奴らを通すな!ースペイン内戦と女性民兵 | virt_flyのブログ

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ゲルダ・タロー撮影:共和派女性民兵の訓練

↑前線で取材中に亡くなった最初の女性報道写真家ゲルダ・タローが撮影した「共和派民兵の訓練を受ける女性」

 

 

女性民兵が闘ったのは右翼だけではなかった

 

前回のこのブログでは、画像生成AIのBing Image Creatorを話題に取り上げ、スペイン内戦当時の女性民兵をモチーフとした画像の生成の例を示しました。

 

今では理由が思い出せないのですが、この夏「¡No pasarán!(ノーパサラン=奴らを通すな!)」をタイトルにスペイン内戦時に共和国政府を支持して自ら銃をとり反乱軍とたたかった女性たちの写真をレイアウトし、ポスターを作ろうとしていました。そこで、これを例にすることになったのは、ブログに書いた通りです。

 

以前、母が病院に入院した際に暇つぶしができるようにと買った原田マハの小説「暗幕のゲルニカ」を、偶然見つけたこともきっかけになったのかもしれません。恋人を9・11テロで失った主人公が、イラク戦争に強い違和感を感じる描写があって、当時は報復より平和をと言える雰囲気があったんだなと、今日力には力があたりまえと考える状況が支配的になりつつあることを思えば隔世の感がします。

 

 

●ラ・パッショナリア(情熱の花)の演説

 

来年90周年を迎えるスペイン内戦、スペイン市民戦争は、共和主義者、社会主義者、共産主義者による共和国人民戦線政府に対して陸軍の将軍グループが起こしたクーデターに端を発したもの。戦いは一進一退を続けましたが、反乱軍の指導権を握ったフランコ将軍がドイツ・イタリアの直接支援を受けて優勢となり、ソ連と国際旅団(義勇軍)の支援を受けた政府側を破り、独裁体制を成立させました。ファッショ対反ファッショのたたかいは第2次大戦の前哨戦といわれました。

 

何といっても、マドリード防衛に際してラ・パッショナリア(情熱の花)の別称で知られる共産党指導者のドロレス・イバルリが、ラジオでの演説で発した「ノーパサラン!(奴らを通すな!)」の言葉が有名です。

 

●排外主義と女性差別

 

私がスペイン内戦のことを知ったのは、国際旅団に参加した著名な作家の一人、ヘミングウェイが書いた「誰がために鐘は鳴る」に出会った高校時代のこと。今になって、日本で「奴らを通すな!」の言葉を聞こうとは。

 

今日、排外主義、自国第一主義を唱える勢力の伸長が世界的にも顕著で、わが国も例外ではありません。人手不足の今の日本になくてはならない外国人労働者へのいわれのない差別、中傷を許してはならないと上がった声が「奴らを通すな!」だったんですね。言葉が激しく、由来を知らないと少々理解しにくいスローガンに思います。

 

外国人労働者が働きに来てくれなくなったり、敵に追いやるような行為は、日本のためにならないし恥ずかしいことなのは確かです。医療保険を使って安く医療を受けているとか言いますが、大半の外国人労働者は先々医者にかかるまで日本で働くかどうかわからないのに、月々保険料を払って日本の医療保険を支えてくれているのが実際。また、安い賃金で働き日本人から仕事を奪っているなんて言うのもこの人手不足の時代に考えにくいばかりか、安い賃金で外国人労働者を雇っている経営者のいることが非難されるべきであり、日本人にも外国人にも低賃金を押し付けてきていることこそ問題のはず。排外主義には、敵を見誤らせて真の敵を隠す役割を果たしているにほかならないのではとの疑念を持ちます。

 

極右が唱えるのは排外主義だけでなく、女性差別、LGBTQ差別が含まれます。多くの人々が差別に反対し、危機感をつのらせています。

 

実は、スペイン内戦当時の女性民兵は、ファシストばかりか共和国側内での女性差別とも闘わなければなりませんでした。女性民兵は前線から後方に回されたり、売春婦とまで非難されました(注1)

 

男性よりも勇敢にたたかった彼女らの貢献はあまり知られていません。十分に報道されず、また無視されてきたのは、性差別、拷問や死から逃れるために自ら口をつぐんだこと、戦火などによる一次資料の乏しさがあります。


多くの女性が自ら銃をとり、共和国を守るために闘ったのは、共和国の未来に女性解放の実現を信じたからではなかったでしょうか? 「奴らを通すな!」のスローガンに込められた今日的な意味を思うと感慨深いものがあります。

 

●ゲルダ・タローと「崩れ落ちた兵士」

 

当時のスペインの共和派女性民兵には、ファッション雑誌からでてきたかのような装いで銃を携えて街を歩く姿を写真にとらえられたものをちょくちょく見かけます。しかし、ロイヤリティフリーでこうした古い写真を見つけるのは、ほぼ不可能。

 

冒頭に掲げた写真は、ゲルダ・タローが撮影した「共和派民兵の訓練を受ける女性」です。ゲルダ・タローは仕事用に作った名前で、本名はゲルタ・ポホリレ。ドイツ生まれのユダヤ系ポーランド人の女流写真家です。内戦中に亡くなっており、戦争の最前線で取材中に亡くなった最初の女性報道写真家だとか。写真は、このため著作権保護期間の70年を過ぎパブリックドメインとなっていますので掲載しました。

 

構図と言い、被写体の服装を含め、90年も前の古さを感じません。


ちなみに、ロバート・キャパを有名にした「崩れ落ちる兵士」の写真を、実際に撮ったのはゲルダ・タローだったと判明したことを最近まで知りませんでした。ロバート・キャパとは、彼女が助手となり仕事上のパートナーとなったハンガリー生まれの写真家アンドレ・フリードマンとともに、当初売れてるカメラマンを装うのに使用した偽名だそうです。

 

「崩れ落ちる兵士」の写真は、撮影者が違ったばかりか、撮影場所も違い、やらせとはいわないまでも演習中に足を滑らせた兵士を撮ったもので、兵士が銃弾に撃ち抜かれた劇的瞬間を撮ったものでないことがほぼ判明しています。詳しくはググってみてください。

 

なお、ロバート・キャパをアンドレが名乗るようになり、ゲルタは女優のグレタ・ガルボ、ならびにアンドレと親交のあった岡本太郎、後の大阪万博・太陽の塔の製作者にちなんでゲルダ・タローを仕事上の名前として名乗るようになったということです。

 

 

《参考》

スペイン内戦におけるミリシアナ

L DIA QUE SUPE QUE ERA FEMINISTA: Milicianas olvidadas de la guerra de España. Primera parte