こんにちは、中小企業診断士の尾﨑です。
昨日から再開した当ブログでは、「人を大切にし、持続的な発展を追求していく経営」をテーマに、事業承継やM&A、そして統合プロセス(PMI)に関する情報をお届けしています。
さて、本日は「なぜ事業承継やM&Aにおいて、人を大切にする経営がそれほどまでに重要なのか」についてお話ししたいと思います。
M&Aや事業承継と聞くと、「会社の売却金額」「株価の算定」「節税対策」といった、お金や数字のハード面にばかり目が行きがちです。しかし、実はその成否を握る最大の鍵は、極めて人間的でソフトな部分にあります。
【1:買い手が本当に買いたいものは「未来の利益」と「それを生み出す人」】
企業価値を評価する際、決算書の数字はもちろん重要です。しかし、買い手企業が何千万円、何億円という投資をしてでも手に入れたいのは、過去の数字ではなく「未来の利益」です。
そして、その未来の利益を生み出す源泉は、他でもない「従業員」です。
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長年お客様と信頼関係を築いてきた営業担当者
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暗黙知の技術を持つ熟練の職人さん
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会社を裏から支え、業務を円滑に回しているバックオフィスの方々
彼らが活き活きと働き、定着している会社こそが「本当に価値のある会社」として高く評価されます。
「人を大切にする経営」を実践し、従業員エンゲージメントが高い企業は、M&A市場において非常に魅力的な(企業価値が高い)存在となるのです。
【2:M&Aの失敗要因の多くは「人の流出」にある】
私はM&A後の統合プロセスである「PMI(Post Merger Integration)」の支援も行っていますが、M&Aが失敗(期待した相乗効果が出ない)する最大の原因をご存知でしょうか?
それは、
「キーマンとなる従業員の離職」
と
「組織文化の衝突によるモチベーション低下」
です。
契約書にハンコを押した瞬間は、ゴールではなくスタートです。
経営者が変わった不安感、評価制度が変わるかもしれないという恐怖。
これらを払拭し、従業員の心に寄り添う丁寧なPMIプロセスを踏めなければ、どれだけ素晴らしい技術があっても会社は崩壊してしまいます。
「人を大切にする」という視点が欠落したM&Aは、決して成功しません。
【3:事業承継の準備は、最高の「組織づくり」】
親族に継がせるにせよ、従業員に継がせるにせよ、あるいは第三者にM&Aで引き継ぐにせよ、経営者が次世代へ向けて準備すべきことは同じです。
それは、
「社長個人の力量に頼らず、従業員が主体的に活躍できる組織をつくること」
です。
業務を標準化し、権限を委譲し、従業員がやりがいを持って働ける環境を整える。
事業承継の準備とは、そのまま「人を大切にし、持続的な発展を追求する経営」を具現化するプロセスそのものです。
【まとめ】
会社は誰のものか。
株主のものであるという法的な側面はもちろんありますが、私は「そこで働く人たちと、その家族のもの」でもあると考えています。
事業承継やM&Aは、社長の最後の仕事であり、会社と従業員の未来を守るためのポジティブな決断です。私は中小企業診断士として、経営者の皆様の想いと、従業員の皆様の生活を未来へつなぐための伴走者でありたいと願っています。
「自社をどう残していくか」「従業員にどう伝えていくか」。 正解のない悩みですが、決して一人で抱え込まず、ぜひ一緒に考えていきましょう!