7月初旬、待ち侘びた我が家に戻り
その2週間後
先ずは航空便が
私達と暮らす安住の地へ
到着を果たした。
我が家にとっての細やかな至宝を
船便と選別して梱包し
無事に着荷したことに安堵し
夫婦で事前に策定していた
所定地へ収めた。
翌月中旬には
いよいよ船便凡そ大小250箱、
その他大型家具、柱時計、
ティファニースタンドランプ、エラ-ルグランドピアノ等
長い船旅に耐えた末に我が家に到着する。
正に民族大移動だ。
私達と30年に及ぶ
駐在生活の紆余曲折、苦楽の
サバイバル人生を
共に乗り切り、
支えてくれた
同朋であり宝物であり、
我が家の駐在生活に
豊かな彩を添えてくれた
何にも代えがたいプライスレスな宝物だ。
駐在地での梱包に
既に力尽き果てたが、
日本到着後は
ここからが踏ん張りどころで
いよいよ本腰を据えなければならない。
精神的不安定など
言ってはいられない。
日本の夏の酷暑に
体調管理を万全に徹底することを
夫と共に心掛けた。
無慈悲に襲うフラッシュバックに
心が深略されそうになるが
気を張り乗り切らなければならない。
荷物到着日は
幸いにも曇り空、
それでも気温は33度の猛暑。
日本の夏は
とにかく暑い!
湿度が高く
心身共に疲弊してしまう
午前8時、
ほぼ定時に
引越し業者さんが
到着された。
初日は大型家具等の搬入から
駐在地では
300㎡が
日本の自宅では
200㎡となり、
プロの方達が1cmの配置決定に
苦慮されながら
限られた面積に幅2メートルの家具を
7,8人で息を合わせて
まるで魔法にかかったように
実に正確に
見事に配置されていった。
一日目の大型家具等の
搬入が無事に完了し
夫婦で安堵したが、
明日配送される段ボール250箱を
一体いずこへ収めるか試案に暮れた。
一日目の搬入作業が完了し、
激しい疲労困憊で動けない。
更に気を引き締めてもう一日
我が家の細やかな至宝達、、、
・愛してやまないロイヤルアルバート・ムーンライトブルーローズの
今は廃盤のポーセリン製のテレフォン、
スプーン・フォークセット、
プレート・ティーカップセット、
・シシィの手巻きオルゴール
・シシィのボヘミアングラスとシルバーの水差し、
・コレクションのジャーマンナッツクラッカー達、
・ドレスデンレースドール達、
・クリストフルの人魚の花瓶
・クリストフルのワイングラス&ブランデーグラス
・マイセンスノーボール幅40㎝の陶器
これは
1739年アウグスト3世が王妃に
「枯れない花を贈りたい」
という願いから作られた
小さな白いガマズミの花が表面を埋め尽くし
側面などに鳥のフィギュアを組み合わせた作品。
・BACCARAT,
・WEDYWOOD,
・ROYAL COPENHAGEN,
・HEREND,
・KAISER etc.
ルイ15世時代のロココ様式の二つの
マホガニーフレンチキャビネットに
隙間なく入りきれないほど
30年の間に巡り合えたあの子達を
全て無事に「終の棲家」となる
我が家に招き入れたい。
翌日早朝から段ボール箱の
搬入作業が開始された。
無言で滞りなく作業が進捗した。
午前中には全ての搬入が完了した。
酷暑の中、二日間にわたる
合理的でかつ大変な激務に
夫婦で深謝申し上げた。
最早家中が段ボール箱に埋もれ、
此れからの自分達だけの開封作業に
気が遠くなる思いだが
何よりも無事に到着してくれたことを
心から安堵し
万感胸に迫る思いになった。
明日からは、プレッシャーを掛けずに
丁寧に開封作業を進めていきたい。
その夜は、引っ越しが無事に完了したことを
夫と二人、
幸福感と充実感に満ちた
『無上の喜び』を
Bordeaux の赤ワインで乾杯した。
やり場のない、
辛いワインの日々の連続であったが、
私達夫婦にとって
30年の駐在生活からの
最も大きな節目を迎えている。
翌日から始まった開封作業では
全神経を使い、
一点一点決して破損の無いように
慎重に遂行した。
夫は2階の書斎で
今迄の業務関連、
膨大なプロジェクトの資料、
及び愛読書、その他の書籍等、
また子供の部屋では、
親の都合で
日本の教育機関で
学んだ経験がない為、
全て英書の
専攻した国際史・哲学、
ロシア革命、ナポレオンを始め
哲学、心理学、シェークスピア、ゲーテ、
科学、物理学、数学、
英語を第一母国語として、
第2外国語のフランス語書籍、
ドイツ語、イタリア語、ロシア語等
1週間に20冊は読む
今迄の膨大な書籍を
全て子供自身が
確認しなければわからない為
段ボール48箱を、
とりあえずクローゼットに収納した。
1階のフロアで私は
ヘンレ版の楽譜、
ピ-タ-ス版、外版他、
又子供達のレッスン用の楽譜、
これからは
二度と移動する必要がない
安堵感に浸りながら
楽譜用のキャビネットに
収めていった。
次は一点ずつ
「お帰りなさい」
と、一点一点確認しながら
指先に全神経を注ぎ
限られたスペースのキャビネットに
コレクションした小物達を
アレやコレやと試行錯誤して
心が高揚しながら
丁寧に位置決めをしていった。
夫とそれぞれに
黙々と集中して作業を進めた。
限界を超えた疲弊の日々であるが
それゆえに
喜びと幸福感に満ちた時間であった。
30年の駐在生活で
国から国へ
日本への移動はなく
新天地を夫と共に
苦楽を共に
駆け抜けた
サバイバル駐在人生だった。
親の都合で
子供はプレップから
ハイスクールまで
8回のインターナショナルスクールの
転校、編入を繰り返した。
健気に親と共に
生活環境の変化を経験して、
今振り返れば
常に幼い心で
親しいお友達との別れ
新しい国の
新しいスクールでの
環境、ティ-チャ-、お友達等の
慣れたかと思えば
次の国へ
何一つ不平をもらさず
堂々と
新天地の環境に溶け込んでくれた。
子供なりの
精神的圧力を乗り越えながら
しかし振り返れば、
インターナショナルスクールで、
各国の文化に触れて
多くのお友達とのお出会いは
駐在生活での
何よりの財産であるかもしれない。
めまぐるしい環境の変化で
二度の学年スキップ、
塾にも通わず
チュ-タ-もつけず
毎日テニスに没頭しながら
夕食後集中して
勉強していた。
子供からのリクエストは
ただ、
「今からスタディーするから
ビニールの音一つも
鳴らさないでね」
それだけだった。
IBハイヤ-43点取得、
ノ-イグザミネ-ション・ノ-インタビューで
英国5つの大学に合格して、
子供自身の実力だけで
首席で卒業した我が子を
少しだけ、
誇りに思う。
もし私が『女』としての
己を取るならば
泣いても良い
苦しみに潰されても良い
でも
私は『母親』である
未来のある
かけがえのない我が子を
これしきのことで
片親にしてしまうことを
私は躊躇した。
私なりに
微力ながら
夫を支え
子供を守り
新天地で
可能な範囲で
最高の家庭環境を築き
紆余曲折を夫と共に
必死に駆け抜けてきた
30年の駐在人生であった。
膨大な数の
民族大移動の開封作業も
集中力でこなし
残り15箱となった。
そして
本社人事部から
計算していただいた
夫の在籍35年の
有給休暇3ヶ月分も
そろそろ使い切ることとなった。
作業の合間に
容赦なく
私の心を
総攻撃して破壊し
残酷に制覇する
フラッシュバックとストレスに
現実から
まるで私独り
邪念の魂へ続く
地獄回路に
引き摺り落とされていくように
駐在地のレジデンスで経験した
孤立無援に陥った
全ての場面が脳裏に蘇り
私は苦しみ続けた。
夫は
私に寄り添い
私を守り、
抉られた心の傷を癒そうと
必死だった。
おそらく夫自身も
二人で駆け抜けてきた
サバイバル駐在人生の
私との30年の家庭を
崩壊したくないのだろう。
夫は
本当に優しかった。
優しさに
余計辛くなり
涙が頬を伝った。
「貴方が前田の為に
1年4ヶ月
過剰なほどの
尻拭いをし続けて
貴方は何か
得たものがありますか?」
「、、、、、、、、、」
「あの女は新しい赴任地で
1番影響力がある
貴方に
意図も簡単に
あたかも「仕事」で悩み、
真摯に向き合っているかの如く
色仕掛けで近づき
新しい赴任地での
立ち位置を
確保する為に
貴方を利用して
貴方からの
100%のサポートを
手に入れていったのよ
前田からの
『ご相談』依頼メ-ルは
貴方だけに送信して
貴方からの
「これからも全てサポートします」
との前田への返信は
全日本人スタッフに
CC(貼り付け)しているのよ
その女部下に
その女部下の
仕事を盾に
貴方へ近づき
前田が仕掛けた
全てに対応して
貴方はいつの間にか
家庭よりも
家庭の時間であっても
前田に対し
家庭の領域に
夜間に
入り込むことを
自由自在に許容し
妻の前で
前田に気怠く
名前を呼ばせ
境界線を引くことも
貴方自身も
見失ったのよ」
「、、、、、、、、、」
「家庭も
父親であることも
見失い、、、」
「、、、違う、、、
そんなつもりじゃなかった
他の部下のように
対応していただけなんだ」
だまらっしゃい!!
こんな男
40歳にもなる
「トリカブト」の
行けず後家の
社内の条件の良い
既婚上司ばかり狙う
淫乱女に
嵌った男など
黄金の「のし紙」付けて
恵んでやるわ
路上にでも
座り込めばよいのよ
「、、、、、、、、、」
上司として
業務の適切な範疇を超えた
極めて浅薄で
家庭人として
父親として
無思慮な
不面目躍如であり
親の力を借りず
ただ自分自身の努力だけで
純粋に頑張っている
子供に対し
顔向けできないではないか
一心に
手を取り合って
駆け抜けてきた
我が家の30年の海外駐在人生は
何だったのか
「貴方は35年間、
海外企業戦士として邁進し続け、
百戦錬磨のプロフェッショナルとしての
経験と実績を築きあげてきたわ
ご自身の歴史に
前田ごときのひよっこに対し
前田の業務の範囲を著しく逸脱した
境界線を越えた異常な「不正行為」に対し
過剰な尻ぬぐいなどをして
自ら泥を駆けるつもりですか!」
やるせ無い
虚無感と
寂寞たる思いが溢れた。
弁護士の方々の専門的観点によると
女性部下「前田」からの
1年4ヶ月もの間
日中の
メ-ル連投、チャット、
度重なる個人的「ご相談」
夜間、深夜まで及ぶ
1対1のリモート会話
既婚上司(夫)に対しての
連続した連絡行為は
・健全な職場関係とは判断不可能
・業務の適切な範囲を超えている
・上司に対しての『逆ハラスメント』
とみなされる
・執拗な連絡による業務の適正な範囲を超えた
『スト-カ-』行為とみなせる
・職務上の関係を利用して
個人的な接触を繰り返す行為は
平穏な婚姻生活を破壊したとみなし
「不貞行為」;
(肉体関係がなくとも上司に対し親密すぎる関係)
による慰謝料請求の対象となる。
前田百合子の行為は
断じて容認できるものではない
断固看過できない
成人社会人として
言語道断である
それを重々承知の上で
重ねて仕事を盾に
夫に近より、夫を操り
勝者の陶酔に浸り
夜間の1対1のリモート会話では
十分に腹式呼吸を整えて
エロ声で夫の名前を連呼し
我が家に抉り入り込み続けたのだ。
前田の履歴書の「特殊能力」欄には
”色眼鏡で既婚上司を見極めること”
と記載されていることであろう
支離滅裂であり
同世代からは全く相手にされず
目を付けた「利益」のある
既婚男性上司ばかりを狙い
「二兎を追う者は一兎をも得ず」
ならず、手あたり次第
三兎を追いかけても
「暖簾に腕押し」状態の
40歳の行けず後家を
最早『哀れ』にすら思う。
いつしか
アスファルトを刺すような
強い日差しに
呼吸もままならない
酷暑のお昼間から
フランスの印象派画家が
描くような
柔らかな夕焼け色に
空が広がり
1日の夏模様から
次の季節を知らせるように
可憐な鈴虫の調べが
私の心を優しくして
笑顔を思い出させてくれた。
夕餉時の少し前
夫と二人
庭に出て
日本の早秋を味わった
傷ついた私を労るように
夫は私の肩を引き寄せた。
『放下着』
物持たぬ袂は涼し夕涼み
すべての執着・ こだわり・思い込み
を捨て去れ
何も持っていないという
意識すらも手放すことで
ありのままの心で
・肩書き
・プライド
・過去への未練
・将来の不安
心を縛るものを手放し
今の瞬間に集中する
自由に行動できる
ありのままの境地
私に耐えられるだろうか?
私に乗り越えられるだろうか?
2024年9月
夫は本社人事部宛に
『退社』
の意を報告した。






