フランス ロックダウン中…温和後のオペラ座の舞台に立つ | フランス, アルザスワイン365日記

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フランス、アルザス在住言語学博士
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1度目のロックダウン後、アルザスワイン関係の記事を書き溜めていたのだが、新型コロナウイルスの第二派が来てしまい、2回目のロックダウンとなってしまった。
 
少しずつ温和される予定だが、それでもまだこの状況が続くので、暫くはフランスの近況や、今の生活について書いて行こうかと思う。
 
さて、新型コロナウイルスの感染者が増加し、ロックダウンのフランスで、経済的にも多くの問題が出ている。
 
そんな中、私は逆にこんなご時世だったから得た仕事がある。
それがフランス、アルザスのラン国立オペラ劇場への出演という仕事だ。
 
 
 
 
 
演目はクリスマス時期の定番とも言える『ヘンゼルとグレーテル』
子供用のオペラでもあるのだが今回は子供用オペラと大人用オペラの2演目ある。
私はこの大人用の『ヘンゼルとグレーテル』のエキストラとして出演することになった。
 
なぜこういう事になったかというと、実はこの演目は子供がエキストラ、そしてコーラスとして出演する予定だった。しかし、このロックダウンの影響で、子供のオペラ出演ができなくなった。
 
既に衣装も出演予定だった子供用に作られてもいた。今からすべて作り直すわけにもいかない。
そこで、声がかかったのが背の小さいオトナだったのだ。
 
 
 
 
では、なぜ私に声が掛かったかというと、実は2年前、ラン国立オペラ劇場では日本のオペラ『金閣寺』が上演された。その際に『日本人、アジア人エキストラ募集』というのがあった。
 
私は、エキストラとしての出演ではなく、この演目の裏方で何かしらの仕事がないかと思い、オペラ劇場に連絡をしたところ、担当者はエキストラ探しが目的だったので
「とりあえずエキストラのキャステイング(オーデイション)に来てください。」
と言われてしまった。
 
そこで、私はとりあえずこのオーデイションに行くことにしたのだ。
オーデイション告知から1か月以上の余裕があった。
 
実は…私はそのオーデイション当日から別の仕事が決まっていた。
オーデイションに落ちれば、その仕事に行けば良いのだが、もしも受かったら、別の仕事に迷惑が掛かるので、早めのうちにもう一つの仕事もその時にキャンセルしてしまった。
 
そして、オーデイションに行き、もちろん、オペラの舞台出演なんて、落ちてしまった。オーデイション会場には、日本人(アジア人)男性は少なかったのだが、日本人(アジア人)女性は結構多くいた。そして、その中には音楽院で声楽を勉強している人たちもいた。
そんなところで素人の私が受かるわけがない・・・。
 
実は、私はこの事をずっと長い間後悔していた。私がしたかったことは裏方仕事だし、受かる可能性なんて低いのだから、1日だけ仕事をずらしてもらって、オーデイションにだけ行って、そして次の日から仕事に行けばよかったのだ。
 
でも、それくらいの覚悟でオーデイションに行かないと、いけないと思ってしまったからだ。
もう少しずるがしこいオトナになれれば良かった。
 
そして、その後色々探して、研修生という形で、『金閣寺』用にラン国立オペラ劇場の広報で2カ月働くことができた。
 
そして、その後、そのご縁で日本で上演されたオペラの演出家の通訳としての仕事を得ることもできた。
 
その後はオペラには縁遠い状況だった。
 
私はオペラ好きというわけではなかった。
けれど、私の昔の「仲間」がオペラの演出をしている影響もあって、多少オペラにも興味があった。
ただ、それだけだった。
 
 
そして・・・
 
 
 
オペラのこともすっかり忘れた頃に、ラン国立オペラ劇場から連絡があったのだ。
また、改めて、別のオペラのエキストラのキャステイングだった。
 
そして、まあ、受かるとは思わなかったけれど、でもまたキャステイングに行ってみるのも良い機会かと、行ってきた。
そして、今回は無事合格してしまった。他の応募者は、舞台経験者とか、映画、舞台、ダンスなど、芸術系の分野の子達ばかりだった。
 
今回はたまたま背のお陰で受かっただけだ。と思っている。
それでも、こうしてフランスのオペラ劇場の舞台に立てる日がくるとは思わなかった。
 
でも、これで、前回キャンセルしてしまった仕事への後悔も多少薄らいだ気がする。


 
本来オペラの稽古は新しい演目だと6週間~2カ月くらいかかる。けれど、このご時世なので、舞台稽古が始まる2週間ほど前からの稽古だ。
 
こんなご時世だけど、こんなご時世だったからこそできた経験もある。
 
確かに世の中色々大変だと思う。
こんな時期で仕事が無くなった人もいるだろうし、仕事ができない人も沢山いる。
 
私も普段の仕事の一部はキャンセルになったし、決まっている仕事も実はこの新型コロナウイルスのせいもあって、1年も先延ばしになっている。
 
それでも、元々マルチタスクというか、幾つかの仕事をしていたお陰、そして今まで継続してきたことからの繋がりでなんとか新しい仕事も得ながらここまで来ている。
 
一回目のロックダウンの時もそうだったのだが、1つの仕事が終了して、決まっていた仕事がこのご時世で幾つかキャンセルになったりもしたが、その後又新しい小さな仕事が決まり、そしてまたその後に新しい仕事を始め…。
 
オペラの仕事も2年前に送っていた履歴書が残っていたお陰で、今度は日本とは全く関係ないオペラに、背の低さのお陰で出演するチャンスを得た。
どこでどんなことが待っているか分からない、こんなご時世だけれど、でも、立ち止まっていても何も始まらないので、次にできることを探すことも大事だなと思う。
 
また状況が戻ったら…を待つだけではなく、いつまでこの状態が続くか分からないのであれば、何か新しい事を考えないといけないんだと思う。今だからできることもあるだろうし、今まで通りではないことをする必要がある時期なのかもしれない。
 
私は「面白そう」と思ったことはとりあえずやってみる、というスタンスで生きているのだが、それが良くも悪くも、このご時世にはなんとなくそれがハマって、こんなご時世でも「今できること。」もしくは「今誰かが提供してくれたこと」に対してあまり深く考えずに動いている。
 
本来決まっていた仕事ができないこと、移動ができないことなど多くの問題はあるが、だからこそ、できることもある。
 
例えば通常は日本から来られる方用に展示会などの仕事をもしていたのだが、今は日本からは人が来られる状況ではない。だから、逆にアルザスから日本へ情報や商品を紹介するという逆の発想に出始めた。こんなご時世でも、逆にこんなご時世だからこそできる仕事もあるかもしれない。
 
今はそう思っている。