、ある日ふと、僕は似たような思い込みが、実は違っていたという経験を思い出したのです。

それは「トップウォーター」と呼ばれるジャンルのルアーでした。



トップウォーターのプラグなんていうものは、バスを釣ることが目的なのではなくて、

トップウォータープラグを使うこと自体が目的になっているものだと、僕は長らく信じていたわけなのですが、

しかし実際に、他のルアーよりもトップウォーターが有効な状況というものを、自ら体験していたのです。



シチュエーションとして多くはない。

決して多いとは言えないのだけど、実際にその状況は、ある。




だとすると、ビッグベイトも同じことじゃないのか。




…もちろん、いつでもどこでも釣れるようなお手軽ルアーでは、きっとない。

使えば筋肉がムキムキになって、宝クジにあたって、彼女ができるようなルアーではない。


だけどいつか使い続けていれば、やがてその瞬間というものを体験できる時がくるのではないのか。







食わず嫌いはやめて、一個くらい持っておいてみようか、と思ったのは、実は去年の話です。


















ジョイクロ



僕が、「ビッグベイト」と聞いて真っ先に思い浮かんだ、ジョインテッドクローです。


店頭で手にとったそれは、フローティングと、シンキングのモデルがあるらしい。






…むぅ。


そんな、ピーナッツじゃないんだから、とりあえず両方買っておくか、なんてわけにはいきませんよ。



何しろ一個4500円です。

新橋でも、最近は飲み放題コースで2980円なんてのもザラなのです。






まずはフローティングを眺めてみますが…。


フローティング、てことは浮くわけです。

ということは、表層、中層、ボトム…、

数あるレンジの中でも、表層だけしか攻められないわけです。





…だったらシンキングでしょう。

何しろ沈むわけですから。



沈みさえすれば、後はレンジをキープする巻き速度さえ体得できれば、理屈ではシンキングの方が選択肢が広がるはずです。




これくださいな、と、ぼくは15SSというモデルを購入したのでした。





自宅に帰り、これがビッグベイトだぞ!と嫁さんにひとしきり自慢して、

風呂場にジョインテッドクローを持っていきます。

バスタブには張りっぱなしの水がたゆたっている。



おもむろにジョインテッドクローを放り投げてみます。










…沈む。



当たり前です。

シンキングモデルなんですから。



しかしそれが結構な勢いで沈む。


もっと、こう、ゆったりとした、

ジワジワーっとした、そんな勢いを期待していた僕は驚愕します。



…これはスローシンキングと書いてある。

もう一度言うけど、このジョインテッドクローの裏面にはスローシンキングを示すSSの文字が書いてある。




ビッグベイトのスローシンキングとは、もっとこう、優雅な、それでいて雄大なオーラを醸し出しつつ、

「ノーチラス号、発進」「了解、ノーチラス号発進します!」とか、

そんな台詞が自然と口をついて出てくるような、そんな沈み方をスローと呼ぶのではないのか。




斜め45度でシューっと沈んでいって、バスタブの床にゴツンと頭をぶつけるような、

こんな速度をスローと呼んでいいのか。

こんな速度が許されてよいのか。




…調べてみると、どうやらジョインテッドクローには個体差が結構あるらしい。

このバスタブ床に頭をぶつけて逆立ちしているこれが、15SSの平均沈下速度と比べてどうなのか、そんなことは僕にはわからないけれど、

でも、期待していた速度と大きな乖離があることは間違いない。





…どうしよう。












はたと僕は気が付きました。




フローティングを沈めることはできるだろう。

オモリでもなんでも付ければ、沈降速度だってある程度は制御できるだろう。





でも、沈むものを浮かせることはできるのか?























…あれっ?



ひょっとしたら、僕は大変な過ちを犯してしまったのではなかろうか。






ざわ…







…いやいや、大丈夫。

日本の人口は1億2000万。

僕と同じような思いをして、見事解決した先達が世の中にはたくさんいるはず。


そんな人達の偉大な功績を学んで、僕も勝利の美酒に酔おうではないか。




いやな予感を振り払い、早速Google先生にお伺いを立てます。









…ホラきた。

早速引っかかったホラー!




なになに、上半身の隙間に?スポンジを詰める?

凄いね、賢いよ。

よく思いつくわ、こんなこと。



早速スポンジをギュウギュウに詰め込んで、再度風呂場にボチャン。







…。




んん?




ゆっくりになった。

ゆっくりになったスゲェ!





スゲェ!…けど、


やっぱり沈むのよね。

さっきのサイトだと、目一杯詰めれば浮くって書いてたけど…。




…まぁいい。

これならスローシンキングと呼んでも差し支えない。

ざっと、水深1mを5秒くらいだろうか?




いける。


これならいけるぞ、新川へ!!










2月15日。



玄関の扉を開けると、例によって外は爆風です。


もはや突っ込む気にもならずそのまま車に乗り込みます。





真冬の今日、持参するはタックル一本。

ぶら下げているそれは、ビッグベイト。



…なんでしょう、この全能感。

今日なら宝クジも当たるし、彼女もできる気がする。




やがて新川の岸に降り立つと、シャローがあるポイントを目指します。



シンキングのビッグベイト。

その唯一恐るべきは、根がかり。




しかしそのシャローはある程度の水深があり、

着水から間を置かずに巻き始めれば、根がかることはないはず。



ビッグベイトの扱いは、巻物というよりはワーミングに近いと言う。

見た目から想像できない、実は喰わせのルアーなのだ、こいつは。




水際に立ちます。




今日、初めてのビッグベイトでバスを釣ろうなんて虫の良いことは思っていない。

使い方をその身に叩きこむのだ、今日は。


本番は、やがて訪れる春。



その日のための踏み台とせよ。






オリャアアアアアアアア!!!!!


いっけええ!ノーチラス号!!!!!






…バヒュウウウウウウン!!!!!









ゴゥッッッッッッ!!!!!







ぬお、突然の強風が!!

いかん、そっちはアカン!!




風に煽られたジョインテッドクローは目測の遥か左に着水します。


いかん、そこには…!!!






ガッ!



















…沈みモノがあるのよ…。








…えぃ!


…てぃ!





…。






ガッツリかかってる。

これアカンやつだ…。





シャレにならん。

一個4500円のジョインテッドクロー。


その第一投。



第一投でロストとか本当にシャレにならん。









…えぃ!


…てぃ!





…。







いやいやいやいや!

ウソウソ!

こんなマンガみたいなこと…、





あ、




あれ!持ってきてたはず…、















あった。











レスキューロボ


これは何でしょう。

…そうです!

これはナニです!







レスキューロボ





そうです、ルアー回収機!!


今まで散々助けられてきたルアー回収機。

その大一番がこんなタイミングでやってきました。






…角度的には大丈夫そう。



ラインにルアー回収機を走らせると…、





…ガツ!




よし、ルアーを捉えた!






オリャアアアアアアアア!!!!

還って来い!!




コンニャロ!

…しぶとい!


…むぅ。


セイヤアアアアアア!!!!



























根がかり













…還ってきた!!!

黄泉の国から、戦士たちが還ってきた!!




…あー、フロントフック折れてるわ。


危ない。

#1のトリプルフックが折れるほどの根がかり。

ルアー回収機じゃないと絶対に戻ってこなかった。




もう、とっくに値段分の元はとったルアー回収機だけど、

今日は一段と良い仕事をした。



ルアー回収機「レスキューロボ」。

射程が短いのが難点ですが、安いしかさばらないし、

何よりルアーに届いた場合の回収率は今のところ100%です。



一つカバンに入れておけば、元を取ることは全く難しくないでしょう。








…自宅に戻り、あらためてフックを確認します。





ダブルフック


うーむ。綺麗にダブルフックになっている。


せっかくフック交換するなら、羽根でも付けておきましょう。












フェザー




…ちなみに、本当はね、タイトルを「2月15日 印旛新川 釣行」ってしたかったんです。


でも、どう考えても、これ釣行じゃないなと。

これ、単にジョイクロをダブルフックチューンしに行っただけだなと。



そんなわけで、ビジ夫流、ビッグベイトについての徒然でした。


ビッグベイト、最初に買うなら、フローティング。



…字余り。
釣りに行く予定を立てていた2月8日は生憎の雨模様で、

僕は、ちぇっ、と思いながら久しぶりにタックルの整理でもするかと、

ガタガタとロッドとリールを引っ張り出してきて、自分の部屋に閉じこもり、

磨いたり拭いたりと休日を過ごしていたのでした。



ロッドのガイドを綿棒でほじくっていると、ふと、先日釣り友達から聞いた話を思い出しました。



―ダイコーが、釣り業界から撤退するらしい。





…ダイコーというメーカーを、実は僕はよく知りません。


―老舗らしい。

―古くから日本のバス釣りを支えてきたメーカーらしい。


―ロッドの製造技術には定評があって、有名ブランドのロッドをOEMしていたりしたらしい。




こんな程度の知識しかない僕ですら、その話には、えっ、と驚いたのだから、

昔からのファンであれば、さぞ衝撃を受けただろうし、それ以上に残念がっているのだろうな、と思う。



釣り業界の衰退がどうとか、販売戦略がどうだったとか、こうなるまでに色々な可能性があったはずだとか、

そういったことは、きっとたくさんの人が考察をしているのでしょうし、

今更僕が論じるような話ではないと思うから、他の人に任せておくとして、



…ただ、無念だったろうと思う。


他ならぬダイコー自身が、さぞ無念だったろうと思う。



この話を聞いて僕が真っ先に思い出したのは、

ジャンルが違って申し訳ないのですが、2008年のスバルWRC撤退報道でした。



WRCと言えば、日本ではスバルと三菱がその代名詞で、日本だけでなく世界中にファンがいただけに、

その報道はショックを伴って世界を駆け巡りました。


しかし話題となったのはその報道の内容だけでなく、スバル社長の、会見の様子だったのです。

当時の社長、名前を失念しましたが、彼はこう言ったそうです。



「本当に辛い決断だった」




企業というものは、当然として利益を追求するためにあるものですから、

それが、社会に対しても、株主に対しても、義務であるわけなのですから、

利益にならないというものであれば、それを切り捨てるのはある意味で当然な選択なわけです。



しかし、社長は声を詰まらせながら、こう続けたそうです。





「…コーナーが、青一色で染まっているのを目にすると、…」




ここからは声にならずに、ただ嗚咽を漏らしたそうです。



経営のトップが、これほど感情を露わにするほど、スバルはWRCに愛情を注いでいたのだと、

ビジネスライクに判断をしたのではなく、きっとギリギリのギリギリまで続ける方策を模索して、

とうとう、万策尽きて、断腸の思いで、決断を下したのだと、

その短い会見が、そのことを雄弁に物語っていました。


日本人らしいな、と思う。

日本の会社らしい、と思う。



きっと、ダイコーも同質の無念さがあったのではないだろうか。

釣りというものに、たくさんの愛情と情熱を注いで今までやってきたのではないだろうか。


そう思うと、本当に残念だなと思う。

ダイコーのことはほとんど知らない、ニワカバサーの僕だけど、

一回くらい、バス釣り全盛時代を支えたダイコーのロッドというものを振ってみたかったな、と思う。



…そんなことをつらつら考えていると、引っ張り出してきたロッドはいつの間にか全部綺麗になっていて、

また少し、愛着が沸いた気がする。





…さて、今週末の天気は大丈夫かな?

最近、嫁さんが休日に車を使うことが多いから、早めに予約をしておかないと…。



ロッドを丁寧にしまって、嫁さんと交渉を行ってくるべく、

リビングに降りていった僕だったのでした。