娑婆の事情として、理科離れが激しいという話があります。
まあ、マイナスイオンやらあんな胡散臭いものが流行っている現状は、その「理科離れ」を端的に裏付ける状態になってしまっているのですが、あれくらいならばまだ冗談で済むのです。お金を損するくらいで、他に実害はないし。
しかし、それにとどまらない、洒落にならない事件が先日起こりました。
金沢の暖房装置爆発2人死傷
http://mytown.asahi.com/ishikawa/news01.asp?kiji=10289
です。
理科を知らないと下手したら人命にかかわるというのは、今までは本当に「下手したら」に限られた極めてまれな事例だったと思うのですが、まさかそんなまれな事態が実際に起こるとは・・・
というのは、亡くなられた方を責めるようで非常に心苦しいのですが、この暖房装置、一見してとんでもなく危険な大欠陥品というのは分かったはずなんです。
ちなみに装置の原理としては
水を電気分解し、水素と酸素を得る
その、水素と酸素の混合気にガソリンを噴射し、燃焼させる
という、理屈はきわめて簡単なもの。「水を燃料とするからクリーン」とか言う宣伝文句が付いていたそうです。
しかし、こんな機械を本当に作ってしまったのがバカというかなんというか、もちろん製作者は化学に対して無知だったわけですが、人を殺してしまったのですから無知ではすまないものがあります。
そして、無知と言ってもこれは化学の中でも非常に難解な分野だった、というわけでもなくて非常に初歩的なものだったわけです。
だって、酸素には助燃性があって、水素も爆発性の気体であるというのは小学校でも習うことですし、実際に、亜鉛版に塩酸をかけて水素を発生させて、それにマッチの火を近づけて「ポン!」と爆発させるなんてのは誰でも見てるはずの実験ではないですか。
酸素と水素の混合気を燃やす(しかも、ガソリンを入れて・・・まさに、火に油を注ぐ行為)などという、ほとんど爆弾を作っているに等しい機械を製作して、んで本当に爆弾にしてしまった行為は、もしお話だけだったら完全にギャグですよ。ギャグでは済まないことになったのは悲劇です。
もうちょっと思考を進めると、「クリーンエネルギー」といいながら、しかしガソリンを入れてるということは全然クリーンでもなんでもないですし、そもそもエネルギー保存則を知っていれば、水を電気分解して混合気を燃やしても全然効率はよくないことはわかったはずです。電気分解の際に投入する電気エネルギーを超える発熱は出来ないわけです。むしろ、その過程で必ず発生する損失の分でロス。
理科を勉強しておく。それも細かくではなくとも基本的な部分を、お話だけでも理解しておくことは社会生活において非常に有利です。
最近特に、「一見すると科学的」な情報が世間にはびこっていますが、ものすごく胡散臭い情報も大量に流れていて(例えば先日話題になったアガリクスなど)、それらを見抜くのは化学の知識でも基本的な部分だけで充分です。
ただ、普通はそれで金銭的な被害を防げるというくらいにとどまるのですが、命を救うことになるという事例もできてしまったわけです。悲しいことではありますが、教訓は非常に大きい。
koume