―無いですよ。
「えーっ」
…前回の続きです
僕は機械のたぐいが大の苦手だと書きました。
長い付き合いの嫁さんなどに言わせると、僕は機械音痴なのではなく単に食わず嫌いなだけだということらしいのですが、
食わず嫌いだろうがなんだろうが、食べたくないものは食べたくないんだからしょうがないだろう、というのが僕の言い分になります。
「…じゃあ、今日は練習っすね」
―…いや、いいですよ。
やれる人がやればいいじゃないですか。
「そんなんじゃいつまで経っても使えるようになりませんよ!」
―大丈夫。常に誰かフットコン使える人と釣行しますから。今日みたいに。
「…。」
桧原湖に向かう道中。
公正なる協議の結果、以下の様な役割分担となることが決まったのです。
ワカバヤシさん:一号船エレキ担当。単独乗船。
かいてんさん:二号船エレキ担当。魚探担当。
ぼく:二号船同乗。
それぞれが持ち分を最大限発揮できる、ベストな担当割りと言ってよいでしょう。
かいてんさんが何やら言いたげですが、運転に集中している僕はその視線に気づくことはありません。
やがて千葉から福島までの長い長い道中を走破し終えた僕は、
かいてんさんとワカバヤシさんからの労いの声を背中に受けつつ、
「予約していたビジ夫ですが」と、早々にボート屋さんの受付の戸を叩いたのでした。
なにしろ、一仕事終えた気になっていますが、むしろこの瞬間からが今日の始まりなのです。
ボート2台にエレキ2台、そして魚探を一台…、
…あれ?
エレキ…、フットコンじゃない??
―すいません、エレキはフットコンではないのですか。
受付「フットコンは全部ボートに取り付けられてっから。手漕船はハンドコンしかないのよ」
―…なぬー!
しまった、予約した段階で確認しておけばよかった…。
…ハンドコンはフットコンと比べて非常に燃費(バッテリー消費)が激しいというのは有名な話ですが、
この広大な湖をまる一日やり通して、果たしてバッテリーはもつものなのでしょうか。
―すいません、予備にバッテリーをもう一個お借りできますか?
受付「いいよ、言ってくれりゃ」
―ありがとうございます。
かいてん「なんだ、ハンドコンならビジ夫さんだって操船できるんじゃないですか?」
―フットコンだろうがハンドコンだろうが、僕はとにかくそのコンが駄目なんですよ。
かいてん「はぁ…」
担当割りに変更の申請が上がりましたが、残念ながら承認は降りることはありません。
―さぁ、準備ができたらもう出船していいみたいですよ?
些細な事にこだわって時間を使っているよりも、早く釣りを始めた方が良い。
そう納得したのか、かいてんさんはボート後方に陣取り、さっそくハンドコンエレキのスイッチを入れたのでした。
…一年ぶりの桧原湖釣行、僕にとっての因縁を解消する一日が、いよいよスタートです。
水面を滑るように発進するボート…、
―…え、いやいや、そっちじゃないでしょう、かいてんさん。
あっちの岬に行こうって言ったじゃないですか。
かいてん「行きたい方向とハンドルを切る方向が、感覚的に逆なんですよ」
―あ、なるほど、舵が後ろにありますからね。なんとなく言わんとしてることはわかります。
でもあれを見て下さいよ?

―ワカバヤシさんは既に颯爽と乗りこなしてるじゃないですか。
あれこそプロの仕事というものですよ。
かいてん「完全に漁師の風格ですよあれは」
―今日一日、ワカバヤシさんを「本職」と呼ぶことにしよう。
かいてんさんと頷き合って、右に左に蛇行しながら、ボートは最初のポイントに到着しました。
―(水深は)何mですか?
魚探とにらめっこしているかいてんさんに聞いてみます。
「7~8mですね。あそこの岬からガクンと落ちてきてるみたいです」
―事前情報だと、そのくらいの深度に落ちてるってことでしたよね。ピッタリじゃないですか。やってみましょう。
既に秋モードに移行し、魚の視線はディープに向かっているということでしたが、
しかし、朝一番なら表層の反応を確かめてみるのも悪いことではない気がします。
まずはシャローからブレイクがあるであろう地点の直上までを、トップウォータープラグで流してみることにします。
僕はダブルスイッシャー。
ワカバヤシさんはポッパー。
かいてんさんもポッパーのようです。
沖に浮かぶ2艇のボート。
そこから周囲360度をやたらめったら投げてみます。
しかし、水面は何の反応も示してはくれません。
―…反応、ないですね…。
言おうとしたところ、不意に、
「ピピピッ!!!!」
!!!!
―なんだ!なんですか今の電子音は!
「魚探みたいですね。何か反応があったんでしょう」
―魚探って、どんなことがあったらピピッって鳴るもんなんですか。
「知りませんよ。たぶん、魚の群れとかじゃないですかね」
―ほーぉ、それじゃ、今のはワカサギか何かの群れが通ったってことですか。
「多分」
―…なるほどね。
常に魚探を睨んでいなくても、そうやって教えてくれるというなら非常に便利です。
水深がわかり、水温がわかり、魚の群れもわかる。
今回のように非常に大きなフィールドを初めて釣行するような場合、目で見えること以外にそれだけの情報を与えてくれるというのは素晴らしい。
―なるほど、魚探か、たしかにボートメインのバサーがこぞって取り付けている理由も分かる気がする。
ちなみに群れが通った水深は分かるんですか?
「モヤモヤっとした表示が5mくらいのラインに出てますけどね」
―それか。
それがワカサギか。
そのラインを正確に撃つには…、
―あの岬から今いるボートポジションまでが目測20mくらい。
岬の位置を水深0mとして、今いる位置が水深7~8mくらい。
てことは5,6m先あたりを撃てれば水深5mくらいってことかな?
…10gシンカーのヘビーキャロライナリグをそのあたりに投げてみます。
だんだんと沈んでいくラインが、やがてフッとテンションを失います。
―底が取れた。…けど、ここが水深5mなんだろうか。
ひとまず、ズリズリと引いてみます。
…反応、なし。
これでいいんだろうか。わからん。
一投一投を、ここまで地形をイメージして投げ続けなければいけないのか。
そもそも、ベイトのいる層が5mだからといって、5mの水底を撃つことは理にかなっているのだろうか。
バスがボトムに付いていればいいけれど、中層に浮きながらベイトを追っているとしたら底を取ることに意味は無い気がする。
だったら重めのスピナベあたりを沈めてゆっくり巻いていたほうがいいような…。
…まだ始まったばかりだというのに、早くも僕は途方に暮れかけています。
ぐだぐだと余計なことは考えず、「まずこれをやる」と決めたことをひたすらやってみればいいものを、
「因縁の桧原湖」
「苦手な秋」
「一度も釣り上げたことのないスモールマウスバス」
そういったネガティブな要因を思い浮かべては、自分自身の思考を暗くしていきます。
…半信半疑のキャストを続けながら、ふと空を見上げると、自分の心情を表したような真っ黒な雲が頭上を覆っています。
―あ、やばい、これ降る。
思った時には既にポツポツとした感触が皮膚を伝っています。
レインウェアのフードをすっぽりとかぶり、グローブをはめたところで、ザーッと水面を叩く音が船上に響き渡りました。
「ちと、寒いっすね」
かいてんさんが話しかけてきました。
―ですね、雨もそうですけど、風けっこう強いですね。
僕はあまり気にしていませんでしたが、操船を担当しているかいてんさんは、先ほどからポジション取りに苦労しているようです。
「風を避けられる場所、行ってみません?」
―そうですね、岬の裏に行ってみますか。
…岬の裏側、ワンドになっているポイントへ移動します。
すると、
…ピピッ!ピピピッ!!!!
―おお、なんか魚探がピッピいってますよ、かいてんさん!
「ベイトも溜まってるみたいですね」
…単なる避難のつもりが良い方向に出たのかもしれない。
―ちなみに、水深はどのくらいですか?
「10m以上ありますね」
―10m!?ほんとですか?
岸が目と鼻の先にありますけど、そんなに深いですか?
「岸がほとんど垂直に落ち込んでるんでしょうね」
…なんと。
てっきり浅くなっているんだろうと思ったワンドは、実はさっきまで浮いていた沖よりも深かった。
パッと見た感じ、せいぜい水深3mくらいだろうと思っていたのに…。
…こりゃあ、魚探がなければここまで深いとは気が付かなかったはず。
心のなかの魚探をかけて、心のなかの水深3mに従って、3mに合ったルアーを投げていたはずです。
無いよりはあったほうがいい、くらいの思いでレンタルした魚探でしたが、
借りていなかったら一日勘違いしたままだったかもしれません。
そう、素直に感じた僕だったので、
―魚探、結構便利ですね…。
と、ひとりごとのようにつぶやくと、
「ですね、大場所では必須ですね…」
かいてんさんも似たような感想を抱いた様子。
魚探というツール自体、バス釣りにおいて賛否両論あることは知っていますが、
しかし少なくとも、こういった年に一回やそこらしか来れないような遠征で、
後悔なく釣りをするためには、便利なツールであることは間違いないようです。
むしろある程度フィールドに通いこんでしまえば、逆にそれほど必要ではなくなるものなのかもしれません。
正直なところ、僕は魚探というものをヘビーユーザー御用達の、
ヘビーなユーザーが更なるヘビー化を目指すための、完全なる上級アイテムだと思っていた向きがあります。
それは非常にマニアックで、細かなチューニングやメンテナンスによって性能がピンからキリまで変化してしまうような、
スーパーウルトラカスタマイズマシンであるかのように思っていた節があります。
僕のようなニワカが手を出すべきではない、うっかり手を伸ばしてしまえば肘から先をガッツリいかれてしまうような、
デンジャラスストロングモンスターであると思い込んで最初から白旗を挙げていたと思っていただいて差し支えありません。
嫁さんが、僕を単なる食わず嫌いと評した所以はこのあたりにありそうですが、
いずれにしても魚探というものはどうやらそんな性質のものではないらしい。
むしろ、僕のフィッシングライフを快適にサポートするお気楽極楽便利ツールというべきものらしい。
ワークライフバランスを整えるための定時退社推進システムといって過言ではないらしい。
何を言っているのかよくわからなくなってきましたが、
とにかく、その性能の一端に触れた僕の、魚探に対するイメージはこの日、一新されたわけなのでした。
…そんなことを考えているうちに、雨も風も少し収まってきたようです。
移動するなら今のうち、ということで、ワンドからまた沖に出ることとしました。
…さて、ここまで全く反応無いですけど、どうしましょうかね。
「うーん、知り合いは、とにかく岬を撃っていけばいいよ的なことを言ってましたけどね…」
―岬か。
たしかに、初場所で何をやっていいかわからない時は岬を重視していくのがいいと聞いたことがあるけれど…。
これだけ規模の大きい場所だと、どのくらい地形が出っ張ってれば岬なんだろう。
「まだ時間あるし、あっちのギザギザの岸沿いをずっと流していってみますか」
―そうですね、そうしましょう。
…本職にも声をかけ、地形がギザギザになっている岸に移動することとしました。
さて、移動して最初の岬(と感じる地形のでっぱり)。
ある程度の水深までを視野に入れるなら、ボートポジションは極力岸から離さなければなりません。
岸から20mほど離れたところでエレキを切り、かいてんさんはフットボールジグを用意しているようです。
―僕はどうしようか…。
ひとまず、ヘビキャロで様子を見てみよう。
岸際にキャストして、シンカーが岸を転がり落ちるのに任せるようにリグを沈めていきます。
…しばらくそのように攻めていると、
かいてん「…あれっ」
かいてん「あっあっこれ喰ったんじゃないの!」
…えっ、と振り返ると、フッキングの体制に入っているかいてんさん。
すると既にギュンと竿がしなっている!
どうやら最初のヒットはかいてんさんのようです。
かいてん「結構引く!結構良いサイズ!」
―おー、いいなー、羨ましい!
などとワカバヤシさんと応援を送りつつ、そうだった、ランディングネットは同船の僕の仕事か。
―ネット、いいですよ、かいてんさん!
かいてん「いきますよ!」
うりゃー、と取り込まれたバスは38cm。
惜しくも40には届きませんでしたが、スモールでこのサイズはかなり良い魚のはずです。
かいてん「ヨッシャー!」
―おめでとうです。フットボールは何gだったんですか?
かいてん「7gですね」
7gか、なるほど。
7g、7g…。
う。
無い。
普通のジグなら7gあるけどフットボールは無い。
…しまった。
普段、フットボールなんてあんまり使わないからな…。
ハンツを持ってたはずだけど、どこかでロストしていたのか。
―仕方がない。10gでなんとかしてみよう。
リグをヘビキャロからフットボールに変えて、僕も同じように岬を攻めてみます。
…しかし、反応なし。
さっきの一本だけだったのか…?。
ワカバヤシ「…あ!きた!」
…え、ワカバヤシさんにもきた!?
慎重なランディングの末にワカバヤシさんに上がったサイズも、偶然同じ38cm。
…いたよ、いるじゃん。スモール。
どうやら、リグは同じように7gのフットボールらしい。
ワカバヤシ「…またきた!今度はもっとデカイ!?」
…ええっ、連発!?
…って、あれ、無事ランディングされてワカバヤシさんの手にぶら下がるバスの姿はどこか馴染みがあるような…。
ワカバヤシ「ラージや、これ…」
―ラージ!?桧原もラージいるんでしたっけ?
ワカバヤシ「スモールの付き場所とラージの付き場所は普通違うらしいんですけどね…」
―同じ場所にいましたね。しかし、桧原に来てラージの40アップとはなかなか貴重なんじゃないですかね…。
…複雑な表情をしているワカバヤシさんですが、どうやらこの岬はこの一帯でも有望なポイントらしい。
かいてんさんにも、ワカバヤシさんにも来たのだから、僕にも来てもおかしくないはず。
俄然やる気マンマン、精力的にフットボールを投げ続ける僕です。
ワカバヤシさんも2本釣り上げた場所をしつこく攻めている様子。
一本釣って余裕が出たのか、かいてんさんは違うことを試しているようです。
…15分後。
誰にも反応はありません。
―いい場所なんでしょうけどね、3人がかりじゃスレちゃうのかもしれないですね。
かいてん「場所だけ覚えといて、他まわってみますか」
―そうですね、似たような場所があるかもしれませんし。
本職、行きますよ!と声をかけて、ポイントを移動します。
…時間はいつの間にか昼を回りました。
コンビニで買ったオニギリを頬張りながら、途中途中を撃っていきますが反応はありません。
ワカバヤシ「…あ、バッテリー無くなってきた」
―え、もうですか。
やはり、ハンドコンはバッテリー消費が激しいのか。
さらに本職によるきめ細やかな位置取りによって、それに拍車がかかったということなのかもしれません。
―ボート屋に引き返して、バッテリーを替えてきた方がいいでしょうね。
あっちの方に進んでいってみますから、替えたら追いついてください。
本職「了解です」
一時的にワカバヤシさんと別行動をとり、岸際にそって広がるシャローエリアに注目してやっていくことにします。
所々に点々と存在する浮島のようなポイント。
かいてんさんがスピニングでちっちゃなワームを放り込むと、10cmにも満たないような豆バスがひっきりなしに釣れてきます。
―シャローにバスがいないというわけではないみたいですね。
ただ、やっぱり大きいのは沈んでるんでしょうか…。
「いやー、これはこれで楽しいわ。ワーム無くなっちゃうわこれ」
…く。
なんだかムカつく。
カッカくる理由は、どうやらそれだけではないようです。
気がつけば空はいつの間にか晴天になっていて、気温は開始時点から比べると10度以上上昇しているでしょう。
大げさな防寒と雨対策を施した格好には辛い時間帯となってきました。
…脱いじゃおうかな。
レインウェアだけでも…。
「急にやたら暑くなってきましたよね」
―そうですね、やっぱり山は気候がガラッと変わるみたいですね。
「とは言っても風は相変わらずですけどね」
―風裏行きますか?あっちが裏になってるみたいですけど。
「そうしましょう。ボートも固定できないんで…」
風裏に移動します。
―さぁ、これで快適に釣りが…、
…あれ?
「今度はここが表になってますよ。さっきまで裏だったのに…」
―ぐ、じゃ反対側に周りますか、バッテリーもったいなかったですね…。
また風裏に移動します。
―さぁ、こんどこそ快適に…、
「…また表になってますよ…」
…。
山々に囲まれた桧原湖。
吹き抜ける風は、ちょっとした拍子にその角度を変えて、湖上に浮かぶ僕達を悩ませます。
しかしそれならそうと、行く先々が常に裏になってくれればよいものを、ことごとく表に出るとは何事か。
この霊峰を敬いこそすれ、そんな意地悪をされるほど恨まれるようなことをした覚えはない。
…しかし暑い。気温もどんどん上がってきている気がする。
我慢できん。
―いいや、僕ちょっとレイン脱いじゃいますわ。
「え、でもポツポツしてましたけどね…。もう降らないのかな?」
―大丈夫でしょう、これだけ晴れてればしばらくは。
いよいしょっと、
…フゥ、やれやれ、これでだいぶやりやすくなりましたよ。
「俺も脱ごうかな…、あれ、何か聞こえませんか?何の音だろう」
……・・・ドド…
―あれ、確かに聞こえますね。何の音だろう。
…・・・ドドドドドドドド…
「ビジ夫さん、あっち…」
―え?
山の方角。
煙のカーテンのようなものが近づいてきています。
―あれはもしかして…、
いやもしかしなくても…、
「スコールですね」
ザァァァァァァァァァァァァァアァァァ!!!!!!
…。
磐梯山よ。
これは試練か。
恐れ多くも桧原湖でバスを釣り上げようという、
僕に対する、これは試練なのか。
…心身ともに冷えきって悄然としているところにワカバヤシさんが合流します。
「あれから釣れました?」
―いや…。
ずぶ濡れになったレインを身にまといます。
…まずい。非常にまずい。
今のところ、ここまで僕はアタリすらない完全試合。
昨年の雪辱を晴らすどころじゃない。
これじゃ、返り討ちもいいところだ。
これまでやってきたのは、ヘビキャロ、ヘビダン、フットボール、気休め程度の巻物…。
一応全て、事前にやってみようと考えていたものばかりです。
横では相変わらず、かいてんさんがスピニングのダウンショットで豆バスを釣り続けています。
ちょっと話が逸れますが、別に今回に限らず、危機的な状況に置かれた僕は、しばしば奇妙な行動を取ることがあります。
普段なら絶対に採用しないような、奇妙な選択肢を選ぶケースが散見されます。
例えば唐突に、ネコリグを投げてみようか、なんて考えたりします。
ネコリグは非常に釣れるリグということで有名ですが、僕にとってのネコリグは釣ったこともなければ満足に使い方すら分からない未知のリグです。
それを、ベイトでなんとか投げてみようか、なんて考えたりします。
使い慣れていて、実績も充分にある、テキサスやヘビーダウンショットなどのような、
もはやそれ無しに自分の釣りを語れないような、そんなリグを押しのけてまで、
ネコリグを投げてみようか、なんて考えが頭の中を支配したりします。
ことに、「今日はなんとしてでも釣りたい、釣らなければならない」という状況においてそうなることが非常に多いのですが、
それならばなおのこと、自分がもっとも信頼を置く、実績のある方法に身を委ねるべきだと、普通に考えればそう思うわけですが、
なんとかして、ネコリグで7mのボトムを取れないか、なんて不埒な思いが脳裏をよぎったりします。
今、客観的にその状態の自分を思い返してみても、なぜそんな突拍子もないことを考えるのかと不思議でならないのですが、
今の僕は言わば通常時の僕であって、突拍子もないことを考えている僕は異常時の僕であるわけなのですから、
その不思議さは当の僕に全く何の意味も持たず、実際にその時の僕は真剣そのものだったりするわけです。
なぜ、ネコリグなのか。
そんなものを投げて果たしてどうしようというのか。
よしんば投げられたところで、この強風の中、太いラインのベイトタックルでは飛距離もたかが知れています。
満足に底も取れずに、足元をチョンチョンして終わりになることは火を見るより明らかだというのに、
なぜに今この時間も限られた状況でネコリグを選択しようというのか。
…時間は残り2時間を切っています。
…いや、もしもここでネコリグを選択したとして、それでやりきったとして、
釣れなかったらどうなる。
その時の後悔は、昨年の比ではないだろう。
だったら、釣れなくても、今のままのスタイルを貫き通したほうがいいんじゃないだろうか。
…ギリギリのところで、僕は我に返りました。
今日のプランとして用意していたリグの中で、僕が一番信頼を置けるのはヘビダンです。
なら、残り2時間、それでやりきったらいいじゃないか。
手応えの全く無い状況に変わりはありませんが、少しだけ、気が楽になったように思えます。
…そうだ、どうせならアレをためしてみるか。
アレとは、スタッガーワイドの4インチ。
前回の亀山釣行で、釣ることはできませんでしたが2回、デカバスをかけたワームです。
これの10gヘビーダウンショット。
ラージマウスでもアベレージサイズではなかなか食ってこない大きさではありますが、
もうここまで来たら関係ないでしょう。
喰うバスは喰う、それを信じてやってみましょう。
ネコリグから一転、反対方向に振りきれた僕はXHのロッドにヘビーダウンショットをリグります。
ここまでリグに重量があれば、底を取っている感触がしっかりと手元に伝わってきてストレスはありません。
かいてん「最初のエリア近辺に戻りますか」
―そうですね、なんとなく、あのあたりが一番良さそうな気がしますね。
気がつけばかなりの距離を移動してきていましたが、一気に戻ってラストチャンスに賭けることにします。
しかし、かいてんさん、ワカバヤシさんが釣り上げたポイントは人が入っているか。
なら、ベイトが多かったワンドをやってみましょう。
ひたすら、ヘビーダウンショットを岸際に投げ、ボトムの傾斜に沿って足元まで寄せてきます。
水深で言うと、0mから10mまでのラインを攻めているはずです。
ベイトを意識したバスがボトム沿いに付いていれば…。
それだけを信じて投げ続けます。
が、
既に帰着時間まで30分を切りました。
ボート屋までの移動を考えるとそろそろ切り上げなければなりませんが、
今日釣り上げているかいてんさん、ワカバヤシさんからそれを言い出すことはできないでしょう。
終了の宣言は、僕がしなければなりません。
―ボチボチ、終わりにしますか。
「いいんですか?」
―時間も時間ですしね、バッテリー交換してないこっちのボートはボート屋まで持つかどうかも際どいですし。
「そうですか…、しかし、厳しかったですね…」
―ですね、事前情報でも釣れてないとは見てましたけど、ここまでとは思ってませんでした。
しょうがない、また来年リベンジしますよ。
…次は、夏に。
「ですね、桧原の秋は難しすぎ」
―骨身にしみましたわ。
…こうして、2015年の桧原湖釣行は終わりを告げました。
去年からまる一年、この日を本当に心待ちにしていたわけですが、結果は見事に返り討ちということになりました。
まぁ、それでも、無理矢理前向きに考えるなら、これで来年もう一度ここにくる口実ができたわけです。
今日この日からまたその日を楽しみに、一年を過ごすことにしましょう。
また来るぞ!磐梯山!
…と思いながら、バッテリー切れ寸前のボートでヨロヨロと帰着した僕だったのでした。
…ついでに帰りしな、嫁さんにメールで「釣れなかった…」と報告したところ、
「ハァ!?冗談でしょ?」と返信がありました。
嫁さんらしいといえばらしいのですが、「残念だったね」くらいはあってもよかったんじゃないか、嫁さんよ!
…
ところで、Westさんのブログで第八回目の印旛水系大会について告知が掲載されました。
募集方法についても記載がありますので、参加をいただける方はどしどしご連絡をお願いします。
詳細についてはまだ決めていませんが、晩秋ということで開始時間や帰着時間は今までと変更する可能性があります。
常連の方については特に、今後のアナウンスにご注意ください。
それでは、最後の大会となりますが、今までと変わらず楽しく安全に実施できるよう執り進めたいと思いますので、
新規の方もぜひこの機を逃さず、ご参加をいただけると嬉しいです。



