A'sW2-40 敵と田無で(1)
「あんたがナナガイキさんだね? その顔はもう、エクセル田無に行ってきたね」
8月30日午前11時57分、西武新宿線田無駅・改札前。徹に話しかけてきた男がいた。
「ということは貴方がロイス3さんですか… こっちの携帯アドレスは教えたのに、まぁいいか」
「エクセル田無どうだった?」
「とても待ち伏せできるような場所じゃないですね。受付の前に長時間いたら、警備員に注意されそうですよ」
「そりゃそうだ。 ああ、待って、怒らないで。俺の真意は、実はエクセル田無待ち伏せではないんだ。
この前の『ご褒美』のとき、俺と紫さんは、昼食をこのすぐ近くの喫茶店ですませんたんだ。まぁ可能性は低いけど…その喫茶店で、待つことにしない?」
ロイス3のペースでコトが進むことに納得がいかなかったが、徹はロイス3の後を追って歩いた。田無駅の駅舎に付随している喫茶点に入った。ちなみにエクセル田無は、ペデストリアンデッキで2階部分がつながっている、通りを1つまたいだショッピングセンターの6階にある。
「たぶんここで4時間近く過ごすから、それを考えてオーダーしてね」
眼鏡に口ひげを生やした男は言ったが、喫茶店では食べ物のバリエーションが少ない。徹はアイスコーヒーとサンドイッチを注文した。
徹は着席して、間もなく口を開いた。
「写真、見せてくださいよ」
「せっかちだねぇ。その前に、ナナガイキさんと、紫さんの関係教えてよ。あ、マノユカリさんか。それぐらい、聞く権利ない?」
徹は気が進まなかったが、ゆかりとのこれまでの経緯を話した。ロイス3は、ホットドッグを頬張りながら、徹の話を黙って聞いていた。
「んでまぁ、貴方から、紫さんの名前が間野ゆかりであることを確認したわけです」
「なるほどねぇ。紫さん、俺についてなんか言ってた?」
「感想は特に何も語ってなかったですよ」
徹は、嘘をついた。紫はロイス3を嫌悪していたが、それを正直に伝えて、今は何の得もない。
「で、写真見せてくださいよ」
「分かったよ。ちょっと待って、今、その時の映像を表示するから…夏休みの帰省の写真もあって探すの大変なのよ…あ、これでいいかな?」
徹は何も言わずに、ロイス3のデジカメを奪い取った。
憎たらしいことにツーショットであったが、そこには口ひげの男と、そして間野ゆかりがいた。
5か月前のゆかりからは、心なしか痩せていた。なんとなく、頬がこけている感じだった。
だが、間違えない。天使の微笑みがある。ゆかりだ。
そして、間違えない。紫=ゆかりだ。
徹はなぜだか知らないが、涙が出てきた。慌てて目元を手で隠したが、涙は止まらなかった。