ビジョナリーマネジメントの渥美です。
「ティール組織とは、何なのか?」
最近、歯科医院の院長先生だけでなく異業種の経営者や
コンサルタント仲間からよく話題に挙がるのが、ティール組織です。
『ティール組織』は、別名「進化型組織」とも言われており、
ネットで調べると色んな定義があります。
それらを総じて言えば
「社長や上長が直接マネジメントしなくても、
部下が自主的に任務を遂行する組織」
と解説されるケースが散見されます。
決して間違ってはいないと思うのですが、
しかしそれらはティール組織という概念が認識される前から
言われていた訳で、例えば『アメーバ経営』や
『オープンブックマネジメント』なども、
そのような目的のための経営手法だと言われてきました。
では、これらと『ティール組織』は、何が違うのか?
オープンブックマネジメントは、
情報(特に秘匿になりがちな会計情報)を開示し
スタッフと共有することで当事者意識や経営者視点を
促そうとする取り組み(管理手法)です。
アメーバ経営は、特に肥大化し当事者意識が希薄になった
大組織に、少数集団のユニットを導入することで当事者意識を
芽生えさせる取り組み、だったりします。
※もし私の理解が間違っていたらツッコミお願いしますm(_ _)m
一方、ティール組織とは?
私なりに定義すると、
『発達心理学の視点で、人間(自分)らしさを重視し、
自主経営を軸に運営される組織』
となります。
オープンブックマネジメントやアメーバ経営との違いは、
発達心理学の視点を軸においていることです。
※ちなみに、組織の発達を促す方法としてオープンブック
マネジメントの有効性(オレンジの発達段階)などは
ティール組織でも触れられています。
ということで今回は、今話題のティール組織について
私なりに紐解いて解説したいと思います。
ティール組織という概念は、マッキンゼーなどで
組織改革に携わったベルギー出身のコンサルタント、
フレデリック・ラルー氏が
世界の主要国において、
“社員同士が信頼し合い自主経営できている会社”を研究した末に
提唱した、発達心理学をベースにした組織モデルです。
レッド、アンバー、オレンジ、グリーン、そしてティールと、
組織の発達段階を色を用いて階層的に表現しているのが特徴で、
ラルー氏の著書「ティール組織」

こちらは日本だけでなく世界中でベストセラーに。
多様化・複雑化した世界における次世代のマネジメントとして
今注目されています。
ラルー氏がティール組織をまとめる上で多大な影響を受けたのが
トランスパーソナル心理学の権威、ケン・ウィルバー氏が提唱した
“インテグラル理論”です。
これは、人間の内面と外面、スピリチュアルと現実世界を融合した
人類の発達モデルで、彼の著書『インテグラル理論』を読むと

昨今の不安定な世界情勢すらも紐解けるほど、
非常に興味深い理論であることがわかります。
ラルー氏の著書『ティール組織』を手にとったものの
難しくて挫折した人も、ウィルバー氏の『インテグラル理論』は
理解できる内容ではないか、と個人的には思います。
また、これら両理論の位置づけとしては、
・人類の発達段階=インテグラル理論
・組織の発達段階=ティール組織論
といった感じでご理解いただくと良いのではないでしょうか。
さて、話をティール組織に戻すと、
ティール組織の大きな特徴は、前述した通り組織の発達段階を
階層化していることです。
では、組織の発達段階とは何なのか?
主な5つの段階は次のようになります。
【レッド(衝動型組織)】
これは組織における初期形態であり、
目先の利害に基づく分業から成立。
情動型で力や恐怖による支配が中心で
イメージはマフィアやギャングのボスなど。
【アンバー(順応型組織)】
レッド社会から、より中長期的に計画性
のある官僚制へと移行した段階。
規律や規範、年功序列的な階層構造で
ヒエラルキーを重視。
学閥や体育会系、軍隊や官僚(国家)などに
多く見られる組織形態。
【オレンジ(達成型組織)】
アンバー型の縦社会から、合理性を求め
科学技術の発展やイノベーション重視へ移行。
合理的で実力主義が特徴の組織形態で、
利潤追求を最優先する多国籍企業や
外資系企業、常に結果を求められる
プロスポーツの世界などが挙げられる。
【グリーン(多元型組織)】
合理性や効率を重視するオレンジから、
もっと人間らしさを追求する組織へ移行。
公平性、多様性、調和と文化を重視する
コミュニティーを重視する組織で、
ボトムアップの意思決定、自己開示と
相互信頼を重視するのが特徴。
【ティール(次世代型組織)】
グリーン型組織から更に進化した、
変化の激しい時代における生命体型組織。
管理者不在、セルフマネジメントによる
自主経営、全体性、存在目的を重視。
職場の位置づけは「仕事に行く」ではなく
「居心地の良い場所に帰る」イメージ。
さて、ここまで何となくでもご理解いただけましたでしょうか?
これらはインテグラル理論(人類の発達段階)がベースと
なっており、下位の発達段階からは上位の発達段階が理解できない
という特徴があります。
例えばレッド、つまり力でねじ伏せるのがリーダーであり
組織のまとめ方だと信じる人は、合理主義で理路整然とした部下を見ると
「頭でっかち」と否定したり、自分の地位が脅かされる驚異を感じたり
するかもしれません。
また、オレンジ(合理的実力主義)こそが大事と信じる人は、
グリーンのように関係者が双方向で話合いながら組織の意思決定を
導くアプローチは、非効率で無駄だと感じて理解できないでしょう。
ただ誤解のないようにお伝えすると、なにもアンバーやオレンジが
悪いという訳ではありません。究極的には、自分が信じる価値観で
理想の組織が実現できればそれがベストだと思います。
ただ、『人類の発達段階』という言葉通り、
例えば30年前の社会情勢と比べ、今の若者は確実にオレンジから
グリーンへ移行しているのは薄々お気づきになられていると思います。
事実、私の父親世代は会社のために貢献する意識が強かったですし、
私もサラリーマン時代はその名残りで育ちました。
それが今や、年功序列の終身雇用は「古臭い組織」とされ、
残業規制、産休育休の充実など労働者個人の権利や生き方が重視されています。
つまり、時代の変化に対応できる組織を作ろうと思ったら、
組織の発達段階を上げていかなければ採用も育成も上手く行かず
適応できない可能性が高いんです。
そして、それはまず経営者である我々自身の意識を発達させないことには、
到底実現できない…ということだと私は理解しています。
ということで今回は、ティール組織について概要をお伝えしました。
何か一つでも参考になることがあれば幸いです。