昨年末から引き続き、いよいよ私独自の構成表で
芸術の分野でラストを占める
映画(洋画)のベスト10のご紹介です。
文学60%美術30%映画10%
まず最初に映画がなぜ10%なのかという理由についてお話します。
その理由の大きなものは最近新作を殆ど観ていないということと
好む映画に偏った傾向があるためです。
ハリウッドを代表するアメリカの超大作などは基本的に観ません。
後はアクション系やホラー映画といった娯楽映画。
アニメも自分の中では圏外と考えています。
そうするとどうしても本数や観るものは狭められてきます。
だから映画好きと語る資格はないと思っていますし、
それでも映画は興味の対象として欠かせない存在なのです。
以上の点も含めましてベスト10を挙げる前に一つだけ
私にとって映画とは何かということを少しだけお伝えします。
まずは映画は第一に映像で語るものだということ。
文学でいうところの描写を映像は一発で見せることができます。
次に大切なのは何といってもシナリオ。
これがいい加減だとせっかくの映像の語る意味も台無しになります。
脚本家は監督の意図するものを正確に表現しなければなりません。
ただの説明台詞にならないようにするために
ト書き(登場人物のしぐさや動きなど)は重要です。
昔、20代後半ぐらいに少しだけシナリオの勉強をしたことがあります。
(南青山の向田邦子が住むマンションすぐそばのシナリオ教室。懐かしき思い出)
その頃は洋画より自分に身近だったのは
ATG(日本アート・シアター・ギルド)といわれる会社の邦画でした。
サード( 東陽一)、ヒポクラテスたち(大森一樹)、ツィゴルネルワイゼン(鈴木清順)、
家族ゲーム(根岸吉太郎)、さらば箱舟、田園に死す(共に寺山修司)etc.
などが印象に残っていますね。
最近は村上春樹原作の映画が何かと話題になっていますが
「風の歌を聴け」/大森一樹監督作品はATGから1981年に公開されています。
またこのATGという会社は邦画はもとより
ゴタール、トリュフォー、ブニュエル、アラン・レネ、コクトー
などのヌーベルバーグを始めとする当時としては画期的な作品を
配給してきたすごい存在なのだと改めて感心させられました。
これから私が御紹介するベスト10にも幾つか入っています。
ではさっそくご紹介します。
(好きな洋画ベスト10)
※ 順不同。一人の映画監督作品で一作品を限定としました。
は私の一言コメント。ご参考になれば…
まずは先のATG公開の2作品より
ウイークエンド
(1967/仏・伊合作 ジャン=リュック・ゴダール監督) ※1969.10 日本封切き・
「気狂いピエロ」や「勝手にしやがれ」の名作がある中敢えてこの作品を挙げたのは
これぞ映画らしい映画と私に思わせてくれたから。
難しいことは考えずにミレーユ・ダルクになりきってドライブするだけでいい。
次々と待ち受けているのは現実なのかそれとも悪夢なのか。
シュールな作品の中に散りばめられた風刺のオンパレード。
五時から七時までのクレオ
(1962/仏・伊合作 アニエス・ヴァルダ監督) ※1969.5 日本封切
モノクロの映像は今でも古さを感じさせないどころかオシャレ。
約一年ほど前に記事に書いているので良ければコチラをクリック
雨のしのび逢い
(1960/仏・伊合作 ピーター・ブルック監督)
M・デュラスの小説「モデラートカンタービレ」の映画化で脚本も本人が担当。
とにかくシナリオが素晴らしい!!小説も悪くないのだが。
二枚め半の個性派と思っていたJ・ベルモンドの抑え気味の演技がよい。
だが何と言ってもジャンヌ・モローの演技が光りその魅力に釘付けになった。
(※この作品で彼女は第13カンヌ国際映画祭女優賞を受賞)。
淡々と流れるソナチネのピアノの旋律が心理的効果を盛り上げている。
ブーべの恋人
(1963/伊・仏合作 ルイジ・コメンチーニ監督)
タイトルを聞いだだけで、浮かんでくるのは
繰り返し流れてくる切ないメロディー。
「14年と聞いて不安になったけど、意外と平気だった」
意志的な瞳と唇を持つクラウディア・カルディナーレ扮するマーラにこそ
ふさわしいその言葉は何を意味するのか。
ブーべと呼ばれるジョージ・チャキリスの端正で陰のある美男ぶりもいい。
ラスト・タンゴ・イン・パリ
(1972伊・仏・米合作 ベルナルド・ベルトルッチ監督)
公開当時は芸術かワイセツかと物議を醸したこの作品だが
同様に日本でも裁判を引き起こした大島渚監督の「愛のコリーダ」(1976)に対して
同世代のベルトルッチ監督が共鳴を示したのは当然だろう。
そんな事情に関わらずこの映画は異邦人である私自身にとって
まさに“PARISそのもの”と言えるだろう。
全ての姿を包み隠さず私に見せてほしいー。
それでも私はあなたを愛するだろうから。
哀しみのトリスターナ
(1970/伊・仏・西合作 ルイス・ブニュエル監督)
シュールでエロティックにして神をも恐れぬ無神論者??と豪語する
ブニュエルの作品はどれも好きで甲乙つけがたい。
その中でもわかりやすく楽しめる作品だと思う。
カトリーヌ・ドヌーブのクールでエロティックな悪女的魅力が
「昼顔」よりもむしろこちらのほうにいっぱいに詰まっている気がする。
ア メ リ
(2001/仏映画 ジャン=ピエール・ジュネ監督)
最初はどうせ、少女趣味の観光案内映画だろうと高を括っていた。
遅ればせながら気まぐれついでに観たのが5、6年前。
なんとザンシンな、それどころか年甲斐もなく胸キュンでやられた。
何てバカだったのか。でもそれに気が付けて良かった。
それ以後は一時期アメリの映画音楽の中毒病患者にかかった。
さすがに今は進んでは聴かないけど偶然耳にしたら再発するかも。
緑の光線
(1986/仏映画 エリック・ロメール監督)
エリック・ロメール監督、貴方を知ったのは
この映画が確か岩波ホールで初公開された時でした。
私の中でずっと眠っていたフランス映画愛が目を覚まし
映画館へと足を運ぶことが一時は復活したように思えました。
一見ごく自然に見えつつ実は綿密に計算されそれでいながら
他のヌーベルバーグの監督たちのように取り澄ましたところがなく
肩の力を抜いて見れるところが貴方の映画の魅力だと私は思っています。
(※1986年、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作品)
橋の上の娘
(1999/仏映画 パトリス・ルコント監督)
上記のエリック・ロメール監督の次世代として
再び私を映画へ向かわせるきっかけとなった「髪結いの亭主」(1991年公開)。
誰の心にも潜む願望を描いてとても感情移入しやすかった記憶がある。
これが功を奏したのか翌年1992には少し前の「仕立て屋の恋」、
1994年には「イヴォンヌの香り」と続々と公開の運びとなった。
同じ「恋愛」を扱ってもロメールを瑞々しい果実の甘酸っぱい香りに例えるなら
ルコントは熟れ切った果実の官能的な香りに満ち溢れている。
だがこの作品は大人のメルヘンという形をとることで<純愛>の世界を描いた。
それでいてやはり官能の香りも漂ってくる。
モノクロだからこそ引き立つ登場人物たちの心模様。
グロリア
(1980/ アメリカ映画 ジョン・カサヴェテス監督)
ニキータやレオンの元祖とも言えるのがこの映画かもしれない。
酸いも甘いも噛み分けたように見えるイメージのグロリアという女性。
普段は人間的弱さや強さは隠し持ち滅多なことでは外には出さない。
そんな彼女がある事件に巻き込まれ一人勇猛果敢に立ち向かう。
とにかくそんな彼女の姿がめちゃくちゃカッコイイのだ。
そして涙もろくは決してないはずの私を
ラストシーンで不覚にも目頭を熱くさせた映画なのだ。
(※グロリア役のジーナ・ローランズはアカデミー主演女優賞)
いかがでしたでしょうか。
こうして見るとほとんどが恋愛映画ばかりですね。
それもフランスやイタリアのものばかり。
でもこれがTHISISMEなのですから仕方がない。
このシリーズを通して読んで下さった皆さまへ
ありがとうございました。
何かこの中で観たとか観たくなったものなどありましたら
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