<朝は忙しい>
二日目は朝食が7時から、出発は8時である。
あまり余裕がないので、われらが添乗員が言うには
朝食で1階へ降りるときに荷物を持ってきて、
所定の場所に置いておいてもよい、とのことだった。
ただしバスには各自で運び込まねばならない。
<朝食の席取りカード>
7時前に食堂へやって来るとすでに
20人ほどがソファで待っている。
受付で食事券を渡すと、代わりに「食事中です」と書かれた
タブレットぐらいのカードを渡される。
席取用である。
まだすいていたので、中央より少し奥の4人掛けの
テーブルに席取りカードを置いて、料理を物色しに行く。
ところが、中年の女性二人がそのテーブルに荷物を置いて、席を抑えにかかった。
韓国人らしい。
入り口でカードをもらわなかったのだろうか。
外国人に話がよく伝わらない、ありがちなケースだろう。
韓国のオバさん二人にカードの意味と使い方を
説明するのは面倒なので
別のテーブルにカードを置く。
<もっと大きな皿が欲しい>
バイキングも朝だけなら我慢できると思うが、
レタスなどのサラダ用の皿が小さすぎだ。
ふだんはサニーレタス一株を
一週間ほどかけて、一人で全部食べている。
そのペースを維持するためには
もっと大きな皿が必要だ。
<忘れ物>
バイキングの朝食を30分で終え、予定通りバスは8時に出発した。
添乗員嬢に電話がかかってきて、
ホテルに忘れ物があった、とのことだ。
例の場所に荷物を置いただけで運び込むのを忘れたらしい。
いかにも誰かがやらかしそうな一件である。
<秘境と言われるタウシュベツ>
旅の目的であるタウシュベツ橋梁は
大型バスで乗り付けるわけにはいかない。
近くまで行ったらもう少し小さな車に乗り換えて、
最後は林道を100メートルばかり歩く。
<イケメン・ガイド登場>
乗り換える前にガイドさんを紹介される。
背が高く、少し髪を染めて、口ひげと顎の下に小さな髭、薄いサングラス、
となんともおしゃれな感じのたぶん40歳くらいの男性だった。
青山のカリスマ美容師だといわれても信じてしまいそうである。
近くの村の出身とのことだったが、
たいへん愛想のよい人物だった。
この人物から靴のサイズを聞かれて、
適当な長靴を選んでもらう。
<ヴァンの運転手は頭皮を染める>
乗り換える車は10人くらい乗れそうなヴァンだ。
7人ずつ5台に分乗する。
①号車に乗りこむと運転手が覗きに来た。
思わずその顔、ではなく、顔の上、
すなわち前頭部を見ずにいられなかった。
60代ぐらいに見える運転手氏、頭部は黒い。
ただし、前頭部に髪はなく、頭皮を黒く塗っているのだった。
鬘は嫌いなのか。
こういったハゲ対策は初めてだったので、
ついついまた目が引き寄せられてしまうのだった。
<ゲートがあります>
そのうち自称19歳の添乗員嬢も乗りこんで来て、
出発することになった。
しばらく車は自動車道路を走っていたが、
舗装されていない林道へ突っ込んでいった。
ゲートがあって、いったん停止してからゲートをあげてもらう。
許可が必要らしい。
<レンズが重い>
それからしばらく進んで、車を降りる。
耳にはイヤホン、首にはα7Ⅱのストラップを掛けている。
カメラ自体は軽いのだが、
24-260 ミリという有能で重いレンズを付けている。
はなはだバランスが悪い。
<ヒグマ>
去年はヒグマの目撃情報があったが、
ガイド氏は熊撃退スプレーを2本も持っているので大丈夫とのことだ。
Oさんから後で聞いたところでは、
スプレーは1本数万円もする高価なものだが、
スプレーだけに風下の場合
カプサイシンなどの成分を自分が浴びることもあるし、
かなり近くで噴射しないといけないとのことだ。
くわばら、くわばら。
<どろんこ道を歩く>
前日の雨で道はぬかるんでいる。
長靴が必要なわけである。
できるだけ土が硬い道の端を慎重に歩く。
林を抜けて、開けた場所に出ると湖が広がっている。
「橋がどこにあるか分かりますか」
というガイド氏の声で足下を見ると、
崖の上から向こう岸へと細くて白い道が通じている。
これが憧れのタウシュベツ川橋梁であったか。
<タウシュベツ川橋梁とは>
ガイド氏からタウシュベツ川橋梁について説明があった。
ウィキペディアで補強しながら、まとめると。
1939年、国鉄士幌線が十勝三俣駅まで開通したときに、
タウシュベツ川に橋が架けられた。
(『石狩乙女』発行の前年だ)
その後水力発電のため糠平(ぬかびら)ダムが建設されると
ダム湖(糠平湖)に水没することになるため、
1955年、士幌線は湖を迂回するルートに切り替えられ、
橋を通る旧ルートは廃線となった。
16年間しか橋は使われていなかった!
水面が鏡のように静かなとき、
橋のアーチが水面に映って眼鏡のように見えるため、
めがね橋とも呼ばれている。
橋は糠平湖の水位によって、水没したり姿を現したりする。
例年、1月に凍結した湖上に現れ、
5,6月頃まで見えるが、雨や雪解け水のため9月頃には水没する。
<写真>
ガイド氏は説明しながら、
橋の写真を何枚も見せてくれた。
みごとなものばかりだったので、
後で絵はがきでも買おうと思った。
橋がもっとよく見えるところまで移動すると記念写真大会である。
ガイド氏はたいそう愛想よく、
次々とスマホを受け取っては写真を撮っている。
そのうち、ニコニコ顔で一緒に写っているオバさんもいる。
haricot rougeは写真を撮る方に専念した。
レンズが重いのでカメラを持ってこようか迷ったが、
やはりカメラの方が撮りやすいし、撮っていても面白い。
ただ、あらためて自分が撮った写真を見ると、
暗すぎるし、色もさえない。
プログラムで撮ったはずだったが、どうしたのだろう。
あまり写真を撮らなくなってすっかり腕も落ちたようだ。
<それぞれの楽しみ方>
河原まで下りてみる。
派手なシャツが目立っていた男は
じっと水中のオタマジャクシを観察していた。
ただ一人キヤノンのEOS(イオス)に
三脚まで持ってきた老人がいたが、
雨が降らずよかったと喜んでいた。