平場の月/朝倉かすみ
何とも味わい深い表紙
装画/田雜芳一
装幀/泉沢光雄
裏表紙も
カバーを外しても楽しめる
本を開いて1枚目の挿絵も良い
このハンガーにかかったワンピース
眺めているだけで想像が膨らむ
買ってきたばかりの新品には見えない
着慣れたワンピース
明日着ようと思ってかけているのか
帰宅して着替えてかけたのか
あと何回持ち主はこれを着るのかな
想像がふくらむ、止まらない
すごい力のある絵だな
第32回山本周五郎賞受賞作
直木賞候補にもなっていて
選考委員の林真理子さんは◎(積極的な賛成、自発的に推薦、最も高い評価)をつけていらっしゃる
なんかうれしい
朝倉さん、とても好きな作家さん
「平場の月」の他、読了積み本は10冊以上あるかな
「ロコモーション」
「ともしびマーケット」
「感応連鎖」
「肝、焼ける」
「田村はまだか」
「玩具の言い分」
「声出していこう」
「夏目家順路」
中にはいまいちなのもあったけど
夏目家順路はよかったし
田村はまだかは文句なし!
読後密かに星をつけてました
それぞれの感想はまた別途
川上さん(川上弘美さん)風な文に感じたこともあったけど
朝倉さんワールドは無駄な描写がなくて気が散らない
朝倉さんが「平場の月」について動画で語ってくださってます
貴重~!!
平場という言葉は
朝倉さんがお笑いが好きで
お笑い芸人の方が、舞台ではなくテレビなどのことを平場と言っていて
何とかして平場と言う言葉を使いたかったと
朝霞、新座、志木を舞台にしたのは、今住んでいるから
ファッションで気を付けていることはありますか?
の質問に
「ゴムのスカートをはく」
と答える朝倉さん!!
ゴムのスカートははかないようにしている、じゃなくて
いっぱい食べるからどこかへ行くときはゴムのスカート
衝撃!!
ジェスチャー付で楽しそうにお話されてます
これから読んでくださる方へのメッセージは
「このお話に出てくる、青砥健将と須藤葉子、この主人公二人が忘れがたい人物になってくれたらいいな」
だいぶ前に読んだのだけど
この「平場の月」という題名見ただけで切なさが蘇る
青砥という印象的かつ読みやすい名前も記憶に残ってよかった
ラストもよかった
「おととい、わたし、言ったでしょ。『青砥を元気づけようとしたら、たいへん健全なきもちになった』って。あれは青砥の不安をダシにして、いいきもちになったわけではないんだ。困っているだれかの気を引き立てたくて、どうしたらいいのか、自分になにができるのか、つい、ちょっと本気で考えてしまったのが健全だと思ったんだ。
健全という言葉を選ぶ須藤さんの分別あるかんじが
優しくもあり悲しくもある
「パーラメント、だったっけ。スパスパやってたよね」
パーラメントという銘柄がすっと出てくる
平場のウミちゃん
ここはセーラムでもマルボロでもラッキーストライクでも違う気がする
調子に乗ってた頃の青砥さん
遊び人っぽく振る舞うことが愉しくてならなかったという
いやなきもちだった。口が渇いた。怒りで張り切ったからだが無残に萎み、しわくちゃになったようだった。
傷ついたことを自覚した青砥さん
胸がからっぽのようでいて、膿を持っているように痛み、力が出ない
嫌な気持ち、じゃなくて、いやなきもち
平場の桶に引きずり込まれ、ぬるぬるにまみれてしまった。
平場って何だろう
青砥は顎で短く何度もうなずいた。せっかちな動作になった。
50代の大人になっても、こんなふうに失言をうまく取り消せないことが沁みる
「青砥」
身構えた。正式に呼ばれたような気配があった。須藤の声は、常より低かったものの、柔らかなふくらみがあった。表情も同じで、頬のあたりは削げたように緊張していたが、目には日向水みたいな温みがあった。
「正式に呼ばれたような気配」とか
「温み」とか
すごく繊細な表現がとてもすき
有頂天じみた心持ちで、いちゃつくような感覚で、
「おれはもっとおまえのために」と口にしたのだった。
相手を思う気持ちがあっても
自分の感情がじゃまをして、相手がうまく見えないことがある
そしてあのVサインだ。二本の指をしょんぼりと折り曲げた、あのVサイン。
ここからラストまでの19行は涙です
今読み返してもひとつひとつのシーンが目に浮かぶ
文庫化したらしいのだけど
解説は誰かな、と思ったら
文庫の帯に映画化決定の文字!
いつ!?
そして青砥は誰〜?