⑤(追記あり)マレに残る中世の面影を訪ねて。シュプレヒコールが… | PARISから遠く離れていても…

PARISから遠く離れていても…

わが心の故郷であるパリを廻って触発される数々の思い。
文学、美術、映画などの芸術や、最近では哲学についてのエッセイなども。
時々はタイル絵付けの仕事の様子についても記していきます。

モンモラシー通り51番地の”二コラ・フラメル”の家を後にしリヴォリ通り方面へ向かった。

通りをこのまま進めばボーブール通り(rue beaubourg)に突き当たり

右へ折れてまっすぐ行けばメトロのランビュートー駅でポンピドーセンターも右手に姿を現す筈。

ボーブール通りに出て歩き出すと何やら後方からザワザワと騒がしい音が近づいてくる気配が。

ゆっくりと近づいてくるのは街宣カー。大音量のスピーカーが何やら繰り返し訴えている。

周りを取り囲み通りいっぱいに拡がり行進する人々も声を合わせての大合唱。

まさにこれぞシュプレヒコール!!

「デモだ!」

 

 

テレビのニュース画像では見たことはあるものの実際にこんな間近で遭遇するなんて

滅多にないチャンス!思わず立ち止まり眺めいる。

 

いったい何のデモだろう?

♪シュプレヒコールの波 通り過ぎてゆく
変わらない夢を流れに求めて♪

(中島 みゆき "世情" 歌詞より抜粋)

 

 

 

 

プラカードに書いてある文字から私に理解できるのは大統領の名のMACRONだけ。

フランス国鉄とエールフランス航空が春頃から大規模なストを決行中で、

マクロン大統領もさんざん叩かれ、かくいう私も少なからず巻き込まれた口だったので、

その方面に何かしら関係あるのかと思ったりもしたが…

 

 

 

 

やがて街宣カーがすぐ傍までやって来たのでシャッターチャンスとばかりにカメラに収める。

 

"FERMONS TOUS LES ABATTOIRS"

 

たぶんこの垂れ幕のフランス語が分かる方はこれが何のデモかすぐに理解できたことだろう。

いや勘の鋭い方ならフランス語が読めなくても牛の写真を見てなんとなくぴか閃いたかも。

残念ながら私はさっぱり訳がわからず、ただただ人々のシュプレヒコールに圧倒され続けていた。

 

 

 

 

とにかくこの瞬間に立ち会えたことに少なからず興奮していた。

それはこの被写体との距離の近さで感じ取って貰えるだろうかー。

 

まずはこのプラカードに書かれた言葉の意味を直訳してみると…

それは豚ではありません

牛のミルクではありません

それはマッチョ

彼は殺されます

(フランスではマッチョと言われたら、男尊女卑の人間を指すようで

この場合は差別主義者と訳してもよいのだろうか?

もしお分かりの方がいれば教えて頂きたい)

 

 

さらに先ほどの街宣カーの垂れ幕のスローガンの意味は

"FERMONS TOUS LES ABATTOIRS"

"屠 札 場 を 閉 鎖 し よ う"

 

何となくこのデモの趣旨がわかりかけてきたようなのでさらに調べてみれば…

 

 

これはフランス、リヨンに本部を置く動物福祉団体によって組織された運動で

今年2018年には15ヶ国、35都市でこの行進(デモ)が行われた。

私が遭遇した6/23のこのデモには4000人ほどの人が集まったという。

 

『動物(人間かどうか)は「誰か」であり、「何か」ではなく、

敏感な個人として尊重されなければならない』

 

う~ん。難しいテーマだなあ。

 

彼らは絶対菜食主義(ヴィーガニズム)で、動物製品の使用を行わない生活様式を実行し

肉や魚、乳製品などを食べないだけでなく、服や鞄などにいたる皮革製品も身に着けない。

要するにあらゆる形態の動物搾取を拒否した生き方をする人々なのである。

 

 

屠殺場がある限り、戦場はなくならない」 - トルストイの言葉より

 

 

この15ヶ国には日本も加わっているようで、6/9には東京で6/10には京都でもデモが行われた。

 

こちらは200人が集まったという東京でのデモの様子。

↓

 

※画像はお借りしました  ( 企画はAnimal Right Center/1987創設 )

 

 

個人的にはこの運動については、今回は報告するに留めておきたい。

どうみてもあまりに重過ぎる難しいテーマなので。

 

下差し(以下は追記分)

このデモがこの時期に行われた理由について推察してみた。

 

まずこのデモを組織するのはL214という非営利の動物福祉団体で2008年に設立されている。

この運動の流れについてわかりやすいように以下、箇条書きにしてみた。

●2016年  L214が屠殺場の動物虐待を明らかにし、フランスメディアと共にフランス全土で議論が行われてきた。

         

●2017年 フランス議会で全ての屠殺場に動物福祉のための監視カメラCCTVを導入することを命じる法案が可決される。(2018年までに導入することとされた)

       

●2017年.5/14 マクロン氏が大統領に就任。この際に『すべての屠殺場へCCTV導入』の法案は破棄された。

 マクロン大統領は公約としてCCTV導入の義務化を掲げていた。

 

ここで私が理解できなかった(2番目の)写真のプラカードの意味がやっとはっきりとしてきたようだ。

MACRON,PAS DE loi alimentation L,ABOLITION

      基本合意書

マクロン大統領、基本合意書にはないじゃないですかー。廃止せよ!(とでも訳すのだろうか )

 

●2018年5月、今年フランス議会で再度CCTV義務化が検討されたが、否決された。

しかし同議会において『任意の屠殺場へのCCTVの試験的な導入』は可決されるに至った…

 

このデモが6/23に行われたということはこの時点では『任意の屠殺場へのCCTVの試験的な導入』は、

まだ試みられていないということだろが、以上のような流れの中で行われたデモだった

ということをやはり取り上げた以上は付け加えておかなければと思う。

―追記分終わり―

 

 

ところでフランスではこういったデモは珍しいことでもない。

去る11月24日にも「フランス燃油税高騰デモ」がシャンゼリゼ通りにて行われ8000人が集まった。

現在も日産とルノーの件で何かと注目を浴びているマクロン大統領であるが、

低・中間所得層の購買力低下が怒りの元となり、フランス各地でもデモは10日以上も続いた。

マクロン大統領の支持率は26%まで落ち込んだという話だ。

 

 

クローバー

 

PARISは何度訪れてもその度に新しい発見がある。

街歩きをしていてこうした思ってもみない出来事に遭遇したり…いろいろ気付きを与えられる街だ。

 

中世から一挙に現代のど真ん中へタイムスリップしたわけだが、そろそろ元の旅に戻ろう。

デモの喧騒から逃れるように自分の居場所の確認をしようと周囲に目やれば、

いつのまにやらランビュートー駅入口のすぐ傍。ポンピドーセンターの建物の目と鼻の先だ。

予定には入っていなかったがふと広場を通り抜けて行ってみようという気になった。

デモの興奮と熱気に当てられた神経を少し落ち着けたかったのと

現代から中世へ戻る前にはワンクッションが必要な気もしたので。

 

 

ポンピドゥーセンターの前の広場

 

 

 

 

 

右側に少し見える建物がポンピドーセンター。

この池の角度から眺めるのは初めてかもしれない。

というよりこの広場自体をこうしてじっくりと眺めたことがあったろうか。

カラフルな人魚の像はニキ・ド・サンファルの作品のような気がするが…

彼女の作品についてはいつか語る機会があればと思う。

 

 

広場を一周した後で、再び次の目的地へと向かった…

 

 

 

続   く

 

 

 

よろしくお願いします

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