「新宿書房往来記」村山恒夫著 | PARISから遠く離れていても…

PARISから遠く離れていても…

わが心の故郷であるパリを廻って触発される数々の思い。
文学、美術、映画などの芸術や、最近では哲学についてのエッセイなども。
時々はタイル絵付けの仕事の様子についても記していきます。

今回は、出版不況と言われる時代が続く中登場した

頼もしい救世主のような本を御紹介しよう。

出版界を志す人だけではなく

本を愛する人たちに必読の書である。

 

2021年12月刊 2800円(本体価格・税別)

 

著者の村山さんとは昨年春頃に御紹介した小説の

『聖人伝 プロティノスの彼方へ』立木鷹志著

こちらを通じた御縁でときどきやり取りをさせて頂いている。

昨年暮れに待望のエッセイを出版され拝読をし

簡単な感想らしきものを少し前にお伝えはしていた。

そんな折に贈呈して頂いたのが下記の図書新聞である。

 

さっそく手に取ればまず第一面に

大きく書かれた赤い文字が目に飛び込んできた。

「本は映画と似た総合芸術である」

 

うーん。やられましたね。

 

これは常々私も考えていることでもあり

我がブログの真の読者の方なら何となくお分かり頂けるはず。

 

 

ただこれにはもう一つの意味が含まれているところに注目したい。

村山氏の御一族、御兄弟について挙げると

お父様の村山英治さんが教育、文化映画会社の創設者であるのを筆頭に

叔父の村山新治さんは東映リアリズムの潮流を作った

「警視庁物語シリーズ」などで知られる著名な映画監督。

深作欣二、澤井信一郎監督の両巨匠も助監督を務めたという。

長兄の方もやはり数々の記録映画を手がけられた監督で

次兄の方も映画製作に関わられていたりと

男六人兄弟のうち四人がみんな<映画人>なのだ。

 

末っ子の村山さんは平凡社を皮切りに出版の世界に入られ

御自身で長いこと新宿書房の代表として仕事をされながら

それらご家族の動向などをそばで見続けて来られた。

 

当然のことだが出版、本を創るという仕事は

どんなに頑張っても決して一人では不可能であるということを

何よりも実感されているのは言うまでもないし

また映画というものも同様だと言えるだろう。

だからこそ「本は映画と似た総合芸術」という先の言葉が

特別に心に響く言葉に成り得るのかもしれない。

“本や映画などを心から愛する私にとっても”

 

この本のページの隅々にはそんな村山さんの思いが溢れている。

人々に対する深い眼差しと好奇心、その底にある本づくりへの愛が。

 

 

こちらは図書新聞二面に掲載の広告

 

 

―以下版元の「港の人の紹介文を掲載―

 

「本は周縁と路上から生まれる」と語る、新宿書房代表・村山恒夫は名編集者として声価が高く、辺境に生きる人々や辺境の地道な活動を見つめ、丁寧に活字にしてきた。海女の記録、「声なき声の会」の小林トミのこと、山尾三省の葬儀、如月小春の演劇、原爆の図丸木美術館学芸員との対話……。とりわけ山の作家・宇江敏勝への四十年にわたる伴走は、誇るべき稀有な出版事業と言えよう。村山が追及し続ける編集とは? 出版とは?自らが信じる出版の精神を実践して来た新宿書房の歩みは、岐路に立つ出版界への重要な提言となるに違いない。巻末に、作家黒川創による寄稿。付「新宿書房刊行書籍一覧1970-2020」

 

 

 

そこへきてまたのホットニュースが…。

以下は村山さん運営の新宿書房のオンラインマガジン

<百人社通信>より抜粋させて頂くことにする。

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◆「映画本大賞2021」

『キネマ旬報』495号が発売された。お目当ては「映画本大賞2021」の結果発表だ。実はデザイナーの桜井雄一郎さん(『村山新治、上野発五時三五分』のデザイン担当)から電話があったのだ。さっそく、近くの図書館に自転車に乗って行き、『キネマ旬報』最新号を見る。「映画本大賞2021」の第1位は『大島渚全映画秘蔵資料集成』樋口尚文編著、造本・装丁=桜井雄一郎、国書刊行会)。B5判、820頁、本体価格12000円の大著だ。桜井さん、おめでとう。
しかし、桜井さんが教えてくれたのは別なことであった。42人の選者のうち2人が、「映画本大賞2021」のベストテンの中に『新宿書房往来記』(港の人)を投票してくれたのだ。
吉田伊知郎(映画評論家):第6位
浦崎浩實(激評家):第9位(コメント:⑨著者は村山新治監督の甥。)
そして「映画本大賞2021」ランキングで第43位(全82位中)。
なんと『新宿書房往来記』を「映画の本」として選んでくれた。この嬉しいニュースをすぐに港の人の上野さんに知らせた。港の人のほんとうの映画の本、『私映画 小津安二郎の昭和』(黒田博著)も第40位に入っていることも伝える。
春だ、ここにも小さな花が咲いている。

 

 

クローバー    クローバー    クローバー

 

本日第94回アカデミー賞で濱口竜介監督による

『ドライブ・マイ・カー』が国際長編映画賞を受賞した。

何はともあれ日本における文学と映画という総合芸術が

世界に認められ一歩前進したことは事実である。

 

もし私の映画評をまだ読んでいられない方は

こちらのリンクからどうぞ。

 

 

 

 

 

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