2017年も残すところあと10日余りとなった。
今年最後を飾る記事は肩の力を抜いたものにしたいと思う。
さて、アベスという地名を聞けばピンとくる方も多いはず。
映画「アメリ」の舞台で脚光を浴びた場所であるが、驚いた!改めて調べてみたら初公開が2001年ともう大分昔…。
最も自分が見たのはわりと最近3、4年前の話なので、そういう感じは受けないのだろう。
ところでアメリの話はまた次の機会に譲るとして、アベスといえば忘れてはならない場所がある。
私がぜひ一度訪れたかった場所…。
パリ好きな方ならご存知の方も多いと思われるが、まあお付き合い下さい。
メトロ12号線のアベス駅付近。モンマルトル散策の出発点の一つといえる
建築家ギマールによるパリのメトロでは数少ないアールヌーボー様式のファサード
駅のすぐ横にはこんな小さな広場があって…
この広場の名前はJehan Rictus square
ベンチ後方の壁(アパート)の一部にはこんな青いタイルが貼られていて
何やら白い文字のようなものがびっしりと書かれている
傍へ寄ってみれば…
ここにあるのは世界の250の言語で書かれた310余りの je t'aime(ジュテーム)
その中には私が聞いたことのあるイヌイットやエスペラントなどの稀な方言に当たる言葉も含まれているようだ。
フランス語はちょっとという方もこのジュテームという言葉はご存知のことと思うけど、「愛している」という意味。
このモニュメントはLe mur des je t'aime 「ジュテームの壁」と呼ばれ制作されたのは2000年。
製作者はアーティストのフレデリック・バロンとクレア・キト。
事の始まりはフレデリック・バロンが兄弟や知人に世界中の300以上の言語や方言を集めさせたこと。
それを書家のクレア・キトがエナメルプレート(釉薬付きの溶岸タイル)で作品として仕上げた。
ところで白い文字の所々に見える赤い色は何を意味しているのだろうか?
その前に私は全くの勘違いをしていたことをここで告白しなければと思う。
説明したように、これはモニュメントであり、2人のアーティストの手によるれっきとした作品である。
それを何を思ったか私はこれらの言葉が一般の世界各国の人々の手で勝手に書かれたものとどういうわけか思い込んでいたのである。
わかりやすくいうなら、此処は青い壁に掲示板のように自由に愛していると書き込んでもいいという場所で、これら全てはその落書きかよく言えば寄せ書きのようなものと思っていたというわけだ。
<さすが自由の国フランス、そしてアムールの国、粋なことをするなあ>とまでも。
その上、例の所々に見える赤い色についてもてっきりハートだと思い込んでいた。
「愛している」にはハートマークは付き物だということで。
日本でいうなら、ほら相合傘のマークのような意味と同じに。
しかし今回拡大してわかったのだが、これは全くハートの形をしていないではないか。
さて、私の早とちりはこの辺にして、ここでこの赤い形は何を意味しているのかという問題に戻ろう。
フランス語の公式サイトの訳によれば、実はこの赤い色は壊れた心臓の破片だという。
これらの一つ一つが集まり一つのちゃんとした一つの心臓になるということのようだ。
これはあくまでも私の解釈なのだが、つまりこの壁に描かれた言葉とそして心臓の破片をジクソーパズルのように集め合わせて一つになったときに、初めてこの壁全体が一つの作品として完成するということなのではないかと。
ハート=心臓と解釈できるのでこれは思い込みながらも遠からずと思ったが、100パーセントのとその欠片ではやはり全く意味が違うことは明らかなことだ。完敗。
最近トランプ大統領が発言したイスラエルのエルサレム「首都」問題で再びクローズアップされている「壁」の存在。
メキシコとの境界線に壁を造るとまで宣言した彼の発言も忘れはしないが、これらの場合も含め壁とは一般的に人々を分け隔て守る機能と役目を持っているものだと言えよう。
しかしこのジュテームの壁は全く逆で、和解の場、そして愛と平和のイメージを人々の心に投げかける鏡のような存在というコンセプトで創られた。
さすがフランス、だからフランスなのだ。私にとって!!
行ってみたいと思った人はぜひこれを
最後にもう一つ大きな勘違いをしていたことを告白する。
「ジュテームの壁」のことをどういうわけか「アムールの壁」と勘違いしていたこと。最初はちゃんと覚えていたはずなのだがいつからか…。
今回、「アムールの壁」と検索して「ジュテームの壁」と出てきたため、はっと思い間違いに気付いたというわけである。
ちなみにこの記事のタイトル、「…アムールがいっぱい!!」は決して間違いではない。
意図的に日本語で「愛している(ジュテーム)がいっぱい」というより「愛.(アムール)がいっぱい」というほうが何となくしっくりくるのではないかと感じたからに他ならないのだが…。
最後にジュテームの壁より愛を込めて
(2011.8 撮影)
皆様、来年もよろしくお願いします!
よろしくお願いします