Bisah's Blanket 【馬龍DEN】 -193ページ目

A'sW2-44 新ガタガタ記念後

新潟記念が終了し、は珍しく翌日の月曜日に【ANGEL's WINE】第2ピリオド暫定順位と累計ポイントを発表していた。


第2ピリオド第9戦目終了までの順位/累計ポイント>

第1位 ナナガイキ 210ポイント右上矢印

第2位 ロイス3 105ポイント右矢印

第3位 怪人UMA 95ポイントダウン

第4位 次郎太 40ポイント右矢印アップ

第5位 紫 20ポイントダウン

第6位 ナイスです姉茶 15ポイント右矢印

第7位 皇騎 -55ポイント右下矢印アップ

第8位 ユーカリ -70ポイントダウン



新潟記念によりポイントがプラスになったのは徹(ナナガイキ)のみであったが、マイナスになったのが4人もいたため、順位は激しく変動した。

順位発表後に、が嘆きのコメントを書き込み、怪人UMAは「!」マークで喚き散らした。

ユーカリ「・°・(ノД`)・°・(>_<)。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。(iДi)。(´д`lll) 」と顔文字のみで悲しみを表現した。


さて、「本物の間野ゆかり」ことに、そして「偽者の間野ゆかり」ことユーカリに、どのようにメッセージを伝えようか、悩んでいた。

しかしの職場は9月に入り、劇的に忙しくなった。決算前の売り出し内容を決める最終段階に入ったため、会議とデスクワーク、そして得意先への出張が間なく続く1週間であった。

の頭から「2人のゆかり問題」が離れることはなかったが、悩みを抱えつつ何のアクションも取れないまま、次の週末を迎えることとなった。

A'sW2-43 敵と田無で(4)

「ああーーー、駄目だ。ビービーガルダンの単勝しか当たってねぇや」

「札幌、審議中ですよ」

「どの馬が降着しても駄目。ビービーは大丈夫だよな。単勝だけじゃ、トリガミだ… 次! 小倉はパス! いよいよ対決だな」


ロイス3こと新城は、キーンランドCでは損を被ったようだ。次はいよいよ、実馬券&【ANGEL's WINE】直接対決の新潟記念である。今度はが、携帯のワンセグTVを起動し、フジテレビにチャンネルを合わせた。

「時間ないですよ。私はもうPAT投票すませたので、そっち、新潟賭けちゃってくださいよ」


が話している途中で、ロイス3はPATを起動しているようだった。操作をしながらロイス3に話しかけてきた。

「実馬券は、何買ったの?」

「マイネレーツェル本命で、馬連5点。あとゲームの本線・エアシェイディから馬連少々」

「ふーん。やっぱりステイの仔から、なんだね。それとも結婚だか婚約だかした、松岡に期待ですか? 新潟で成績残してるから」

「まぁ、両方の期待を込めて、ってことで」


ロイス3が顔を上げた。

「投票完了、っと。俺はダンスアジョイ、ダイシンプラン、アルコセニョーラ、デストラメンテの4頭ボックスで勝負だ。馬連と、3連複ね」

「結構、人気どころ行きますね。ダンスも穴人気してますし」

「札幌ハズシタから、冒険できませーん」



少し時間をおいて、のワンセグから新潟の重賞ファンファーレが流れてきた。

そして、新潟記念は発走した。



2分後、ロイス3は頭を抱えた。

「なんだよ、ちっともダメじゃん! ホッコーパドゥシャはまだしも、サンライズベガはノーマークだよ!」

「レーツェル、だいぶ後ろだ…」

「3着はメイショウレガーロ? うわ、眼中になかったわ。。。」

「あれ? エアシェイディ4着? 5着? 写真判定になってる…」


しばらくして、新潟記念の確定情報をフジテレビが放送した。

「シェイディ4着、アルコセニョーラ5着! ゲームの方は50ポイントいただきました!」

「げっ、マジ? 俺はシロッコ流しだからかすりもしないや。また随分ポイント差が開いたなぁ」

「実馬券対決は、引き分けですね。低レベルの……さびしい結果ですけど」


4時を過ぎて、ロイス3が携帯を操作している。馬券購入ではなさそうだ。

「ありゃ、偽者さん、ゲームで1着・2着・3着のボックス投票してる。こりゃ凄いマイナスポイントだ。ある意味、凄いなぁ」

「ユーカリのことですか? てことはワイドで馬券買ってたら大的中なんですよね。面白いことに。あ、本物である紫さんも、マイナスだ。枠連3-3ですからね」


少しして、ロイス3が競馬新聞をかばんにしまった。

「さて、出よっか。もっと競馬談義してもいいけど、もう4時間も一緒にいたから、いいよな」

「今日はもう疲れました…」

「もう1回、エクセルに行ってみたら? 本物の、マノユカリさんが現れるかもしれないよ」

「そうですね。望み薄いけど、様子見てから帰ります」

「じゃ、俺は出るわ。ゲームは100ポイント近く差がついたけど、追いつくから。じゃ、また!」


ロイス3が席を立ち、喫茶店を後にした。

程なくしてエクセル田無の入口に行ったが、ついに間野ゆかりの姿を見ることはなく、帰路についた。

A'sW2-42 敵と田無で(3)

「良かった。ココ、TVK見られるや。3時まではTVKで競馬中継見ようっと。3時以降の中継は…クソだけど」

ロイス3は携帯電話で、ワンセグTVを見ていた。TVKとはテレビ神奈川のことで、「中央競馬ワイド中継」を放送しているローカル局である。

「もう、関東でも『DREAM競馬』見られるようになりませんかね。『スーパー競馬』から衣替えして、今は耐えられないですよね」

「俺ん家、グリーンチャンネル入れてるから、家にいたらそっち見てるわ。でもワンセグじゃ見られないわな」


ロイス3は、競馬新聞とワンセグを見つめている。メイン以外のレースも買うのかとが思っているとき、ロイス3が話しかけてきた。

「ナナガイキさんって、この前の連絡見たら、本当は瀬田さんって言うんだよね。なんでヘンな名前にしたの?」

「私の名前は瀬田徹なんですけど、それをモジッたんです。説明すると長くなるので、やめておきますけど。馬と関係ないし。そちらの名前も聞いていいですか?」

「ん、俺? 俺は新城


素っ気ない受け答えにイラっとしただったが、怯まず会話を続けた。

「ロイス3って名前、あの『ロイスアンドロイス』から付けた名前ですか?」

「を?! ロイスアンドロイス知ってるの? いっつも2・3着が定位置だった馬。94年のオールカマー、秋天、JC全部3着。当時ワイドなかったから、えらく損したんだ。でも、憎めなくってね。

『ロイスアンドロイスアンドロイス』って名前にしようと思ったけど、長いからロイス3にしちゃった。

でも一番好きなのは、ライスシャワーかな。なんてったって… あ、新潟 発走だ。買ってないけど、見させて」


2分後、ロイス3こと新城は、視線を携帯からに戻した。呆れ笑いしている。

「良かった、買わなくて」

「私は、ステイゴールドのファンなんですよ。似たような境遇の馬ですよね」

「確かにね。俺も好きだった。だけどロイスとステイの違いは、やっぱラストランだよね。ステイは香港で勝っちゃうんだもん。しかも産駒からGⅠ馬出ちゃうし。ロイスはもうこの世にいないんだよね。ライスシャワーも…」

「私も一時期『黄金旅程』って名前で登録してたんですけど、同じ名前が多くて、変えたんです」


ロイス3が携帯を操作している。ワンセグTVをやめて、PATにログインしているようだった。携帯を見ながら話しだした。

「そういえばあのゲームの6位に、『ナイスです姉茶』っているよね。アレ、いい名前だよねぇ」

「ブロンズコレクターこと『ナイスネイチャ』に、村西とおるテイストを混ぜてますからね」

「ナナガイキさんって、30歳くらいじゃなかったっけ? 詳しいね。競馬もAVも」

「両方とも、リアルタイムでは見たことないですけどね」


ロイス3は携帯のボタンを押し始めた。PATに入力しているようだった。それでもは口を開いた。

「私、キーンランドカップは『見』しようと思うんです。PATの残金の関係もあって。新潟記念1本にさせてください」

「OK。実馬券対決も、新潟記念ってことね」

A'sW2-41 敵と田無で(2)

「おいちょっと、泣かないでくれよ…俺が泣かした見たいじゃないかよ。弱ったなぁ」

「スンマセン、スンマセン。ちょっとトイレに行ってきます…」


5分後、はトイレから戻ってきた。涙は止まっていたが、顔は紅潮し、目も充血していた。

「スンマセン。恥ずかしい姿、晒してしまいました」

「ねぇねぇ、これって、うれし泣き?」

「いやいや、嬉しさ半分、悔しさ半分ですよ。ゆかりは近くにいるのに、実物に会えないんですから」

「今日も会えそうにないかな…もう1時になるけど、ここに来る気配すら感じないからね」


ロイス3は2杯目のアイスティーをオーダーしに、カウンターに向かった。ロイス3のデジカメを手に取り、ほかの画像もチェックしていた。ロイス3はまもなく席に戻ったが、勝手にデジカメを操作するを咎めなかった。


「しかし、なんで今さら写真がみたいなんて言い出したんだい? 『ご褒美』は1ヶ月も前のことだし、紫さんも、自分がマノユカリであるって、とっくの前に白状したんでしょ?」

「実は……あのゲームに新参者いたでしょ。ユーカリって。

先日、彼女が私にメッセージを送ってきたんです。自分が間野ゆかりである、って。それで、気が動転したんです。頭の中がグチャグチャになったとき、ふと貴方の『ご褒美』のことを思い出したんです。もしかしたら写真があるんでは?って。それで、2度目の『一生のお願い』をしたわけです」

「あー、そういうこと。ふーん。

でも、アンタが好きなマノユカリさんって、それなりに競馬の知識あるんでしょ?ユーカリはありえないんでないかい?」

「なんでそう思うんですか?」

「今週の投票内容、見た?

⑤⑥⑦⑧のボックス。先週が①②③④のボックス。これはド素人と考えるのが普通でしょ」

「確かに先週の投票内容は、私も怪しいと思いました。でも、自信がなかったんです。紫だって、1枠と3枠の馬ばかり投票するし…理由は聞きましたけど…」

「ごめん、そろそろ検討始めない? キーンランドカップと、新潟記念…」


ロイス3の話を遮り、かばんの中から競馬新聞をとりだした。

「オタク、今回のゲームはエアシェイディから流したね。俺はトウショウシロッコから流した。勝負だね」

「今日は、実馬券でも勝負でしょ。負けませんからね」


はもう少し、ゆかりユーカリの話をしたかった。しかし考え直した。この男にこれ以上話しても、まず得はないだろう。この後、この喫茶店に奇跡的にゆかりが現れれば大収穫だが、望みは薄い。あとは対決を楽しむしかないかと思った。

A'sW2-40 敵と田無で(1)

「あんたがナナガイキさんだね? その顔はもう、エクセル田無に行ってきたね」

8月30日午前11時57分、西武新宿線田無駅・改札前。に話しかけてきたがいた。


「ということは貴方がロイス3さんですか… こっちの携帯アドレスは教えたのに、まぁいいか」

「エクセル田無どうだった?」

「とても待ち伏せできるような場所じゃないですね。受付の前に長時間いたら、警備員に注意されそうですよ」


「そりゃそうだ。 ああ、待って、怒らないで。俺の真意は、実はエクセル田無待ち伏せではないんだ。

この前の『ご褒美』のとき、俺と紫さんは、昼食をこのすぐ近くの喫茶店ですませんたんだ。まぁ可能性は低いけど…その喫茶店で、待つことにしない?」


ロイス3のペースでコトが進むことに納得がいかなかったが、ロイス3の後を追って歩いた。田無駅の駅舎に付随している喫茶点に入った。ちなみにエクセル田無は、ペデストリアンデッキで2階部分がつながっている、通りを1つまたいだショッピングセンターの6階にある。


「たぶんここで4時間近く過ごすから、それを考えてオーダーしてね」

眼鏡に口ひげを生やした男は言ったが、喫茶店では食べ物のバリエーションが少ない。はアイスコーヒーとサンドイッチを注文した。

は着席して、間もなく口を開いた。


「写真、見せてくださいよ」

「せっかちだねぇ。その前に、ナナガイキさんと、紫さんの関係教えてよ。あ、マノユカリさんか。それぐらい、聞く権利ない?」


は気が進まなかったが、ゆかりとのこれまでの経緯を話した。ロイス3は、ホットドッグを頬張りながら、の話を黙って聞いていた。


「んでまぁ、貴方から、紫さんの名前が間野ゆかりであることを確認したわけです」

「なるほどねぇ。紫さん、俺についてなんか言ってた?」

「感想は特に何も語ってなかったですよ」

は、嘘をついた。ロイス3を嫌悪していたが、それを正直に伝えて、今は何の得もない。


「で、写真見せてくださいよ」

「分かったよ。ちょっと待って、今、その時の映像を表示するから…夏休みの帰省の写真もあって探すの大変なのよ…あ、これでいいかな?」


は何も言わずに、ロイス3のデジカメを奪い取った。

憎たらしいことにツーショットであったが、そこには口ひげの男と、そして間野ゆかりがいた。

5か月前のゆかりからは、心なしか痩せていた。なんとなく、頬がこけている感じだった。

だが、間違えない。天使の微笑みがある。ゆかりだ。


そして、間違えない。ゆかりだ。

はなぜだか知らないが、涙が出てきた。慌てて目元を手で隠したが、涙は止まらなかった。